24時間換気システムの設計の落とし穴

計画換気には1~4種まであり、3種(自然吸気+強制排気)は単純で低コストのため広く使われている。しかし、設計難易度は3種が最も高く、思わぬ失敗をする。そこで、LDKにトイレ、個室(寝室など)が隣接するケースを想定し、よく見られる間違いを以下に示そう。

 

・抵抗が高すぎる吸気レジスタを使っている
 排気に壁付けのファン(プロペラファン、ターボファン)は負圧に弱い。これにシステム換気用に設計された抵抗の高い吸気レジスタ(20Pa at 20m3/h程度の物)を組み合わせてしまうと排気量が半分以下に減ってしまう。P-Q線図を無視して設計を進めると悲惨な結果を招くので良く確認しておくことが重要だ。

 

・LDKも個室もまとめて一括排気している

 LDKと、ドアを隔てて個室が繋がっている。そこで全部の部屋に吸気口を設け、トイレや洗面所に排気ファンを設けて一括排気した。吸気レジスタはカタログから一番抵抗の小さいものを選んだ。個室とトイレのドアは、空気が通るようにアンダーカットを設けた。あるいは、

 一見問題なさそうだが、このケースだとLDKだけが集中的に換気され、個室はほとんど換気されない可能性が高い。この問題は給気レジスタの抵抗が低すぎる(アンダーカットの抵抗より低くなっている)点にある。3種の吸気抵抗は低くないとダメだが、低すぎるとそこだけ集中的に換気されて他が換気されなくなってしまう※。
 では、吸気抵抗を適切に設計したらよいかというと、そうでもない。LDKの窓を開け放しにされると、ショートカットができて個室の換気量がゼロになってしまうからだ。LDKで窓が開いているのを知らないで寝てしまうと、換気量ゼロの中で寝てしまうことになる。このような問題を改善するためには、個室のみ、吸気ファンを設けて1種にする。こうすると、外乱に左右されない確実な換気ができるが、冬は後述するように個室が寒くなる。

※換気経路を電気回路(抵抗回路網)に置き換えてみるとわかりやすい。アンダーカット部分の抵抗は隙間を10mmとするとハーゲン・ポアゾイユの式より100Pas/m3 程度である。従って吸気口の抵抗は1000Pas/m3以上が目安となる。たとえば吸気口から 20m3/h を入れる場合、1000*(20/3600)=5.5Pa でその風量が得られるレジスタを選べばよい。これでアンダーカットの抵抗がほぼ無視できるようになって、どの部屋でも均一な換気量が得られる。ハーゲン・ポアゾイユの式は層流の式だが概略検討する上で役に立つ。

 

・全部の個室に吸気口を設け、天井裏のダクトで屋根裏の強力な換気ファンに接続して排気している

 このシステムは「各部屋の吸気抵抗がすべて同じ」という前提上でしか成立しない。どこか1部屋でも窓を開けっ放しにされると、そこだけ集中的に換気が行われ他の部屋の換気量が減ってしまう。従ってこのシステムを組むと「原則窓を開けない」で生活することになる。窓の開閉による影響を少なくするには、吸気レジスタよりダクト配管の抵抗を大きくして、その分能力の高い排気ファンを設置する必要がある。しかし、こういうシステムは排気効率が悪くランニングコストがかかる。

 

・レンジフードを回しても吸気口から吸うので問題ない
 吸気口の風量は1個あたり多くても30m3/h程度であり、それ以上吸わせようとすると抵抗が指数的に高くなるのが普通だ。吸気レジスタの中には圧力によらず定量吸気するものや強風による過吸気を防ぐための機構を内蔵したものもある。
 一方レンジフードは「強」運転時少なくとも 400m3/hを超えるため、これを吸気口だけでまかなうことは無理なことがわかる。窓を開ければ済む話だが、それが面倒に思う人はフード連動ダンパか、差圧感応式の吸気口を別途設ける必要がある。

 

・レンジフードを同時給排にしているから大丈夫
 これもよく勘違いされるもので、同時給排が付いていれば何もする必要がないと考えがちだ。吸気が排気に追いつくものかどうか、よく確認しておく必要がある。たとえばヤマハのサイクロンフードでは必要風量の6割しか吸気しない。足りない分は、別の吸気手段(差圧感応式の吸気口など)で賄う必要がある。

 

・熱交換、吸気ダクトはカビの温床に
 熱交換をやろうとすると吸気ダクトや熱交換フィルタが必要になり、衛生的な問題が出るほかメンテナンス(掃除や熱交換機の交換)が煩わしくなる。何十年もこれを続けていくことができるか、よく考える必要があるだろう。吸気ダクトや熱交換部はカビの温床になる懸念もある。換気システムはダクトなど使わず出来るだけシンプルに構成するのがベストと私は考える。

 

・吸気フィルタの問題
 道路が近くにある場合排気ガスのカーボンで壁が汚れるため吸気フィルタは必須だが、製品に付属のものは薄い上に目が細かいものが多く、すぐ目詰まりしてしまう。そこで、台所用の金属たわし(ステンレスのリボンをカールさせたもの)をフィルタの代わりにパイプダクトの中に詰めるとよい。(詳しい記事は後述のリンクを参照)。

 

・換気口から冷気が入って寒い
 部屋の容積に対して吸気口の数が少ないと1個あたりの換気風量が増えて局所的に寒いエリアが出来る。  熱交換以外でこれを改善するには部屋の空気と混合吸気する手がある。専用の吸気装置も市販されているが、発泡スチロールの塊を整形して吸気ダクトの中にベンチュリ管やエゼクタを形成すれば簡単に混合吸気を実現できる可能性がある。

 

 換気設計は、工務店経由で換気機器を作る業者に丸投げされるのが普通だ。しかし、どんなに精密に計算しても理屈通りにはいかない。特に3種換気がそうで、施工後の風量測定と調整は不可欠である。施工後、測定も調整もやらないメーカ、工務店は要注意だ。

 

 <参考購入先>
パイプファン/自動運転(湿度)常時換気付 【FY-08PFH8VD】
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パイプファン一覧 いろいろ買ってみましたが故障しにくさ、音の静かさでパナソニック製が一番のお勧めです

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