ええっ!そんなところが!?~あなたの知らない屋外の蚊の発生源対策

 「いくら退治しても蚊が減らない」そう思うときは発生源のチェックが先決。知らずに放置して近所に迷惑をかけていることがある。見落としがちな発生源と、蚊を減らすための方法をご紹介する。 

 

蚊のライフサイクル

 まずは相手を知るところからご紹介したい。蚊のライフサイクルは図のようになっている[1]。どの時点で減らすのかが最初の検討課題になる。

 このサイクルには「水」が不可欠。水溜りをなくせばライフサイクルそのものが成立せず、蚊が生息できないことをまず知っておきたい。

蚊のライフサイクル

出典:㈱コントロールセンター

 

発生源対策

 まずは発生源(水たまり)を無くすことを考えたい。見落としやすいのが雨水マス。ほとんどの家の敷地にあると思う。知らずに放置しているとご近所に迷惑をかけてしまうので、必ず対策して欲しい。

 最近では雨水浸透マス(水がたまらない構造の浸透マス)もあるのでこれから新築する人は検討してほしい。

 蚊の行動範囲は数百メートルに及ぶため、自宅だけ対策してもあまり意味がない。蚊の対策は地域での取り組みが必要で、住人の理解と協力が不可欠になる。

 蚊は繁殖力が強いため、1世帯でも発生源を放置されると十分な効果が得られない。このことが地域対策を難しくしている。

 

成虫を誘引捕獲する方法

 成虫を減らすためには誘引の性質を利用することになるが、これには「吸血誘引」と「産卵誘引」の2種類がある。人を刺す蚊は紫外線に誘引されないのでよくある紫外線の電撃殺虫機は役に立たない。

1.吸血誘引

 吸血の誘引物質にはCO2 の他に人体臭(乳酸+α)が知られている。蚊はこれらによって付近に人がいることを検知し、体温(赤外線)でターゲットの詳細な位置を知る。直射日光の下で蚊にあまり刺されないのは他の熱源により人間が見えにくくなる為と見られる。

 吸血誘引装置を作るためには少なくともCO2 の発生器と人肌相当の赤外線発生装置(ヒータ)などが必要で、一方が欠けると効果がない。

 この装置の課題はCO2 の連続発生にある。以前炭酸水やイースト菌+砂糖で実験したが成果を上げることが出来なかった。失敗の原因はCO2 の量が少なすぎた為[2]とみている。

 2014年デング熱の感染対策に代々木公園に設置された蚊の誘引装置にはドライアイスが使われていたという。現状十分なCO2 を長期間安定して発生させる手軽な手段がないことから、家庭で使えるような吸血誘引装置は実用化されていない。

2.産卵誘引

 卵を産むために水辺に寄ってきたメスの蚊を捕獲する方法。オスに対しては効果が無いが、人を刺すのはメスなので問題ない。

 産卵誘引ではCO22 や温熱は必要なく、ボウフラが好みそうな腐った(栄養豊富な)水があればよい。捕獲手段は「粘着」が適している。タライや水鉢の上に裏側にガムテープを張ったスノコなどを設置しておく。

 産卵誘引物質は十分解明されていない[3]が、それを作るのは比較的容易で長期維持もできそうだ。

 

 

ボウフラの対策

 水中にいる幼虫(ボウフラ)を対策する方法にはいろいろある。

 薬剤(デミリン)を使い脱皮を阻害する、メダカを使って幼虫を捕食させる、一方通行の容器に卵を産ませて成虫を外に出さない(ボウフラキャッチャー)などがある。

 あとで事例をご紹介する。

 

寄せ付けない対策

 蚊が嫌う匂いを設置して寄せ付けないようにする。

  蚊がいなくなると称する薬剤が市販されている。蚊取草、蚊連草(ゼラニウムの一種)が売られているが、あまり効果がないという。

 これらの問題は持続性とコストにあり、広いエリアを対策できないことも欠点。

 我が家では蚊の集まるデッキ周辺に蚊連草をたくさん植えてみたが、効果は実感できなかった。

 


 

対策の例

 

1.発生源対策(雨水マスにネットを張る)

 我が家では、敷地内のそれにすべてステンレスネットを被せてさらに砂利で塞いであるが、両隣の家は未対策だったので今年は自分で作業することを条件にやらせてもらった(写真)。

ネットをかぶせた雨水マス

 雨水マスのネットはアルミかステンレスなど耐久性の高い素材が望ましい。網戸用の金属ネットが安くて使いやすい。

 雨水マスには底に穴の開いた「浸透マス」がある。これはマスの中に水たまりができにくいので、蚊の発生抑制に効果がある。新築や工事の際にはぜひ検討してほしい。

 
 

 

2.薬剤散布(バポナうじ殺し

 ボウフラを一掃できる薬剤。とても強力で、私はこれを触るといつも下痢をする。マスク、保護めがね、手袋が必要。

 

3.薬剤散布(デミリン

 脱皮を阻害することでボウフラが蚊になるのを防ぐ薬剤。安全性も高いが、雨などが多く降るとせっかく投与した薬剤が流れてしまう欠点がある。値段が高いのも難点。

(この薬剤は、読者の方から紹介いただきました)

 

4.産卵誘引(スイレンの鉢+メダカ)

 無駄にタマゴを生ませる作戦が有効。いろんな方法があるが、我が家ではスイレンの鉢を用意した。蚊にタマゴを産ませてボウフラをメダカに捕食させる仕組み。

蚊の対策に設置したスイレンの鉢 スレインの鉢+メダカは見た目もgoodな対策アイテム。

 

スイレンの花が咲いた様子 1年に数回、このような花を見ることができる。

 

 

5.産卵誘引(ボウフラキャッチャー)

 
 ペットボトルを利用して自作可能。出ちゃい缶などの市販品もある。

ペットボトルで自作したボウフラキャッチャーボウフラキャッチャーの拡大

 ペットボトルを切断してひっくり返して嵌める。口を加熱して45度に変形させ、プラ板をSUSビスで固定して完成。

 緑藻類を防ぐには側面をアルミホイルで覆っておくとよい。ボウフラが成虫になってもこの口から外に出られない。

 

<参考購入先>
蚊の対策グッズ
ステンレス金網
アルミ金網
雨水の穴開き目皿に被せる金網です。ステンレスかアルミで線径0.3以下のものを選んでください
デミリン 脱皮を阻害することで殺虫するユニークな商品。魚や生き物には無害だという

<関連記事>
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電線・塩ビホースの劣化防止とねずみやウサギによる咬害対策

<参考文献>
1. 蚊のライフサイクル
2. 炭酸ガスと温熱を用いた新しい蚊誘殺器 真喜屋清,岩尾憲三著 Med .EntomoL Zool.Vol.52 No .3 p 241-247
実験機のCO2は1.5L/min。人の呼吸では0.25L/minなので、少なくともこの程度のCO2を連続発生させる必要がある。
3.蚊の誘引物質 生物と化学Vol14,No8 P538-541