スピーカーのインピーダンス特性を測る

 スピーカーのインピーダンス特性は、最低共振周波数、バスレフポートの共鳴周波、共振倍率Qといったスピーカーシステムの特性や、エンクロージュアの問題点を教えてくれる。

 インピーダンス特性は、抵抗とICレコーダーがあれば、誰でも簡単に測れる。今回はこれらの道具を使って測る方法をご紹介したい。

 

 

インピーダンス特性の測定回路

 スピーカーのインピーダンスZspは次のような回路構成と式から求められる。

Zsp=R・Vsp/Vr

R:セメント抵抗(0.1Ω)、Vsp:スピーカー端子の電圧、Vr:抵抗の両端電圧

 

 

 インピーダンス特性の測定法には定電流駆動と定電圧駆動の2種類あるが、定電流駆動では大きなRを使う関係上、スピーカーに十分電流を流せないため定電圧駆動の方が精度よく測れるようだ。

 定電圧駆動では、抵抗RはアンプのDF(ダンピングファクター)に影響し誤差を生じるので、できるだけ小さくする。Rに0.1Ωを用いると、ほとんどのケースでDFを10以上にできる。

 式からわかるように、電圧は分母分子で単位が消えて電圧比になる。そのため面倒な計測器の特性補正や物理量への変換が不要で、市販されている普通のICレコーダが測定に利用できる。

 

 

測定の流れ

 

1.テスト信号を作る

 測定に使うテストトーンはWaveGene[1]と、その配布サイトからDLできるユーザー波形を使って作る。ユーザー波形は、FLATSWEEP_63356 を使い、WaveGeneを -3dBの設定で出力する。

 インピーダンスの絶対値を正確に調べる場合は、共振のピークが十分成長するよう十分時間をかけて加振する必要がある。この場合、図のようにWaveGeneのWave1,Wave2をサイン波にセットして10Hz~1kHzまでを30秒以上かけてスイープする。

 

 

2.ICレコーダーで記録する

 最初に示した測定回路を構成する。WaveGeneからテスト信号を出力した状態にして、レコーダーの録音レンジをVspが飽和しないよう調整して記録する。Vrを測るときも同じ録音レンジを使うことに注意。

 

 写真は測定回路を構成した例。

 ICレコーダーはライン入力できるTASCAM DR-05 を使い、44.1kHz WAV形式で記録。

 Vrは「浮いた電圧」なのでGNDに繋ぐとアンプの出力がショートする。ポータブルレコーダを電池駆動で使う。

 

 

3.FFT分析する

データを得たらWaveSpectra[2]で再生してVspとVrを周波数分析する。FFTの設定は、サンプルデーター数 32768、関数 flattopとする

 [測定モード]にして波形を再生し、[Peak]の結果(赤線)を得る。

 Peakの波形が落ち着いたら下にあるストップ[s]ボタンを押してオーバーレィファイル(OVERLAY.WSO)ファイルを書き出す。

 VspとVrは区別できるよう適当な名前にvsp.WSO、vr.WSO などにリネームして保存する。

 

 

4.インピーダンスを計算する

 インピーダンス特性計算マクロ(創造の館製、後ろのリンク参照)を開き、使用した抵抗値を入力し、保存したオーバーレィファイルを順番に読み込み込む。
 このマクロには機械インピーダンスの理論計算値のカーブを重ねてカーブフィットすることで損失係数ζmを調べる機能もある。

 

 結果の例(DALI ZENZOR1、サインスイープで測定)。低い周波数まで十分な解像度で測れている。

 

  横軸をリニアにして低周波の部分を表示した結果。

 破線はカーブフィットの結果( ζm=0.085)。

 
 

  R=1kΩとして定電流駆動で測定した結果(参考)。定電圧駆動よりピークの値が高い。

 

 横軸をリニアにして低周波の部分を表示した結果。破線は ζm=0.080。

 

 

 

測定治具を作る

 測定回路をバラックで組むと結線ミスやショートの危険があるので専用治具を作った。

 この治具で重要なのはあらゆる形の末端形状に対応できること。本機はバラ線、Yラグ、バナナ、ヘッドフォン(ステレオミニプラグ、モノラルミニプラグ)対応する。

 

 側面のステレオミニプラグが測定端子。Vsp- をコモンにしたステレオ2chでVspとVrを同時に測る。
 Vrは浮いた電圧なので、ここに繋ぐ測定器は電池駆動(もしくは電源ラインに絶縁トランスを入れた計測器)が前提となる。差動アンプで受ければPCのライン入力などに直接接続できるが、今回そこまでやらない。

 

 回路図。抵抗をマイナス側に繋いでVsp- をコモンにした。うっかり測定端子のコモンをアースと短絡してもショートしないので安全。

 ヘッドフォン用のミニプラグはステレオミニプラグのRchをNCにすることでモノラルジャックに対応できる。

 

 アンプ側のヘッドフォン端子とスピーカー端子を同時に繋ぐと出力同士がショートするので注意。

 

 治具の中身。抵抗は0.2Ωをパラにして0.1Ωとした。

 

 

 抵抗は念のため測定して誤差の少ないものを選別。手持ちの抵抗を測ってみたが結構精度いいのでここまでする必要はなさそう。

 

 

 この治具を作ってからスピーカーのインピーダンス特性をすぐに測れるようになった。いろいろな機種について測った結果の一覧を下記の関連記事に掲載した。

 

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<関連資料>
1.WaveGene
2.WaveSpectra
3.インピーダンス特性計算マクロ