パワーが大きい車の出足が軽より遅いのはなぜ!?~大排気量 ハイパワーターボ車の意外な欠点

 ハイパワーターボや大排気量車に乗ると「アレ?」と感じることがある。期待していた「トルク」「加速感」「走りの余裕」が感じられない。信号スタートではコンパクトカーはおろか軽にも遅れをとる。なぜこうなってしまうのか。今回はこれらにクルマに共通する欠点をご紹介したい。

 

ハイパワーターボの意外な欠点

 ハイパワー車を所有する人が日常で感じる優越感といえば、信号スタートの余裕ではないだろうか。チョッとアクセルを踏んだだけで加速し余裕で前に出る。周りに「おおッ、さすがにスポーツカーは速くてカッコイイな」そんな印象を与える。

 ところが、ハイパワーターボ車を買うとその逆になってしまうケースが結構ある。

 

出足が遅かったスカイラインターボ

 R32スカイライン GTS-tは低回転トルクが細いクルマだった[1]。普通にクラッチミートした時の出足が遅く、信号スタートで1.5Lクラスのコンパクトカーはおろか、軽にも付いていけなかった。

 信号スタートで他車より前に出るには、あらかじめ回転を上げておいてクラッチをつなぐか、踏み込みを通常より多目にする必要があったのを記憶している。

 

公道で遅いインプレッサSTi

 インプレッサのSTiに試乗[2]したとき、スカイラインと同じ問題を経験した。

 高圧縮ターボは高いピークパワーを得る代わりに低回転トルクが細い。これはエンジンの圧縮比が低く、ヌケの良いマフラーを装着している為。

 この傾向は小排気量で馬力を稼いでいるものほど強く、ブーストが効かない低回転ではアクセルを踏み足してもほとんど反応しない。

「自分の車は速いんだぞ」「すごいポテンシャルを持っているんだぞ」

それは確かだが、常用回転域が非力で、軽にも遅れをとるのでは不満が募るばかりだと思う。

 

なぜ軽のオバチャンに負けるのか

 軽より車重が重いこと、高回転にならないとトルクが出ない特性が災いしている。重いほど自分自身を加速させるために燃料がいるから、軽に並ぶには、オバチャンよりたくさんアクセルを踏まないといけない。コンパクトカーや軽と同じ調子でアクセルを踏んでいたのでは、軽に負けるのは当たり前のこと。

 ハイパワーターボが出足で軽に勝つためにアクセルをたくさん踏むと燃費が悪くなる。燃費を気にしてアクセルを踏まないと、軽やコンパクトカーに置いて行かれる。これは必然の結果だ。

 重量級セダンは出足が悪くならないよう、アクセルちょい踏みでガバッとスロットを空ける制御が入っていることが多い。これは出足で軽やコンパクトカーについていけなくて、「走らないではないか」という印象を与えることを気にしての事らしいが、これがドライブフィールを著しく損ねている[4]

 

公道におけるターボの利点は何か

 結局ターボの利点が生きるのは、高速道路など速度(回転)を落とさずに走れる場合であり、この場合は確かにターボが付いていると速いし気持ちがいい。しかし、ゴーストップの多い町中を走る場合はターボのデメリットが目立ち、より排気量の小さい、価格の安い車に置いて行かれるばかりである。

 結局、公道を走ることを前提にすると、絶対的なパワーやトルクよりも、低速トルクが太い方が乗りやすく、発進加速に優れ、満足を得やすい。

 高回転でパワーを発揮するエンジン、例えば小排気量のVTECやターボは、回せば確かに気持ちが良いが、燃費や騒音のことを考えると、のべつ高回転を使うわけにはいかないのが現実だ。

 回すことでパワーを発揮するエンジンは、「回さないと真価を発揮できないエンジン」と言い換えることが出来、そのほうが実態に合っている。

 


 

大排気量車の意外な欠点 (2006/1/15)

 大排気量のクルマに期待することに「豊かなトルク」「加速感」「走りの余裕」がある。ところが近年のクルマは排気量が何Lであっても、普通にアクセルを踏んだ場合のパワーフィール(加速感)にあまり差がない(軽を除く)。

 大排気量車をてフンパツして買ってみたものの、「今まで乗っていたコンパクトカーと大差ない」「いやむしろ、前の方がずっとパワフルに感じた」となる。

 なぜこんな結果になってしまうのか。

 

無いに等しいパワー感

 BMW 330iを試乗した時のこと[3]。Dレンジだと2速発進するから発進時に加速感がない。そのままゆっくり走っているとATは勝手にどんどんシフトアップしてしまう。そこでアクセルを煽ってもクルマはまったく応答しない。それはまるで「パワー抜け」したかのようだった。

 加速したいと思ったら、アクセルをしばらく踏みつづけて「キックダウン」させなければならない。ATが多段になるほどきめ細かくハイギアを維持しようとするから、パワー抜け感が強調される結果になる。

 これは排気量が3Lを超える大排気量車の多くがジェントルな走りを目指しているため。

 重い車体に多段ATを組み合わせ、できるだけ高いギアを使って動かそうとするから重鈍に感じる。急激にトルクが出るようなことが無いよう自動制御されているから、アクセルを煽っても反応しない。

 これらの結果、低速域のパワー感は1.5Lのコンパクトカー以下。「コンパクトカー方がパワフルだった」となっても不思議はない。

 

余裕のある走りとは何か

 同じ加速を得るために、排気量の小さいクルマはエンジンの回転数をあげないと走らないが、大排気量ではパワーに余裕があるので低い回転数で済む。これが、大排気量車の「走りの余裕」だ。

 これは速さメリットではなく、同じ加速を得るために低い回転数で済む、つまり静粛性に有利なメリットを指している。

 結局、大排気量車で日常感じるメリットは、低い回転数で走れることによる「静粛性」であり、パワー感はむしろ劣ると考えておきたい。

 

大排気量のパワーを味わうには

 排気量相応のパワーを正味で味わうには、余計な制御が介在しないMTで乗るしかない。

 ATにスポーツモードがあれば少しマシになるが、車重が重いので走りについてはあまり期待できない。

 大排気量車に限らず、ATとMT両方が用意されている車種では、MTのほうがパワフルに走れることを覚えておいて欲しい。

 

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