当館が生み出した洗車スポンジ濾材の作り方をご紹介します。洗車スポンジ濾材は今ではすっかりメジャーになりました。
写真は濾材を作るために洗車スポンジをカットした最初の写真(1999年7月)。
洗車スポンジ濾材の発祥(オリジナル)は当サイトです。洗車スポンジを使った濾材の製作記事を書く場合は、必ず当ページにリンク設置してください。詳しくはAboutをご参照ください。
材料の選び方
濾材に適したスポンジの条件は次の通り。
気泡の入り方:大きい気泡の開口率が50%以上が望ましい。
色:黄色を標準とする。その他、明るい色なら可。
中サイズ:約10mm角
小のサイズ:約6mm角とする。
この条件を満たすスポンジは、カー用品店で売られている洗車用のスポンジにある。均一なサイズの気泡で出来たものではなく、小さな気泡と大きな気泡が混じった物がよい。
洗車用以外のもの、例えば台所用、オフロ用、工業用などは、抗菌物質が有害(魚にとって)になる恐れがあるので避けた方が無難。
スポンジの材料には、セルロース、ポリウレタンがあり、ポリウレタンにはポリエステル、ポリエーテルの2種類がある。この中でポリエーテルのスポンジが最も耐久性に優れるから、材質のところを見て探してほしい。
ポリエーテルを使った商品に、YP103 スタンダードエクストラ(イエローハット取扱)があった。 ポリエーテルのスポンジが手に入らない場合は、エステル、ウレタン系などでも代替できる。セルロースなど天然系の素材は生分解するので使えない。
※イエローハットの商品は入れ替わります。表記のものは常に入手できるとは限りません。
作り方
スポンジを買ってきたら、写真のようにまず十字にナイフを入れて4分割し、濾材のサイズで同じ厚みになるようスライスしていく。写真は10mm厚でスライスしたところ。
写真のスポンジは全長230mmとかなり大きめ。このサイズで、中サイズなら1.6~1.8L、小サイズなら1.0~1.2L分の濾材が取れる。
スライスしたスポンジをまとめて積み重ね、濾材のサイズで等間隔に裁断し、写真のようにフライドポテトのような形を作る。
最後に、このフライドポテトを、ハサミを使ってサイコロ形になるように切っていけば完成。
左の写真は小サイズの濾材を作るためにスライスしたスポンジとフライドポテト。小サイズの等間隔裁断は結構難しい。
製作の注意
・サイズは可能な限り均等に揃え、大きすぎるものや小さすぎるものは排除する。サイズの異なるものを濾過層に混在させると、隙間が詰まって水の通りが悪くなる。
・この濾材をフィルターにセットするときは、あらかじめ水の中でよく揉んで空気を押し出し、水をよく染み込ませておく必要がある。空気が入っていると浮遊したり浮いてしまってうまく機能しない。ただ、新品の状態から空気を完全に抜くことは困難だから、できる限りで差し支えない。
・ケガをしないようにご注意。この方法に従ってケガをしても、当方は一切の責任を持ちません。
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日頃のメンテナンスと運用の注意
サイコロカットしたスポンジ濾材は濾過膜が適度に入れ替わるため、適切な条件下では1年間メンテナンスしなくても詰まることはまずありませんが、水量の低下に注意してください。
水量が落ちてきた場合は下記の原因が考えられますのでチェックしてみてください。水量が落ちが状態を放置しておくと、酸欠でバクテリアが死に、濾材が黒っぽくなるようです(参考:成功と失敗例 (2001/5/8))。
1.プレフィルターを付けていない、プレフィルターが目詰まりしている
どんなに優秀な濾材も適切なプレフィルターを付けて使わないと目詰まりして性能を発揮できません。プレフィルターを付けている場合は、目詰まりを確認してください。その他、ホースの内壁が汚れている場合も抵抗になります。
2.スポンジの粒がタンクのメッシュをすり抜けてポンプの吸水口、または排水口に詰まっている
濾過装置の構造の問題です。この症状はエーハイム ECCOで起こることを確認しています。
3.フィルターのポンプが弱すぎてわずかな負荷変動で能力が激減する
濾過装置のポンプ能力が低いことが原因。この症状はエーハイム ECCOで起こることを確認しています。
4.魚の量に比べ濾材が少なすぎる
この場合少ない面積のところにバクテリアが大量に繁殖して、剥がれた濾過膜が原因で隙間が詰まる可能性があります。濾材の数量が不足していないか、上記の表を参照してチェックしてください。
改良版~寒天ゲルコート洗車スポンジ濾材 (2012/12/11)
寒天でコーティングする改良版を考案したのでご紹介する。これにより以下のメリットが得られる。
1.コシが出てカッターで裁断しやすくなる
2.インストールしやすくなる(泡抜き、ネット、重石などが必要ない)
3.薬剤を混ぜればそれを少しずつ溶出できる(新たな機能を付加)
寒天は水を含むと膨潤しゲル化する。高い親水性をもつため水をはじいたり、浮かんでこない。寒天は生分解する物質なので、最終的には消えてなくなり、今まで通り通常の洗車スポンジ濾材になる。
寒天にあらかじめいろんな物を混ぜてしてコーティングできる。これによって、濾材に新たな機能をもたせることができる。水に入れるとこれがじわじわ溶け出して、水槽に何らかの効果を働かせることが可能。寒天の消耗とともに消えるので後腐れしない。
混ぜ物は、水槽立ち上げ初期の手助けになるものがよい。例えば、生きたバクテリアを寒天に閉じ込めて乾燥させれば長期保存可能なバクテリア付きの濾材が出来る。砂糖を混ぜておくことでパイロットフィッシュなしで濾過の立ち上げを完成させることが出来るかもしれない。
興味のある方はいろんなアイディアをトライしてみてほしい。あなたのアイデアが、スポンジ濾材をアップグレードさせるかもしれない。
寒天ゲルコートのレシピ
寒天は約90℃で溶解、約40℃で凝固する性質を持つ。寒天の粉末を溶かすときは水のときに混合して沸騰するまで加熱する。熱に弱いもの(バクテリアなど)を混ぜる場合は凝固点近くまで冷えてから混ぜる。
砂糖を混ぜると凝固点が上がるので注意。凝固する前にスポンジとまぜてよくもみ、染み込ませる。
他、寒天はスポンジの切断加工を容易にする用途にも使える。他にゼラチンで代替も可能(融点60℃、凝固点20℃)。
寒天は生分解してバクテリアのエサになると思ったが、当方の実験では従来のゲルコート無しに対して明確な有意差は認められなかった。従い寒天ゲルコートの効果は、その親水性により初期のインストールを少しやり易くするだけと見ておきたい。
洗車スポンジ濾材のQ&A
洗車スポンジ濾材について過去にいただいた質問を元にQ&Aを作りました。
スポンジが浮いてしまうのですが
裁断してすぐのスポンジをそのまま水に入れると浮いてしまいます。水の中で良く揉んで、空気を押し出してから使ってください(「泡抜き」といいます)。完全に空気を押し出すことは無理ですので、ほどほどでかまいません。あとは、使っていくうちに徐々に抜けていきます。
有害な溶出物はありますか
シリコンやフッ素などの離型剤や整泡剤(界面活性剤)が考えられますが、これらの含有量はスポンジの製造元によって異なるようです。水面に浮く油のようなものはシリコン系の離型剤、PHがアルカリに傾く場合は界面活性剤の影響と考えられます。裁断時の臭いは素材固有のものです。
スポンジは古くからテトラのプレフィルターや 濾材(ADA)として使われている実績があります。洗車用に売られているスポンジは、台所用などで見られる付加機能(抗菌、添加物等)が必要ないため、プレーンな素材そのものと見ることが出来、安心できる素材の一つと考えられます。
離型剤や整泡剤は、ごく微量であるケースが多いため、問題になることは少ないのですが、心配な方は、事前によく洗浄するか、漬け置き&水質チェックしてから使ってください。
立ち上げ中に発生する泡について
水槽を立ち上げた初期に、洗剤を入れた時のような泡が大量に発生することがあります。これは水面に大量発生した油膜(微生物)を取り巻く粘質がエアレーションによって発泡したもので、スポンジ以外の濾材を使っても同じことが起こります。
この泡の原因については、スポンジの発泡を保持するために使われる整泡剤(界面活性剤)による影響が疑われたことがありますが、スポンジだけを水浸せきした実験※により、ポリエーテル系のスポンジ(イエローハット取扱)では問題ないことを実証しています。誰でも簡単にチェック出来ますので気になる方は実験してみてください。
※水を入れたコップにスポンジを詰めて1週間おき、水だけをペットボトルなど別の容器に移して強く振る。泡が出なければOKだ。
どんな特徴がありますか?
洗車スポンジ濾材には次の特徴があります。
1.価格が安い
洗車用のスポンジはとても安価で、コストパフォーマンスは市販の濾材とは比べ物になりません。
2.濾過の立ち上がりが速い
季節によっても違いますが当方の実験では上部濾過器を使ったケースで3週間前後です。
3.バクテリアの繁殖状況が色で確認できる(淡水のみ)
スポンジのもとの色が明るい黄色のため、茶色く色づくことをもってバクテリアの繁殖を確認できます。コンテナ式の外部濾過器を使って立ち上げると、酸素の豊富な下の方から茶色になり、上に向かって色が薄れていくグラデーションを見ることが出来ます。
4.交換の必要がない
交換が必要になるのは、濾材自身の劣化と目詰まりのいずれかに起因します。
水中でのスポンジの劣化はきわめて穏やかで、目詰まりによる濾過能力の著しい低下も見られないことから基本的に交換の必要がありません。
5.安定性が高い
バクテリアが十分発生した後は、死んだバクテリアが濾材内部に蓄積したり、表面に堆積することなく、スムースに入れ替わるようであるため、濾過能力が長期的に持続安定します。またスポンジ表面の細かい気泡に多くのバクテリアがとりつくため、水質の変動にとても強いようです。当方では4つの水槽を立ち上げましたが、4年過ぎても問題なく安定しています。
6.裁断が面倒(欠点)
実際やってみるとわかりますが、綺麗にカットするのはとても面倒です。
7.比重が軽い(欠点)
スポンジ自身の比重が軽いため、コンテナの無い濾過器ではネットや重しが必要になる場合があります。上部濾過器の場合はリング上濾材を重しの代わりに使うとよいです。
どのくらい持ちますか?(耐久性について)
ポリウレタン系のスポンジを使って連続4年、問題なく使えることを確認しています。ウレタンの劣化は紫外線と水分が主に関係しますが、これらは相乗的に作用するため、どちらか一方の要素がなければ寿命は飛躍的に延びるようです。水分だけなら14年以上もつというデータもあります。
参考:洗車スポンジ濾材~水中ではほとんど劣化しないことを検証
他の濾材より濾過能力はいいのですか?
濾材の濾過能力は単純に表面積に比例しますので、幾何学的な形状からほぼ正確に推定できます。魚を飼ってみないと解らないものではありません。
ただ、長期的な濾過能力を推定するには、詰まりによる表面積の低下や、水が通るための抵抗の増加を見込む必要があります。濾材には多孔質で広い接触面積をうたうものがありますが、多孔質の微細構造はバクテリアによってすぐに埋まってしまい、最終的には1ミリ以下のおうとつを無視した表面積だけになります。従って、長期的に使った場合の、この有効面積が大きい物ほど、濾過能力の優れた濾材です。
洗車スポンジ濾材の場合、同サイズ、同形状のものよりも高い濾過能力があります。これは洗車スポンジの表面が均一でなく、大きい気泡が混じった複雑な構造をもつためです。
参考:アクアリウム濾材の濾過能力を計算比較する~ウールマットの能力は意外なものだった
どのくらいの魚を飼えますか?
水槽負荷は魚の体格や数にあまり関係なく、給餌量によって決まります。従って、魚の数が同じでも、グッピーのような大食漢と、ネオンテトラでは、当然飼育できる数が異ります。その他、水槽の大きさや飼育環境によっても変わりますので、一概に言えませんが、急激な水質変動に対する安全率を考慮すると、次が一応の目安です。
水槽サイズ | 飼育個体数 | 濾材数量 |
45cm水槽(約30L) | 15匹まで | 1.2L以上 |
60cm水槽(約50L) | 25 | 2 |
90cm水槽(約150L) | 75 | 6 |
120cm水槽(約200L) | 100 | 8 |
注:45cm未満(約30L未満)での飼育は奨励しません。飼育個体数、および濾材数量は、小型カラシンを1匹/2Lの割合で飼育する場合の目安です。水草水槽でコケない為にはさらに個体数を減らす必要があります。オトシン、石巻貝、ヌマエビ等も個体数にカウントされます。
ワンタッチフィルター(壁掛け式)でも使えますか
仕切板を細工することで構成可能と考えられます。細工をしてもあまり多くの濾材が入りませんので、お勧めできません。
中、小、サイズはどのように使い分けたらよいでしょう?
家庭用濾過装置のサイズを考えると中(1cm角)が最もバランスが良いと思われますので、通常は中を推奨します。 コンテナが100ccに満たないような小さな濾過器や、2センチ以下の細い水路が形成されるようなものについては、小(6mm角)が適しているでしょう。
嫌気性濾過はできますか?
世間では嫌気域を作るための様々な方法が提案されており、当サイトでも可能性を紹介していますが、本来の機能を損ねる可能性があり推奨していません。
低床を利用した嫌気性濾過は出来るだけ細かい(水の通りが悪い)砂を厚く敷くことで実現できる可能性があります。最も広い濾過面積を手軽に得られ、有機物も自動的に供給されるので別途水素供与体を添加する必要もありません。
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洗車スポンジ濾材~嫌気性濾過能力はあるか
もっと簡単にカットする方法はありますか?
電熱線を使ったカットが提案されていますが実際はうまくいきません(写真はテニスラケットにニクロム線を張った自作のカット装置)。工業製品では専用の機械を使ってカットしているようです。
アマチュアレベルでは上記レシピで紹介したように寒天で固めてカットするのがいいでしょう。
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