水槽のセットアップは最も楽しい作業。水槽を立ち上げる過程でいろんな現象を体験できる。初めての人にって、それは未知の未体験ゾーン。ドキドキ、ワクワクの連続だ。今回は60cm水槽をセットアップする手順をご紹介する。
STEP1 準備
まずは、次のものを準備してください。
初めての方は、セット商品をお勧めします。下記のほとんどが入っていて、個別に買うより安くなります。亜硝酸試薬だけ個別に必要です。セット商品では必ず外部式か、上部式フィルターがセットになっているものを選んでください(ワッタチ式や水中にセットするタイプは不可)。
水槽
60cm以上の水槽がお勧めです。両端を折り曲げて継ぎ目をなくしているタイプがおすすめです。
縦長に深い、または浅くて横長のものや、前面が大きく湾曲しているインテリア水槽は専用の器具しか使えず拡張性に乏しい欠点があります。
60cmより小さい水槽は水質の変動が激しく管理が難しくなります。60cm以上より大きい水槽は高額ですが、水質が安定しやすく見ごたえのある水景が作れます。
以下に挙げるものが最初からついているセット商品がお得です。最近は水槽セットの形で売られていて、壁掛け式フィルターが付属している場合があります。これはろ過に適さないので使いません。
塩素中和剤
テトラ コントラコロラインでいいでしょう。中身を使い切ったら、次からはハイポを使って自作すると安あがりです[2]。
照明
2灯式2台か、3灯式以上を選びます。水槽セットを買うと2灯式が付いている場合があります。この場合は水草を植えるまでに1台追加してください。
照明はインバータ式かLEDが消費電力が小さく長寿命です。
サーモ・ヒーター
一体式ものものが安く売られていますが、ヒータは消耗品です。きめ細かく温度制御ができるよう、サーモとヒータが別々になっているものが望ましいです。
安いサーモはヒステリシス(ONまたはOFFが作動する温度幅)が大きく、水温の変動幅が増えて魚が体調を崩す原因になります。サーモはできるだけ品質の良い良い商品を選んでください。
温度計
鑑賞の邪魔になるアクセサリです。小さく目立たないものを選んでください。
餌
テトラミンの一番小さいものを買ってください。小さいものでも量が多いので開封後は変質を避けるため小分けして保存してください。えさに関しては熱帯魚 金魚の餌の選び方も参考にしてください。
濾過装置
上部式と外部式があります。水草水槽では外部式フィルターが適していますが、後述の実例にあるように上部式でも作れないことはありません。セット商品では上部式が付いてくる場合が多いので、それをそのまま使います。
詳細はアクアリウム用濾過装置(フィルター)の選び方を参考にしてください。
濾材
カーショップから洗車用のスポンジを買ってきて裁断してください。製作法は洗車スポンジ濾材の作り方をご参照ください。
プレフィルター
吸水部に付けるためのプレフィルター。φ50-100 接続部16/21 サイズをよく確認してご購入ください。
砂
粒サイズ 2mm以下の石系のものを用意します。数量は60cm水槽で12~16Kg使います。必ず淡水産の砂を選んでください。大磯など海砂の場合は事前に塩酸処理を行う必要があります。
亜硝酸試薬
テトラの亜硝酸試薬を購入します。試薬はこれが最低限ですが、予算に余裕があれば、PHなど別の試薬も買っておくと水質管理に役立ちます。
蓋
ガラス製とし、水槽上面全体をぴったり覆える枚数を購入します。
断熱材
冬場の電気代を節減する効果があります。使い方は冬場の水槽省エネ対策をご参照ください。
バックスクリーン
模様や絵の描かれたものでなく、黒一色が勧めです。水槽の背面(水中ではなく外側)に密着させて固定します。
ヒーターカバー
ヒータを目立たたず配置するために必要です。
STEP2 水槽のセット
上記の材料を使って水槽のセットアップを行います。構成の例を次に示します。
シャワーパイプは末端のキャップを取って図のようにセットします。
ヒータはカバーをかぶせて水槽の角に縦置きし、シャワーパイプの排水の流れ場よく当たるようにします。これは底面積を確保するための工夫です。
注意:ヒータを縦置きにした場合水の蒸発による水位の低下に注意してください。また、水換えをする場合、濾過装置をストップした状態で水替えする場合は、空焚きを防ぐため必ずヒータのコンセントを抜いてください。
外部式フィルター(パワーフィルター)の吸水口にはプレフィルターを付けて、シャワーパイプの出口とは反対側にセットします。電子コントローラのセンサは、プレフィルターの近くに付けます。
水を入れたらシャワーパイプの高さを調節します。水面が少し波立つようにセットして油膜の発生を防止します。
底砂は平らに均せばOKです。傾斜を付ける例がありますが、水草を抜き差ししているうちに平らになってしまいます。
STEP3 濾過の立ち上げ
パイロットフィッシュの導入
ブラックネオン、グローライト、アカヒレの中から合計10匹購入して水槽に導入します。これらの魚は、水槽立ち上げ後は不要になりますから、後のことをよく考えて種類を決めて下さい。これらの魚は水質の悪化に強く、濾過が完成するまでのパイロットフィッシュに最適です。
魚を水槽に入れるときは、水あわせをしてください。
魚を入れたら、照明を点灯して昼夜を作ってやりましょう。省エネ対策と夜を利用して夏場に水槽の温度を下げる方法も合わせて参考にしてください。
<参考購入先>
ブラックネオンテトラ一覧 グローライトテトラ一覧 アカヒレ一覧
濾過の立ち上げ
エアレーションをします。シャワーパイプの小さい穴が水上に出るようにすると、水が落ちるとき小さな気泡がたくさん出来るのでこれを利用します。エアレーションは水中の溶存酸素を増やし、有機物の分解を助けるのに役立ちます。
パイロットフィッシュに給餌しつつ、毎日亜硝酸濃度を測りながら濾過が立ち上がるのを待ちます。PHや他の試薬があれば、同時に測定していってください。測定値は記録するだけでなくグラフを書いてみると面白いです。
途中、水が濁ったり、水面に油膜や泡が大量に発生したりしますが、放って置いてかまいません。これらの現象は水が出来上がるまでのプロセスの一部です。焦って水替えする必要はありません。
濁りの正体は従属栄養細菌(微生物)。油膜については水槽の水面に漂う油膜の正体とその対策を参照。
アンモニア濃度はどんどん上昇していきますが、アンモニアを亜硝酸に分解するアンモニア酸化細菌が次第に増えてきてアンモニア濃度が減少し、かわりに亜硝酸濃度が上昇してきます。
亜硝酸濃度が1.6mg/Lを越えたら、1/3程度の水換えをします。アンモニアも、亜硝酸も、魚にとって有毒ですが、パイロットフィッシュは、この厳しい環境を乗り切る強さを備えています。
亜硝酸濃度を毎日測定していると、ある日突然、検出されなくなるときがあります。この確認をもって、濾過が完成したと判断できます。亜硝酸濃度がゼロになったということは、亜硝酸を硝酸塩にする亜硝酸酸化細菌が働きだした証拠です。
濾過が完成したら一度濾過装置を開けて、濾材の様子を観察してください。濾材に繁殖したバクテリアにより、若干茶色味がかり、独特の臭いがすると思います。この状態をよく観察して覚えておくといいです。
水槽が立ち上がったら、パイロットフィッシュの役目は終わりです。パイロットフィッシュと入れ替えに、飼いたい魚を導入しもかまいません。その際、水槽負荷が大きく変わらないように注意してください。パイロットフィッシュを飼い続ける予定がなければ、ペットショップに引き取ってもらうといいでしょう。
魚の数(水槽負荷)は、時間をかけてゆっくりと増やしていきます。水草が順調に生育するのを確認するまでは、負荷を増やさないのが無難です。
STEP4 水草の導入
照明の追加
2灯式でスタートした人はStep1でガイドした通りここで照明を追加して3灯以上にしてください。
パイロットプラントの導入
マツモ、ガボンバなどを買ってきて植えます。これらの水草は生長が早く、増やすのが容易なのと、安価なことから、パイロットプラントとして適当です。伸びたらトリミングして植え直す、という作業を繰り返し、これらの水草を水槽内でどんどん増やしてください。
パイロットプラントにコケが付き、成長が止まってしまったら、コケの付いた水草を捨てて、導入し直します。コケた状態を放置しないようにしてください(一度コケたら回復は見込めません)。
水草の葉にコケが付いてしまうのは、最初に導入した水草の数量が少なすぎたか、給餌量が多すぎるのが原因です。これは、水草と水槽負荷のバランスに関する貴重な体験ですので、この機会に適切なバランス感覚を養うといいです。
スカベンジャー(掃除屋さん)の導入
水草の導入と同時に、オトシンクルス2,ヤマトヌマエビのできるだけ小さな個体を2匹以上導入します。特にヌマエビは重要です。スカベンジャーなしでコケの抑制はほとんど無理ですので、必ず導入します。
CO2添加を開始
水草を植えたら同時に、CO2添加をスタートさせます。CO2添加装置は、市販のガスボンベを使ったものでもかまいませんが、高価です。この機会にイースト菌による発酵式を試してみるのもいいでしょう。発酵式添加装置の作り方はお金をかけずに水草を育てる~発酵式CO2添加装置の作り方を参照。
CO2添加を開始したら、シャワーパイプを水中に沈めます。エアレーションをしたままだと、せっかく水に溶けたCO2が逃げやすくなります。
レイアウトの構想を練る
パイロットプラントを増やしている間に、どんな水草を入れて、どのような配置にするか、魚は何を入れるか、いろんな資料を参考に構想を練っておきます。
光量、CO2添加量などの最適値が水草によって異なりますので、植える品種とレイアウトを決めて下さい。石などのアクセサリもあわせて検討ください。天然の流木は水を色づけするので水草水槽ではあまりお勧めできません。
石組みは三尊石[1]が基本になります。無駄なものを買わないようご注意ください。
角ばった自然石は入手困難ですのでネット通販などをご利用ください。黒っぽい溶岩がお勧めです。
水草の導入
マツモ、ガボンバが順調に育ち、コケ()もほとんどない状態が続くようになったら、パイロットプラントを、あらかじめ構想を練って置いた本命の水草に入れ替えていきます。
一度に全部植え替えると硝酸塩の吸収が悪くなってコケる可能性があります。少しずつ入れ替えるか、追加する形で導入するのが安全です。
STEP5 完成&日常のメンテナンス
魚を増やす場合の注意
水草の入れ替えが終わったら、魚を所定の数まで増やしていきます。魚(水槽負荷)を増やす場合は、現在のうまくいっている状態の、水草の量と給餌量のバランスを変えないよう注意してください。
魚の数や給餌量を2倍に増やした場合、水草の量も現在の2倍に増やさないと、バランスが崩れてしまいます。濾過が追いつかなくなって、亜硝酸濃度が上昇し、病気が発生したり、死魚が出ることもあります。
魚を増やす場合は、水草も同時に増やしていくのが安全です。魚を増やしたら、時々亜硝酸濃度をチェックして、濾過が追いついていることを確認してください。
低床の管理
低床は基本的にいじってはいけません。砂と砂のスキマにできる茶色いものは水草の成長にとって大切な有機物です。掃除する場合は、表面の糞や枯れ草の破片等をプロホースで吸い取る程度とします。
トラブルの対処
以下の記事をご参照ください。
<関連記事>
完成した美しいアクアリウムを紹介
2.ハイポ中和は不完全だった!~自家製コントラコロラインの作り方
水草の育て方~初心者にお勧めの品種はこれだ!アクアリウムの水草レビュー
ベテランが教えるお勧めの熱帯魚ランキング
<参考文献>
1.日本庭園のデザイン(リンク切れ)
<改訂履歴>
2014/3/1 レイアウト用天然石の写真を追加しました。
実例
1.60cm水草水槽(1999/8/29~)
砂の準備
今回は水草を植えるので砂を入れる。砂はいろんなものが市販されているが、今回は大磯砂を使う。
水草水槽で大磯砂を使う場合は塩酸でカルシウムを除去しておく必要がある。これをやらないと水質がアルカリに傾いて水草が育ちにくい。田砂などの淡水産の砂を使うと塩酸処理が不要になる。初心者にはこのような砂を勧めする。
大磯砂の荒さは3種類ある。水草水槽では最も粒子の細かい「細目」がよい。今回は手持ちの都合で中目(平均粒径4mm程度)を使用。これを15Kgと、大きめのバケツを2個用意する。
まずは、ざるに入れてお米を研ぐような要領で少しずつ洗う。このとき目に付いた貝殻は取り除いておく。作業は必ず厚手のゴム手袋をして行う。
塩酸は「強塩酸」を使う。量は砂に対し200cc/10Kgが標準。十分大きなバケツに水4Lと砂10Kgを入れ、強塩酸を入れて静かに攪拌する。強塩酸は薬局で手に入る(印鑑が必要)。
塩酸を入れると、写真のようにプクプク泡が出てくる。塩酸処理の詳細は、アクアリウム最高の砂【塩酸処理済み大磯砂】はこうして作られるを参照。
強塩酸の取り扱いは極めて危険です。この作業はあくまで自己責任で行ってください。
水槽のセット
今回使用する濾過器は「上部式」。底にスポンジ濾材を敷き、その上にセラミック製のリング濾材、さらに2~3mm目程度のネットを載せた三層構造にする。写真はこの構造がわかりやすく見えるよう三分の一ずつ順番に重ねたもの。
外部式フィルターの場合は吸水口にプレフィルター(目の粗いスポンジ)を付け、フィルターのコンテナの中は全て洗車スポンジ濾材にする。セットアップの詳細は洗車スポンジ濾材を使った濾過システムの標準構成を参照ください。
濾材のセットが終わったら水のガイドプレートをはめてみて、濾材との隙間(水の落下距離)をみる。これが10~15mm程度ならOK、隙間が狭いようならスポンジ濾材の量を減らして調整する。
一通りセットが終わった様子。砂は全部使わず、1Kgくらい予備で取っておくと良い。砂は傾斜を付て敷くように、というアドバイスもあるが、すぐ平らになってしまうので最初から平らで良い。
ヒータの通電を始めると砂に残る塩酸の残留分のせいで塩酸臭がする。これを逃がすため蓋のたぐいは全て取り払い換気を良くする。エアレーションを併用するとより効果的。
パイロットフィッシュの投入 (1999/8/30~8/31)
濾過に必要なバクテリアは魚を入れないと増えない。塩酸の残留分もあるので最初は丈夫なアカヒレを2匹入れて一晩様子を見る。無事だったら、パイロットフィッシュを増やす。今回は次を投入した。
パールグラミー×1 ブラックネオン×4 グローライトテトラ×3 アカヒレ×2(最初に追加したもの)
合計10匹。どれも水質の悪化に強い魚たち。今回はいろんな種類の魚を混ぜてみたが、一種類でも良い。エサは毎日朝少しだけ与える。
導入後の様子 (1999/9/1~1999/11/4)
1999/9/2(3日目)
水中をただよう細かい粒子が減って水が澄んできた。 水質は、PH5.8、KH1以下、GH1以下、亜硝酸=測定限界以下、アンモニア=測定限界以下となっている。水道源水のPHが6.3だから、PHが下がっているのは塩酸の残留分が原因と見られる。
1999/9/5(6日目)
PH6.2、KH1以下、GH1以下、亜硝酸=測定限界以下、アンモニア=わずかに検出? アンモニア濃度はテトラの試薬で比色により判断しているので微妙。
1999/9/8(9日目)
PH6.5、亜硝酸=わずかに検出、アンモニア=検出されず。亜硝酸はテトラの試薬でかすかに色づいてきた。濾材の見た目はとくに変わりない。亜硝酸が検出されたということは、アンモニア硝化プロセスは終わってしまったのだろうか。
水槽の様子
メイン水槽でトリミングした水草を植えた。水草を捨てるのが勿体無い事情で先に植えたが、本来は濾過の立ち上がり後が良い※。
今回はグロッソを植えるので、肥料(テトラ・イニシャルスティック)をピンセットでグロッソを配置するエリアに5cm間隔で埋めた。肥料はコケの原因になることがあるので、少量に留める。
※濾過が完成していないうちに水草を入れると不都合を生じる。バクテリアが繁殖するためにエアレーションが有効だが、エアレーションするとCO2を発散させてしまい水草の生育が鈍る形になってしまう。
後景を植える部分は上部式濾過装置の下になって光が弱いので、後景には光量不足に強い品種、成長の早い品種を植える。今回のレイアウトは、
後景:サジタリア×18、ハイグロフィラ・ロザエネ×4、ジャイアントアンブリア×1
前景:ウオータ・パコパ×2、グロッソ
となっている。サジタリアは生育条件が良いと爆発し、水面に届くくらい葉長が伸びる。グロッソは光量不足に弱いので左右の端を避けた前景に配置する。
水草を植えたらCO2を逃がさないよう、水深を濾過装置の底面が水没するまで増やして排水から泡が出ない形にする。水草を植えたので照明を今日から点灯させた。
1999/9/9(10日目)
水面が油膜でびっしり覆われているのが観察された。特に問題ないのでそのままにしておく。肥料を入れたせいで水がやや濁っている。
1999/9/11(12日目)
PH6.9、亜硝酸=0.2mg/L。亜硝酸は確かに上昇している。PHの上昇は水草にC02が消費された結果かもしれない。水草のために換水(CO2補給)をしたいところだが、換水すると亜硝酸が減って濾過の立ち上がりが遅れる心配がある。今は濾過の立ち上げを優先してそのまま様子を見る。水面の油膜は減ってきた。
1999/9/13(14日目)
PH7.0、亜硝酸=わずかに検出。亜硝酸が急激に下がった。濾材を確認してみると、セラミックのリングは変化がないが、底に入れたスポンジ濾材がやや茶色がかっているのが確認できた。ちなみにKHとGHは1以下のレベルを相変わらずキープしている。 水面の油膜は完全消滅した。
1999/9/16(17日目)
PH6.8、亜硝酸=0.2mg/L。14日から亜硝酸がもとのレベルに戻った。この前の数値は何だったのだろう?昨日からイースト菌発酵によるCO2添加を開始したのでPHが下がっている。
水槽の壁面に茶色いコケが急速に増えた。よく見ると砂の表面や水草にも付いている。今まで一度も換水していないため水の富栄養化が進んでいる様子。今日は1/4程度の換水を実施した。この亜硝酸のレベルでコケ掃除にオトシンやエビを入れるはまだ早い。
1999/9/17(18日目)
PH6.6、亜硝酸=測定限界以下。亜硝酸レベルが下がった。今度こそ完成か?13日に一度下がって上がってきたのは、エサの量を増やしたのが原因かも知れない。
水草はどれもとても美しく育っている。イースト菌によるCO2添加はボンベほど強力ではないが、それなりに機能している。
1999/9/18(19日目)
PH6.7、亜硝酸=測定限界以下。亜硝酸が2日連続で下がっていれば濾過は完成したと言って良い。ここでいきなり大量の魚を追加すると濾過能力が追いつかなくなって破綻する可能性があるので注意。
左は濾材の様子。セットアップ時の写真と見比べて欲しい。だいぶ茶色くなっていることが解る。これが水槽の命、バクテリアだ。
最初に入れたパイロットフィッシュ10匹は全部生きている。ブラックネオンが1匹、体に白いカビがついた他は異常なく元気だ。
完成した水草水槽( 1999/11/4)
上部式部濾過器+蛍光灯2本でもこのような水槽を作ることが可能。
まとめ
•60cm水槽にパイロットフィッシュ10匹の条件において約3週間で濾過が完成した。上部式濾過装置では酸素の供給が多いので濾過の立ち上がりが早い。密閉式の外部濾過器だともう少し時間がかかるかもしれない。
•濾過の立ち上がり初期に見られるというアンモニアのはほとんど検出されなかった。亜硝酸濃度も低いレベルで推移して濾過の完成に至った。
•濾過の立ち上がりを確認するための試薬は、亜硝酸だけあれば十分と見られる。
•塩酸でカルシウム抜きした大磯砂は水質に影響を与えない良質な砂といえる。PH、KH、GH ともに、砂が原因と見られる上昇は見られなかった。
ご注意:上記は当方の水槽において1度だけ確認されたもので、他所で同じ結果が再現できるとは限りません。
2.30cm汽水水槽(2000/7/10~2000/7/16)
ミドリフグを飼うために汽水水槽をセットアップした事例をご紹介します。
底面フィルターのセットアップ
塩水の環境では淡水より大な濾過面積と酸素供給の確保が必要になる。今回使用した水槽は底面フィルター(水中モータ)+上面フィルターのハイブリッド式で、小さい容量ながら高い濾過能力を発揮できる。
ハイブリッドといっても濾過のほとんどを底面フィルターが担うので、砂はできるだけ多く使うことにした。
汽水の場合、砂は大磯砂(塩酸未処理品)もしくは珊瑚砂が適している。今回は珊瑚砂を使い、粒子の大きなものを底面に2~3センチ敷いて、その上に細目を2~3センチ重ねた。
砂の敷き方はセオリー通り、吸水口付近が最も厚くなるように傾斜を付ける。砂の厚さは合計すると4~6センチ※となり、吸水口付近では7センチくらいになる。
吸水口に向かって傾斜をつけるのは、全体の水の通りを均一化する意図がある(平坦だと抵抗の小さい給水口付近だけ良く吸う形になってしまう)。
※底全体に空間を設けた底面濾過式の場合は、傾斜を付ける必要はない。
上面フィルターのセットアップ
濾過の増強に上面フィルターを使う場合は、以前書いた洗車スポンジ濾材+セラミックリング+ネットの標準構成(関連記事1)に従ってセットアップする。
アクセサリの配置
珊瑚砂を使った場合の水槽アクセサリは、石灰岩や珊瑚岩など石灰質のものを使うといい。
水の準備
幸い海が近いので海水を採取して、ボーメ計を使ってボーメ度(near=塩分濃度)1.0に調整し、水槽に入れた。天然採取の海水はやや濁っているが、そのまま使用してかまわない。ちなみに天然海水のスペックは、PH=8.0,KH=5,ボーメ度3.3だった。
バクテリアの移植
この水槽は長いこと薬浴用に塩分濃度0.3%で回していたので砂や濾材には塩水で活動するバクテリアが付いている。ボーメ度1.0に調整した塩水を使って砂を洗い、そのニゴリ水を新しい水槽に加える。水は濁っているが、すぐに澄むので気にする必要はない。
上面フィルターには洗車スポンジ濾材を詰めていたのでこれをそのまま流用。洗車スポンジ濾材はレンガ色に着色しており、淡水に発生するバクテリアとは色が違う。
パイロットフィッシュの投入
汽水では適当なパイロットフィッシュがいないので、いきなりミドリフグを1匹だけ入れる。ヤマトヌマエビが意外にも汽水に耐えるが、しばらくしてフグに喰われてしまったため長期生存可能かどうか不明になってしまった。
ネットの情報によるとアサリでも良いらしい。
濾過が完成するまでの管理について
海水の場合、濾過の立ち上がりにおよそ6ヶ月かかることが経験的に知られている。汽水の場合はそれほど長くはないと思われるが、全く新規に立ち上げる場合は淡水の数倍はかかると予想される。
汽水で利用できる適当なパイロットフィッシュがないことから、亜硝酸濃度に気を使いつつ、不定期の換水や給餌制限を長期間にわたって根気よく続けていく必要がある。そのため水槽立ち上げの難度はやや高いといえる。
立ち上げ後の管理
汽水では藻類が発生しにくいうえ、水草も育たないことから硝酸塩が貯まる一方になる。硝酸塩の蓄積を防ぐ工夫がなければ、硝酸塩濃度が危険値を越えないよう、定期的に換水しなければならない。
導入後の様子 (2000/7/11~)
2000/7/11
水中をただよう細かい粒子が底砂に吸着されて水が澄んできた。水がすぐ澄むのは底面濾過の特徴。現在の水質は、PH8.0、亜硝酸=若干検出。亜硝酸レベルが早速あがってきている。給餌は必要最小限、3日に一度アカムシを少量与えることにした。
2000/7/13
亜硝酸レベルが0.8mg/Lに到達したため1/2換水を実施。亜硝酸レベルの上昇が早すぎる感がある。これは、投入した珊瑚石灰岩に付着していた有機物のせいかもしれない。そこで珊瑚岩をとりだして煮沸し、ブラシで丁寧に洗浄してみた。
2000/7/16
亜硝酸が全く検出されなくなった。試しにアンモニア濃度を測ってみたが、これもゼロだった。ということは、濾過が立ち上がったと判断される。フグの色も、背中まで黄色くなって調子が良さそうだ。にわかに信じられないが、今回の立ち上げはセットアップから約1週間という超短期間で完了した。
まとめ
今回立ち上がりが早かった理由は、底砂をたっぷり使ったこと、0.3%塩水で回していたバクテリアを移植したことにあると推測される。初期状態で亜硝酸が大きく上昇した原因は、フグの排泄物ではなく、珊瑚岩に付着していた有機物が原因とみられる。
汽水水槽を立ち上げる際は、いきなり所定の塩水濃度で立ち上げると適当なパイロットフィッシュがないので時間がかかる。今回のように最初に0.1~0.3%程度の薄い塩水でアカヒレやブラックネオンなどをパイロットフィッシュにして塩水活動性のバクテリアを増やしておき、濃度を上昇させる方法が有効のようだ。
<参考購入先>
珊瑚砂
底面フィルター覧 汽水水槽は必ず底面フィルターと珊瑚砂の組み合わせでセットアップしてください
水槽 できれば蓋付の水槽を選択してください
蓋 水槽に蓋がついていない場合に必要です。ガラス製のものを選んでください
人口海水
ボーメ計 水の濃度検査に必須です
亜硝酸試薬 水槽立ち上げに不可欠な試薬です
ミドリフグ ミドリフグの生体
<関連記事>
塩水で働くバクテリアの様子