試乗レポート~ホンダ S660 ModuloX 6MT(2019/8/24)

試乗日:2019/8/24
車種: S660 ModuloX 6MT(DBA-JW5)

ボディ・内装

ホンダS660カタログ表紙

出典:ホンダS660メーカーカタログ

 オープン2シーターのミッドシップ。低いシートに座って小さなステアリングを握ると、サーキットでゴーカートを運転しているような錯覚を覚える。普通のクルマとは、まったく異なる世界を日常に体験できる。

 シートがとてもよくできている。合皮のようだが背中に滑り止めがあって姿勢安定良好。シートベルトは若干きつい。

 空調の音は煩くないレベル。ハンドブレーキの握りの部分が遠いのがやや気になった他は問題なし。

 試乗車には専用ナビ(スカイサウンドインターナビ)がついていたが、タッチパネルでないこともあって使い勝手が非常に悪い。最後まで使い方がよく解からなかった。

 

走り

 グラフより、S660はスポーツカーの基準を満たしている。

S660の走りのポジション

グラフ1:走りが楽しく感じられる車重の限界(経験則)

 鋭い加速感がある。テンポよくシフトアップしてその加速を楽しんだあと、スピードメーターを見ると速度は意外に低い。日常で速度をあげずにエンジンをめいっぱい働かせて、元気よく加速させる楽しさがある。これはライトウエイトスポーツの特徴の一つ。2Lを超えるエンジンで同じことを味わうには、高速道路に行かなければならない。

 6MTの感触は若干入りがシブいが走りに支障ないレベル。ブレーキフィールはリニアで、ディスクにパッドが触れる感触が足に伝わってくる。これはModuloX 固有の特性かもしれない。

 加速してアクセルを緩めると「プシュー」という給気音(ブローオフバルブ音)が聞こえる。これはカーバトルの映画などで聞く音と同じ。トヨタ86にあった不自然なサウンド制御[1]と違って、心地よく響く自然な音である。

 フロントのタイヤサイズは165/55R15。ステアリングフィールに支障ないサイズになっている。サスペンションがやや硬めだが乗り心地は我慢できないほど悪くない。

 ボディ剛性は十分。オープンカーでよくあるスカットルシェイクが感じられない。これは下の写真のように、頭の上にフレームが通っていることや、シャーシの下に補強ビームが入っていることが関係しているとみられる。おそらく構造解析を徹底的にやって形状を最適化したのだろう。

S660のフレーム写真

出典:ホンダS660メーカーカタログ

 シフトギアの間隔は下のグラフの通り。

S660のギア間隔のグラフ

グラフ2:いろいろなクルマのギア間隔

 下の方から徐々に広がる形で6分割されている。実際操作してみると違和感なく、このクルマの動力性能に見合った最適なギア間隔に設定されていると感じた。

 

総合

 「選択と集中」によって生み出された、とんでもないクルマ。収納スペースがほとんど無く実用性に乏しい。その代わり走りに徹底的にこだわって作り込んである。公道をゴーカートで走るといった非日常を体験させてくれる。乗り心地も許容範囲にあり、ロードスターのように「もうこりごり」「二度と御免」とはなりにくいように思う。

 こういう尖がった個性的なクルマはホンダ以外では生まれそうにない。昔誰かが言ってたが、このクルマを見ていると、日本にホンダというメーカーがあって本当に良かったと思う。

<参考購入先>
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