試乗日:2023/9/23
車種: トヨタ GR86 SZ6MT(3BA-ZN8-C2B8)
ボディ・内装
とても流麗、かっこいい、若者の興味を引く。いかにも、スポーツカーらしい外観のクルマ。
後ろにシートがあり、ヒト2人と荷物が乗る。トランクもそこそこ広い。2人の宿泊旅行も厳しそうなロードスターと違って実用性が高い。
内装は流麗な外観と打って変わって残念なことになっている。ガンダム世代の素人がデザインしたかのよう。赤のイルミも、GRのロゴも、目立ちすぎてアニメメカ、オモチャをイメージさせる。
シフトフィールは問題ないが、ベダルやステアリングのフィールはゴトコト、ガタガタ音がしてオモチャっぽい。アルテッツアを思い出す[1]。
空調のノイズは気にならないレベルに押さえられている。天井の制振材不十分でバイザーをあげるとドコンという。
走り
2Lの86は遅いという評判だった。そこで2.4Lにしたわけだが、「速さ」という無意味なスペックが良くなっただけ。
下の図は「思い通りに走れる」限界を表したもの。NAはグレーの線の下にないといけない。左のポイントは先代の86、右が現行86。右上にシフトしただけで改善していない。
排気量を増やすと重くなり応答が鈍くなる。そこは足を固めて誤魔化すしかない(応答∝√(k/m))から、乗り心地が犠牲になる。2Lを超えると乗り心地と応答が両立しないので、スポーツカーは成立しない(図では破線にしている)。今回も、それを追確認できた。
エンジンのサウンドも、大人しすぎていまひとつ。音、操作、視覚などの情報全てに置いて、「残念なフィーリング」を感じさせるクルマである。
総合
良いのは外観だけ、中身はスポーツカーを知らない素人の創作。このクルマを見ると、やはりトヨタにスポーツカーを作るのは無理なんだな、と思う。それをやったら絶対ダメ、という設計をして、実車が完成しても乗っても、誰も基本設計の問題に気づかない。それがトヨタの最大の問題といえそう。
スポーツカーの作り方は、ロードスターから学べるはず。トヨタのこと、当然見ているはずだが、現車を前に「犬が星を見るがごとき」様子だったことが想像つく。
スポーツカーに興味を持つ若者は、今も一定数いる。かっこよさに惹かれてコレを買った人は、次も86にしたいと思わないだろう。こうして、スポーツカーは売れなくなっていく。
86は計画段階でコケている。上の図は、スポーツカーが成立するための絶対的なmust条件を示している。それを外した時点で、作っても無駄だった。アフターパーツでいじってもしょうがないクルマである。
図の線の内側で計画された、乗り心地が悪くないクルマ。これだけで「運転が楽しい」スポーツカーは作れる。その良さをよく実感するのは、サーキットを走ったときではなく、コンビニの駐車場にバックで停めるときである[2]。
他のこと、例えばターボ、デザイン、6M、FR、重量比、オープン、サス、エアロ、扁平タイヤ、ブレンボ、レカロ・・などは手段、オマケに過ぎない。オマケをてんこ盛りしても基本設計がコケていると無意味。走りは軽トラにも劣る「見てくれ」だけのクルマしか出来ない。
ロードスターでトヨタが見ないといけなかったのは、パワーウエイトレシオと、サスペンションの振動伝達率の、「マツダが考えるスポーツカーの基準」だったはず。カー雑誌の評価や、それに感化されたクルマおたくの意見を参考にしていては、100年経っても、売れるスポーツカーは作れない。
<参考購入先>
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