クルマの乗り心地がいい、悪いは定性的な感覚で、定量的に知る方法がなかった。そこで、カタログの主要諸元からこれを定量的に知る方法をご紹介する。
乗り心地は何で決まるか
クルマの乗り心地はサスのばね定数と車重に深く関係していて、ばね定数/車重 で決まる共振周波数の値が大きいほど、車体に伝わる振動が増えて乗り心地が悪くなる。
乗り心地はタイヤも関係していて、不整地を走るときの「突き上げ」はタイヤとサスの合わせ技で決まる。下のグラフは、車体に伝わる衝撃を周波数別に計算したもので、山が2つある。下の山は車体とサスのばねで決まる共振点、下の山はタイヤとホイールで決まる共振点である[1]。サスのばねが半分になれば、突き上げも同時に下がることがわかる。
ダンパーは伸縮速度に比例して硬くなる「ばね」。これは共振点の山を丸める役割をしていて、硬すぎるダンパーを使わない限り、ばね定数/質量 で乗り心地が決まると考えてよい。
乗り心地を数字で知る方法
クルマの主要諸元に車重は書いてあってもばね定数が不明。これは「最低地上高」が参考になる。通常ローダウンするとき地面を擦らないよう硬いバネを使う。つまり最低地上高が低いクルマのサスペンションのバネは、硬いと考えられる。
すると、ばね定数がわからなくても1/(最低地上高×車重) の値から乗り心地を相対比較できる。車重が同じくらいなら最低地上高が低い方が乗り心地が悪い。最低地上高が同じくらいの場合は、車重が軽い方が乗り心地が悪い。
注意がある。最低地上高が下の写真のように車両底部の一部の突起物で規定されている場合、最低地上高の値は参考にならない。
ばね定数を実測する方法
クルマの現物があれば、ばね定数を実測できる。これは、後部座席に大人が座った時と、降りたときの、後ろのタイヤハウス上端から地上までの距離の差を求めて、大人の体重から割ればよい。
この差にはタイヤのたわみが含まれているから、正確にはホイールの下端から地上までの寸法変化を別に測って引く必要がある。ここまでやると、サスのばね定数をかなり正確に把握できる。
乗り心地を定量化する
乗る人の体重 m1(kgf)、乗る前後の地面からタイヤハウスの寸法差 L1(mm)、地面からホイールまでの寸法差 L2(mm)とすると、ばね定数K(N/m)は、
K=9.8×1000×m1/(L1 ー L2) 式1
乗り心地に関係する共振周波数f(Hz)は、車重をm2(kgf)とすると、
f=√(k/(9.8×m2)) 式2
式1と式2から、
f=√(1000×m1/(m2×(L1-L2))) 式3
式3の値が大きいほど、車体に伝わる振動が増えて乗り心地が悪い。
<関連記事>
1.アルミホイールの真実~軽量ホイールは乗り心地を悪くする
タイヤ空気圧のマジック~空気圧を変えると走りはこんなに変わる
静かなタイヤの選び方~レグノを超える究極の静音タイヤはこれだ!
スポーツカーにスポーツタイヤは無意味!?~デメリットだらけの高性能タイヤ
R34スカイラインをインチダウンして乗り心地を良くする~キャリパ干渉との戦い