ヤキソバ調理の課題にフライパンの焦げ付きがある。鉄のフライパンで問題になる。なぜプロは焦げ付かないで調理できるのか。今回はこの秘密を解明する。
焦げ付いたヤキソバ
鉄のフライパンで炒めたヤキソバ。最初に底が焦げ付き、そこにさらにくっついて堆積し、無残な結果に終わる。
ネット上にはヤキソバの焦げ付きに関する様々なアドバイスがある。よくあるのが「事前に両方を十分加熱せよ」というもの。
実際やってみると、うまくいく場合といかない場合がある。結果に違いが出るのは、温度のほかに別の要因があるようだ。これを実験で調べてみる。
実験
タマゴレシチンを使う
以前やったチャーハンの実験[1]ではタマゴに含まれるレシチンの界面活性作用がフライパンの焦げ付きを防いでいた。そこで、油に少量のタマゴを入れて焦げ目が付くまで加熱し、ヤキソバを炒めてみる。結果は成功。タマゴレシチンの威力をあらためて確認した。
天ぷらの残り油を使う
これまで炒め物に新品のキャノーラ油を使ってきたが、ここふと、天ぷらの残り油があるのを思い出した。天ぷらの衣にはタマゴが使わる。もしかしたら、レシチンが溶け出しているかもしれない。早速やってみる。
天ぷらの残り油でフライパンを「油返し」して、ヤキソバを炒めてみた。結果は成功。
今までは良かれと思い調理に新品の油ばかり使ってきたが、鉄のフライパンでは揚げ物に使った使い古しの油がいいようだ。鉄のフライパンは油返ししてあるが、新品の油では焦げ付きを十分防げないようだ。
結論
「新品の油を使った油返しは意味ない」「揚げ物に使った残り油がベスト」。これが今回の発見だった。
繰り返し使った良く泡立つ天ぷら油はレシチンを豊富に含んだ有用な油。これ無しで焦げ付かない調理をするのは難しい。鉄板焼きやタコ焼きなど、あらゆる焼き物に利用できる。
洗剤の汚れ落ちが温度が高いほど良いように、油に含まれるレシチンも温度が高いほどよく働く。冒頭で書いた「事前に十分加熱せよ」というアドバイスもレシチンの作用を考えれば理屈が通る。「高温にしても焦げ付いた」という失敗もレシチンを含まない新しい油を使った結果なら辻褄が合う。
もしかしたら、この油を使えばタマゴなしでもパラパラチャーハンが出来るのでは? そう思ってやってみたが、やはりタマゴの補助がないと厳しい。ごはんは界面活性剤の働きを助ける「かんすい」を含まない為、やきそばよりも焦げ付きやすいようだ。
お店の鉄板焼きはなぜ焦げ付かないのか
おそらく界面活性剤を多く含んだ炒め油を使っている。少量買うと高いが、使ってるのは業務用の缶入り[2]。これを使えば、チャーハンもヤキソバも、基本的に鉄板にくっつかずに調理できるはずだ。
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1.IHと鉄のフライパンでパラパラチャーハンを作る
<参考文献>
2.炒め油 J-オイルミルズ(リンク切れ)