クロスの張替を不要に~長持ちする壁クロスの選び方

 住宅ではビニールクロスが多く使われている。これは少しずつ劣化して必ず「張替え」が必要になる素材だ。劣化せず、ずっと綺麗な状態を維持できるクロスがある。

 

壁クロスの比較

 壁クロスの材料は大きく分けてビニール(塩化ビニール、通称塩ビ)、オレフィン、紙の3つがある。メリット、デメリットを比較できる表を作ってみた。

 

表1.壁クロスの素材比較表

クロス素材 質感 寿命 汚れ キズ 塗装 補修
ビニール × 不可 容易
ビニール(ハード) × 不可 容易
オレフィン × × 容易
× × やや難
紙(耐汚染) × 容易

 ビニールクロスは汚れやキズに強い(柔らかく自己復帰する)が、寿命がある。壁クロスにビニールを使うと必ず張り替えが必要になるが、オレフィン、紙ではこのような問題が起こらない。

 オレフィン、紙クロスは劣化しないが、汚れやすく、材料が弱くキズ付きやすい欠点がある。汚れについては、耐汚染タイプを選べばある程度改善できる。

 

なぜビニールクロスは長持ちしないのか

 ビニールクロスの材料は塩化ビニール。ビニールクロスは、この塩化ビニールに「可塑剤」を混ぜて柔らかくしたものだ。

 問題はこの可塑剤に起因している。これは油のような性質のもので、時間がたつと別の素材に移行したり蒸発するなどして徐々に消失する[1]。これによってビニールの弾性が失われ、ひび割れたりボロボロになる。

 ほかにも、塗装をできなくする弊害もある。ビニールクロスに塗料を塗ると、可塑剤が塗料に移行してベタベタになり、いつまでも乾かない状態になってしまう。

 

私が選んだクロス

 我が家では新築の際、耐汚染タイプの紙クロス(東リ・エコウォール WEN7201,7312)を選んだ。

 表面に汚染防止シートが貼ってある。少しツヤがあるため紙より質感が劣るが、マジックやクレヨンで落書はペイント薄め液(灯油)で落ちる。糊が染みこまないので、部分補修も容易。

 しかし、押すと簡単に織目がつぶれて凹むなど、弱い面がある。

 

10年後の様子(2018/8)

 

紙クロスを施工して10年目の様子(東リ・エコウォール )

 東リ・エコウォール(10年目)。直射日光が当たるところに日焼けなどなく、新築時と変わらない。

 しかし、水滴がつく場所は写真のようなシミができる。

 トイレ、洗面所などの水回りは、たとえ水滴が当たらなくても空気が動きにくい場所は湿気で変色してしまうことがわかった。水回りは24時間換気しているが、部屋の隅は空気が動かないので改善にならない。

 

 

紙クロスのシミをエナメル塗料で補修した様子 紙クロスは塗装できるので変色した部分の補修ができる。

 写真は自作の補修用塗料。背後はこれで補修した部分。

 白、黄色、茶色、フラットベースの混合比を調整することでまったく同じ色を作れる。これで張替えが塗装(部分補修)で済む。

 

 塗料は水性の水性ホビーカラータミヤのアクリル塗料がよい。塗り方は手塗りではなくエアーブラシで吹き付ける。私はタミヤのスプレーワークHGを愛用している。様子を見ながら少しずつ重ね塗りしていけるが、広い面積の塗装には向かない。

水周りに設置したメラミン化粧版(アイカ セラール) 紙クロスは水に弱いので、水周りは必ずメラミン化粧版でガードする必要がある。

 写真はクロスと同色のアイカ セラールを付けた例だが、高さがちょっと足りなかった。蛇口まわりは少なくとも周辺30cmのガードが必要。

 

 

トイレの水回りに施工した紙クロスの様子 トイレの水栓とタオル周辺は水滴がかかりやすい。写真は塗装による補修済みだが、補修前はシミだらけ。

 こういう場所は蛇口周りからタオルにかけて全部メラミン化粧板を貼ったほうがよい。

 

 

 

結論~壁クロスを選ぶポイント

 

長く作られているベーシックな品番から選ぶ
 あまり流通していない商品を選ぶと、廃番になって補修不能になる。クロスを貼った際は、補修用に余りを(できれば1巻余分に)もらっておくとよい。

※:私が使ったエコウォール WEN72**番台は、2018年現在、廃版になっていて入手できない(代替品もなし)。素材が長持ちするといってもモノがなくなると結局張替えになってしまう。これは壁紙に限らず、外壁材など住宅建材に共通して言える。

・種類をできるだけ統一する
 クロスは補修が必要になるもの。アレコレ部屋に応じて貼り分けると補修が面倒になる。我が家ではトイレ、洗面などの水回りにWEN7312、他は全てWEN7201という風に貼り分けたが、種類が増えるとその分、補修用の部材が増えてしまう。できれば1種類で統一、多くても2種類にしておくのがよい。

・紙クロスは経時変化しないが水回りに弱い
 紙クロスを使ってみて10年、新築時と何も変わらないことを確認した。ただし水回りは変色する。アクリル塗料で補修可能[1]だが面倒。ここは塩ビクロスにするか、アイカ セラールなどのメラミン化粧板を広く貼るなど、検討の余地がある。

 

<参考購入先>
壁クロス補修材 ビニールクロスは補修しても結局張替えになるので意味ないかもしれません
かべシール オフホワイト
クロスの継ぎ目を埋めるためにベストマッチマッチするシール材です

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<参考文献>
1.可塑化塩ビフィルムからの可塑剤の揮散