住宅の高気密・高断熱化に伴いサッシもそれなりの性能が求められるようになった。しかし気密・断熱性が良いとされるサッシの実態は隙間だらけ。トステムの樹脂サッシで経験した問題と、対策をご紹介する。
サッシの隙間の例
我が家のサッシはすべてトステム(現在LIXIL)のシンフォニーマイルド。気密性のスペックはJIS最高ランクのA-4等級という。
写真はその実際。引違い窓の端部や、窓枠の戸当たりに添って黒っぽいホコリが付いてる。これは外気が侵入している証拠。一番右は引違い窓の戸車付近。隙間があり外の光が見える。
我が家にはこのような縦すべり出し窓が13カ所あるがすべて似たような状態。
引違い窓を閉めた状態で取手付近に1センチの隙間がある。程度の差はあれ、すべての引違い窓が似たような状態。ひどい場所は3センチもあった[1]。
閉めた縦すべり出し窓の戸先から光が漏れている。戸先が5ミリも垂れさがりパッキンの当たり面からはみ出している。原因は窓の重みによる垂れ下がり。施工業者を呼んで調整をお願いしたら調整不可とのこと。
この縦すべり出し窓に気密を求めるのは構造上、ムリのようだ。
縦すべり出し窓のヒンジ固定部。なんと樹脂にビスを打つ構造。樹脂が割れてしまっている。点検した結果、半数以上が割れていた。
戸先の垂れさがりは、このような樹脂部品をヒンジに使っていることも原因らしい。
ほとんどのサッシがNG!?
3種換気は室内が負圧になるため僅かな隙間から外気が侵入してくる。LIXILに限らず、国内大手メーカー製のサッシはA-4等級だろうが何だろうが、似たようなものだと思う。一応、各所にゴムやパッキンが付いているが、角の部分で切れているなど中途半端できちんと気密が確保できる構造になっていない。
LIXILには高性能なサッシもある。いくら優れたサッシを使っても、現場の施工品質が伴わなければその性能を発揮できない。指定された商品をポン付けするだけのハウスメーカーに、3種に対応した気密性を求めるのは無理なのかもしれない。
ちゃんとした気密を確保できるサッシはF&Pの家[3]で採用してるシャノンくらいかもしれない。気密にこだわると、高価なシャノンを付けるか、スペック倒れのサッシを付けて自分で丁寧にDIYしていくかの、どっちかになる。
何を選べばよいのか(2019/1/20)
以上の結果から、サッシを選ぶときは、ガラスの断熱性能だけではなく、枠の隙間や調整機構の有無が重要なチェックポイントになることがわかる。いくらガラスが高性能でも枠が隙間だらけでは意味がない。このことはカタログを眺めてもわからない。
基本的には、FIX、上げ下げ、横滑り出しの順に気密を確保しやすい。メーカーの作りが少々悪くても、構造的に隙間ができにくいのでそこそこの性能を確保できる。レールのある引き違い窓や横滑り出しは隙間ができやすい。大型の横滑り出し窓は重みで垂れ下がり、隙間ができてしまうケースが多い。
住宅展示場に行ったら、冒頭の写真で示したように黒い埃の付着をチェックするといい。気温差の大きい冬場には、冷気の侵入を肌で感じることができる。近年サーモカメラ が安くなってきた。隙間から冷気または熱気が入るので、このようなカメラを使えば断熱欠損が視覚的に見える。見学の際に持参したいアイテムだ。
一棟ごとに性能を保証するFPの家[3]ではエクセルシャノン[2]など自社で厳選したサッシを採用している。FPの家で使っているサッシも一つの参考になる。
サッシの隙間をDIYで改善する
見つかった隙間はDIYである程度改善できる。
使う材料は、戸あたり用のテープ(セメダイン 防水すきま用テープ)。黒と灰があり、黒は広く戸当たりする部分に、灰は幅半分に細く切って既存パッキンの裏の隙間に入れる形で使う。
材質は両方ともEPDM。気泡のサイズや弾性に多少バラツキがある。
以下はセメダイン 防水すきま用テープを使った対策例。
トステム引き戸の溝に黒の防水すきま用テープを入れたところ。事前によく洗浄してから施工する。
その後の経過観察から、黒は対候性に劣り、紫外線などで劣化して溶け、相手を汚す(溶剤でないと取れないこびりつきを生じる)ことがわかった。灰色のTP-254がお勧め。
FIX窓の底面に見られる水抜き穴に詰めたところ。白い部分は細い隙間を木工用ボンドでシールしたところ。
この穴は結露した水を抜くためのものだが、結露しなければ不要、外気の侵入源になるため塞いでしまうと良い。
縦すべり出し窓のパッキン裏に幅半分に切った灰の防水すきま用テープを入れたところ。弾力をバックアップする。
このあと、窓枠についているロックピンを調整して連動ロックレバーを下げたときの「引き込み」を調整する。
隙間はサッシだけとは限らない
3種換気は設備コストが安いが、うまく機能させるためには建物側に厳しい気密性能を要求する[4]。
サッシ以外にも、ダクト、電気配線、コンセント、スイッチ、水道配管、エアコン配管などあらゆる貫通部に丁寧な気密処理が求められる。これらが不十分だと、吸気口以外のところから意図しない換気が発生して設計通りに機能しない[1]。
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<参考文献>
2.エクセルシャノン
<改訂履歴>
2019/1/20 セメダイン 防水すきま用テープの紹介を充足させて関連する写真を追加しました。