コンクリートの欠けを補修する

 ドブ板やブロックなどのコンクリートが欠けた部分を補修したいことがある。ホームセンターに売ってるセメントや補修材を使ってもうまくいかないことが多い。補修に使える資材を見つけて実際に施工した結果をご紹介する。

 

厄介なコンクリート欠けの例

表面が割れてしまった側溝の表面

 写真は外構工事のとき重機が乗って割れた側溝の表面。これは「スリットPU側溝」という蓋がないタイプで簡単に交換できない。

 このように薄く割れたところの補修は難しい。モルタルやセメントは基本的にコンクリートと接着しないので、これらを薄く塗りつけても硬化するときに収縮して剥がれてしまう。ここは過去何度もトライして失敗を重ねてきた。

 

 

 

モルタルは接着剤ではない

 コンクリート構造物では「打継ぎ」部分が大きな弱点だという。ここはヒビ割れや水漏れ、鉄筋の錆びなど、トラブルの原因になっている。

 打継ぎ部の接着で頼れるのは、チッピングによるアンカー効果(凹凸に入り込むことで取れなくなる効果)のみ。モルタルを併用することがあるが、これは継ぎ目が目立たないよう、見た目を整えるだけで防水効果はない。

 打継ぎ部分は鉄板を埋めるか、J-シール、ナルストップ[2]のようなもので止水処理する必要がある。

 

薄塗できるモルタル

 NSゼロヨンという薄塗出来るモルタルがある。塗り厚に応じて品番を選ぶ形になっていて、#20は塗り厚0~5mmに対応した商品。NSゼロヨンは基礎の仕上げモルタルに広く使われており、補修で色違いを生じない。

 

NSゼロヨン#20とNSハイフレックス 信越のメトローズ

 写真はNSゼロヨン#20(日本化成)。 25kgの袋のみで小売されていない。モノは安いが個人のDIYでは使い切れない。

 NSゼロヨン#20を顕微鏡で見ると、軽量骨材(パーライト)や砂、繊維が見える。砂の粒子はとても細かい。よくあるDIY用の補修材と違って強度もそれなりに期待できそう。強い塗り付けを奨励しているのはパーライトの粒子を潰すため。

 NSゼロヨンは写真にあるNSハイフレックスHF-1000を混ぜて使う。ハイフレックスの中身は酢酸ビニール樹脂(木工用ボンドを薄めたもの)。これは水分の移行を防ぐシールと保湿をするだけで接着剤の働きをするわけではないことに注意。アクリル系の接着補強材も基本的に同じ。これらは JIS A6203で規格化されている。

 保湿材は他にメトローズ(右)がありこれも良く使われる。こちらは水を含むと膨潤して大きく膨れ、ゲル状になる(今回は使わなかった)。

 

NSゼロヨン#20とハイフレックスで試験的に作った硬化物 側溝の割れた部分に施工した結果 

 左はNSゼロヨン#20+ハイフレックスの硬化物。事前に硬化物を作ることで硬化時間、強度、収縮、割れなどの様子を見たり、補修相手との比色に役立つ。10mm厚から徐々にゼロに伸ばして作ったが、割れなどは見られない。水平面なら10mm厚も問題なさそう。

 右はNSゼロヨンとハイフレックスを使って補修した結果。コテを使って納得いくまで形を整える。作業性、成形のしやすさ、仕上がりなどに問題はなく、たいへん使いやすい。

 NSゼロヨンは乾燥すると母材から取れなくなるが、接着されたわけではなく、アンカー効果で母材の凹凸に引っかかっているだけ。ハンマーで叩けば取れてしまう。

 

施工は季節と時間帯に注意

 屋外のコンクリート補修は乾燥によるドライアウトが課題。特に薄塗りするとき注意が要る。

 コンクリートの施工は作業に適した時期と時間帯がある。時期は秋冬春を選び、午後から作業を開始して夕方に終わらせ、日の沈んだ夜間を養生に充てる。

 雨が降ったり、凍結すると失敗するので、事前に天気と気温をよく確認して作業する。

 

余ったモルタルの処置と長期保存の方法

余ったコンクリートを植木鉢の土で濾過し固めている様子 自宅でモルタルを練ると問題になるのがその後始末。庭に穴を掘るか、掘れない場合は、写真のように植木鉢に入れた土で濾過して固める。固まったら塊を取り出して埋めるゴミに出す。

 

 

 モルタルの賞味期限は製造後3ヶ月。放っておくと湿気と炭酸ガスに反応して風化していく。ビニール袋は湿気やガスを透過するので風化を止めることはできない。長期保存するにはシリカゲル同様、ガラスや鉄の缶に入れて密封する必要がある[1]

 25kgあるNSゼロヨンは捨てるにも保管にも困った代物だが、補修の予備にできるだけ保管しておきたい。保管には空いた一斗缶や梅酒ビンなどが役に立つ。

 NSゼロヨンをガラス瓶に入れて密封したところ100均で出来るだけ大きいガラス瓶を入手した。これにNSゼロヨンを入れ不乾性パテ(ネオシールB-3)でキャップの周りを密封したところ。これでいつでも欲しい時に使える。

 

 

4年後の様子(2019/5/19)

 もうすぐ4年になる施工カ所の様子をご紹介。

 最初の写真は側溝の表面が割れてしまった部分。色がなじんで見た目に目立たなくなっている。他に問題は見られない。

側溝の割れを補修して4年後の様子

 薄く剥がれてしまった基礎モルタルの補修部分。オリジナル部分は砂利を敷く前だったので赤土で汚れて色が違うが、ここも問題ない。

基礎モルタルを補修して4年後の様子

 

 

<参考購入先>
不乾性パテ(ネオシールB-3) 完全密封保存に使える不乾性パテ。屋外の防水、防錆、紫外線保護にも使えます
NSゼロヨン #20がお勧め
NSハイフレックス HF-1000

<関連記事>
1.シリカゲルを上手に再生して長期間保管する方法
コンクリートの中性化と延命対策~マイホームは基礎の打設時期に注意!

<参考文献>
2.成瀬化学 コンクリート止水剤 ナルストップ