外壁のコーキングを打ち替えて金属テープで長持ちさせる

新築10年すぎると日当たりのよい場所のコーキングが傷んでくることがある。この部分補修を外注すると結構お金がかかる。梯子が届けば自分で補修出来る。今回はこの補修のコツと、長持ちさせるための対策をご紹介する。

 

写真は12年目に見つかったコーキングの劣化。施工はコニシ SRシールS70。問題は日当たりのよい南側に多い。継ぎ目のシワは、建築後の動きのせい。

劣化したコーキング

コーキングは時間たつと痩せてヒビが入り、やがて切れるが、コーキングが薄いと早く切れてしまう。切れた部分の打ち厚は、他の場所の半分しかなかった。これは最初の施工に原因がある。

劣化したコーキング

片側剥離は当初施工不良の可能性が高い。

劣化したコーキングの例

補修が必要な部分の総延長は5mくらい。施工した工務店に見積もりを出してもらったところ、なんと5万8千円。シリコーンカートリッジが10本単位の購入なので、2色あると20本。使うのは2本だけで、ほとんどが無駄に破棄される算定。メートル当たり1万円もかかるなら、自分でやることにした。

 

準備

写真はコーキング補修に必要なもの。シーリング材(変性シリコーン)、マスキングテープコーキングガンソフトヘラ。その他消耗品など含め全部で5千円くらい。ヘラのサイズは、コーキングする溝幅より少し大きいものを用意する。

変性シリコーンにはいろいろグレードがあるが、最後に金属テープを貼るのでホームセンターで売っている安いものでよく、現物との色差にこだわる必要もない。

アマゾンで取り寄せた10mm幅の金属テープ。銅とアルミの2種類用意。コーキングの保護に使う。

10mm幅のアルミと銅の金属テープ

 

施工

時期

施工時期は気温10℃を下回る日にやる。気温が高いとマゴマゴしている間に固まってしまう。10℃は20℃に対し硬化時間が倍に伸びるから、初めてでも余裕をもって作業できる。

 

安全対策

安全対策をする。梯子は倒れないようロープで縛る。写真のロープは安全帯。作業時はヘルメットを着用すること。今回はバイク用ヘルメットで代用。梯子の上では必ず中央に足を置いて、頭を梯子の幅から出さないようにする。これを守らないと倒れることがある。

梯子をロープで固定した様子

 

打ち替えor打ち増し

コーキングの補修方法には古いコーキングを除去して新しく充填する「打ち替え」と、上から塗るだけの「打ち増し」がある。通常「打ち替え」が良いとされるが、あとから金属テープを貼るならどっちでもかわまわない。今回は打ち替えで補修。

 

作業手順

溝の両サイドにカッターを入れて古いコーキングを取り出す。剥がすとビニールのようなものが見える。これは接着を防ぐためのカバーとみられる。

古いコーキングを剥がしている様子

コーキングの劣化は上から下まで均一ではない。日が良く当たる上の方は劣化しているが下の方は大丈夫な場合がある。これはカッターを進めるときの摩擦でわかる。劣化してないコーキングは粘りがあって切込を入れるのに力が要るうえ、なかなか剥がれてくれない。上から下に向けて剥がしていって、しんどくなったらそこで止めるとよい。

古いコーキングを剥がしている様子

 

古いコーキングを切り出すと外壁側に古いコーキングが薄く残る。これを綺麗に除去するのは大変なので今回はそのままいく。変性シリコーンの上にプライマーを塗ると後述するようにかえって剥がれやすくなるので、塗らないこととした。

マスキングテープを貼る。凹凸で隙間ができないよう、丁寧に貼るのがポイント。

マスキングテープを貼った様子

マスキングテープを貼った様子

 

溝にコーキングを充填する。写真はガンを上に向けているが、重力で下に垂れるのでガンを下向きして下から上に向かって充填するのがよい。気泡が入らないよう注意する。

コーキングを入れている様子

コーキング材を入れた結果

 

ソフトヘラで押さえる。やや斜めに当て、しっかり押さえながら上から下に動かす。

ヘラでコーキングを成形している様子

ヘラでコーキングを成形している様子

 

マスキングテープをはがした結果。コーキングの付いたテープは周囲を汚すので注意。すぐ新聞紙にくっつけて丸めるか、ビニール袋などに入れる。

補修が完了した様子

ヘラの押さえが足りないと、テープをはがしたとき写真のような「ヒゲ」ができる。凹凸のある外壁ではもっと柔らかくて厚みのあるヘラを使った方がよさそう。

小さなヒゲは放っておいて問題ない。目立つヒゲはヘラなどを使って丁寧に取り除く。

 

充填が完了したところ。普通はこれで終わり。

補修が完了した様子

補修が完了した様子

 

触って動かない程度に固まったら金属テープを貼る。打ち増しも同じ要領でOK。完全に硬化したり、劣化した表面にはくっつかない。この場合はシーリング材を塗るところからやり直す。

銅テープでコーキングをカバーした様子

下はコーキングにシワがあった場所。動きによる追従性を検証する。

アルミテープでコーキングをカバーした様子

黒い外壁には銅を、白い外壁にはアルミを貼る。最初光沢があるが、時間とともに艶消しのいい風合いになる。

 

金属テープの作用

金属テープはゴムの劣化要因とされる紫外線を通さず、痩せの要因になる可塑剤の揮散を減らす効果が期待できる。左右の縁がちょっと露出するが、テープ両端の段差に汚れや藻類が自然について、これが保護の役に立つ。

金属テープはアクリル系粘着剤で弱くついているだけなので剥がれる可能性がある。以後の補修はコーキングではなくテープの補修になる。基本は、剥がれたところを貼りなおす。

裏返し法

金属テープを裏返しに貼ると金属面を完全にコーキングと接着できる。保護効果の面では最上で、あとから剥がれる心配がない。アクリル粘着面が表に出るので、上からもう1回、背中合わせに貼る(これは必要ないかもしれない。今後検証していく)。

裏返し法では、コーキングを最初に塗ってから少し固まった状態(指に付くくらい)のとき貼る。固まってないと液体の上にテープを置くイメージになって難しい。手順は、

コーキング→少し固まるまで待つ→マスキングテープをはがす→金属テープを裏返しに貼る→剥離紙をとる→金属テープを重ねて貼る。

裏返し法で施工している様子

裏返し法で施工している様子

貼ってから剥離紙を取るのは難しいので、最初に先を少し剥がしてから貼るとよい。

金属テープによる保護は初めての試みなので、今後様子を見ていく。

 

余ったコーキングの後始末

不乾性パテ(ネオシールB-3)をシールにして穴を開けていないキャップを付けておく。これで未開封と同等の密封ができる[1]。1液性のコーキング材は未開封でも徐々に固まってしまうため消費期限は半年くらい。実際は1年くらい使えるが、それ以上保存したい場合は、冷蔵庫に入れておくとよい。10℃で2倍(1年)、0℃で4倍(2年)に消費期限が伸びる。

余ったコーキングの後処理

 

劣化したコーキングの見分け方

南側で10年、風雨にさらされたコーキングの断面。両端の厚み8mm、中央は5㎜程度。表面のヒビ割れが一つの目安。中央のへこみは可塑剤が揮散して「痩せ」た結果。両側がくっついているので真ん中がへこんで写真の形になる。ひび割れは紫外線とオゾンが原因。

劣化したコーキング材断面

下の写真は裏側。裏面のツヤは元々下地のビニールに付いていた証拠。劣化したコーキングは裏側が剥がれているのでカッターの刃を入れれば容易に取れる。痩せてない場合は裏側が密着しているので、剥がすのがしんどくなるというわけ。

劣化したコーキング材の裏側

劣化の少ないサンプルと並べて見たところ。剥がしてみて、左のように裏側が平らな場合はまだ補修は早い。

劣化してないコーキング材との比較

 

プライマーは塗ったほうが良いのか

はぎ取った古いコーキング)変性シリコーンの上に変性シリコーンを塗ったときのプライマーの効果を調べた。結果は次の通り。

変性シリコーン用プライマープライマーの効果を試している様子

 

変性シリコーンに対するプライマーの接着効果を調べた結果

  劣化した面 切り口
プライマーあり × ×
プライマー無し × ◎(ほぼ一体化)

変性シリコーンにプライマーを塗るとかえって剥がれやすくなることが判明。カッターで切り取った部分に直接塗ったものは一体化していて剥がせなかった。劣化した面は塗っても塗らなくてもほとんど差がなかった。

プライマーはサイディングなどの粉っぽい端面に塗って効果を発揮するものはないか。変性シリコーンに塗るとかえって接着を悪くする。つまり打ち替えではカッターで切り取ったところへそのまま充填すれば十分である。もし見積もりに入ってきた場合は削除しよう。

 

 

<参考購入先>
変性シリコーン
マスキングテープ
コーキングガン
ソフトヘラ
安全帯
ヘルメット
梯子 6mあれば天井付近に手が届きますが危険を伴います
不乾性パテ(ネオシールB-3) 類似品に注意
金属テープ コーキングの保護に適した幅10mmのテープ。銅とアルミがあります

<関連記事>
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ご注意:この方法はコーキングを使うあらゆる用途に応用できます。2021年1月現在、金属テープをコーキングの保護に使った事例が過去に存在しないことを確認しています。無断商用利用はご遠慮ください。