- 筆洗いにペイント薄め液などの有機溶剤を使うと多くを消費する。この廃液は、今まで固めて捨てるしかなかった。毎回捨ててしまうのはもったいない。なんとか再利用できないか?そう考えて一定の成果を得たので報告する。
廃液リサイクルの方法
溶剤に入れた塗料は、微粒子の状態にある。この粒子は、非常に長い時間放置すると沈殿する。溶剤のリサイクルでは、この沈澱時間を短くすることが課題である。
沈殿を早くする方法に「凝集」がある。これは塗料の粒子を集合させて重くすること。そして、一度凝集したものが簡単に壊れない(再び分散しない)ことが望ましい。
水用では、昔から優れた商品がある。例えば、クイック きよまる君などの無機系の粉末や、PAC(ポリ塩化アルミニウム液)だ。
ところが、有機溶剤用に実用化された商品は見当たらない。仕方なく「固めて捨てる」のがこれまでだった。
実験と結果
有機溶剤に使える凝集剤についてChatGPTやネットを検索すると、アルコール類やアルカリ塩が出てくるが、実際にやった実例を見ない。そこで、いくつかテストしてみた。
結果は次の通り。
表 汚れた有機溶剤の微粒子凝集実験結果
No | 薬剤・方法 | 結果(沈澱時間) | 備考 |
1 | クイック | × | |
2 | きよまる君 | × | |
3 | IPA | △(3日以上) | |
4 | セスキ炭酸ソーダ | 〇(3日以上) | |
5 | メタケイ酸ナトリウム | ◎(3日以上) | |
6 | IPA+クイック+水 | × | IPAだけの効果と見られる |
水処理のように「あっという間」に完了しない。効果がみられるまで3日以上かかり、透明になるまでの時間は処理する溶剤の濁度により異なる。
1,2は水用の凝集剤。やはり、まったく効果が無い。
3のIPA(イソプロピルアルコール)は溶剤に溶ける。効果もあるが、処理する溶剤と同じくらいの量が必要であり、この混ざり物は、もはや元の溶剤とはいえない。沢山使うのでコストがバカにならないし、攪拌すれば再び分散してしまう。
4と5はアルカリ塩。溶剤にほとんど溶けないが効果はある。溶けない結晶が沈降したものを固める効果があるようなので、それなりの量を入れる必要がある。コストはほとんど気にならないくらい安い。
メタケイ酸ナトリウムが優秀で、凝固したフロックが分散しない。溶剤との分離が容易であり、フロックは塊として捨てることができる(写真)。
リサイクルした有機溶剤は少し色づいているが、このくらい綺麗なら予洗いに十分、使える。
6はIPAが水にも溶剤にも溶ける性質を利用して、本来使えない無機系凝集剤を無理やり溶剤に使う目論見。最初IPAにクイック(上記水系凝集剤)を分散させておき、凝集剤のフロックができるまで水を足したものを使う。一応効果あるが、フロックが有効に機能している様子はない。これは投入したIPAだけの効果とみられる。
今のところ、お勧めはメタケイ酸ナトリウム。
メタケイ酸ナトリウムは洗剤として知られている。漂白剤の効果を高めたり、油汚れを落とすのに使われる。油によく溶けて水と乳化し、しかも金属への影響が少ない。極めて優れた洗剤である。
なお、本方式はまだ予備実験の段階。新しいことが解り次第、記事を更新していく。
上記のアイデアは最初の公開日の時点でネット上に類例がないことを確認済みです。内容の無断コピー、無断引用は固くお断りします。
<参考購入先>
メタケイ酸ナトリウム
クイック
きよまる君