スピーカの過渡応答を測定する

下のグラフは50Hzのバーストサインを使ってJBL-S3100の過渡応答を測定した結果だ。波形を見ると、出発点の遅れ(無駄時間)、位相ずれ、振幅の成長遅れなどが観察できる。

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 スピーカの過渡応答を計る人が一番知りたいのは音の「遅れ」であろう。これを知るには応答が始まってから正規の振幅に達するまでの時間(時定数)を調べればよい。

 他に遅れを表すものに「無駄時間」と「郡遅延」がある。「無駄時間」はスピーカから発した音がマイクに到達するまでの遅れ時間が該当する(この世界ではレイテンシと呼ぶらしい)。デジタル処理系では本質的に無駄時間が存在しデジタルアンプも例外ではない。無駄時間は周波数に関係なく一定だ。
 「郡遅延」とは伝達関数の位相の「傾き」である。連続ランダム信号を使って求めた郡遅延は「定常特性」であって過渡特性ではない。この郡遅延には無駄時間も含まれる。ネット上にはサブウーファーの遅れを群遅延で比較する間違った記事も見かける。

 時定数は63.2%立ち上がるまでの時間と定義される。バーストサインの場合は理論曲線をExp(-t/T)から求めて生波形にカーブフィットさせる方法がよいだろう。バーストサインのピークを結んだ曲線と、この式から求めた曲線が最もよく一致したときの T が時定数になる。

 下のグラフはExp(-t/T)の曲線でJBL-S3100 50Hzバーストサインに対してカーブフィットを試みた結果。この周波数ではポートの共鳴音が主であるため理論曲線と比較的一致する。測定結果は立上り時定数16ms、立下り時定数16msといったところ。カーブフィットの作業はエクセルを使って波形を描かせながら数字を調整する形にすると簡単だ。

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 下は10cmフルレンジBOSE101MMの50Hz応答波形。バスレフの共鳴点に近いため応答が悪く、JBLと同じ16msだった。元波形に無い応答も見られる。
 S3100も101MMも、100Hzの応答は数msだった。サブウーファの音が遅れる、違和感があると言われるのは、やはり「共鳴」で低音を出す仕組みそのものが原因に間違いない
 共鳴で低音を補うシステムでは、共鳴の依存度が高いほど違和感を感じる。小型SPにサブウーファーを組み合わせたところで、大型SPのような低音再生は期待できないことを知っておいて欲しい。

※:ヤマハYSTではポートの共鳴遅れまで補償しないので同様の問題がある。ただしユニットの動きの遅れは電流FBで補償されるのでYST無しよりマシといえる。但し元々振動版の軽い16cm程度のユニットではその効果は小さくYST無しと大差ないようだ。

 

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 測定値は部屋の定在波の影響を受けるので無響室でなければ正確に計れないが、スピーカとマイクをできる限り近接させ、カーブフィットすることでそこそこ正確な値が得られる。

 

 

<参考購入先>
サブウーファー 共鳴で低音を出すサブウーファは過渡応答の悪いSPの代表。出来る限り大口径のものを選ぶとともに、クロスオーバを低くして使うのがポイントです
プロ用サブウーファー 大口径のものが多いです

<測定・データ処理の方法>
(1)WaveGeneでバーストサインをつくり、これを再生してWave形式でデータを取得する。
(2)spwave(フリーソフト)を使って波形を切り出し、データをテキスト形式で保存(拡張子をcsvに変えておく)する。
(3)csvファイルをエクセルに読み込んで下記のワークシートにペーストする。
(4)開始時間や振幅を調整してカーブフィットする。

過渡特性計算ワークシートaudiocal2

 

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