拡大する土砂災害~木が簡単に流されるのはなぜか

 毎年夏になると、豪雨で山の斜面が崩れ、土砂と一緒に流れてきた樹木が家屋をなぎ倒すなどして被害が拡大・・そんなニュースを目にする。
 山林は本来、大雨のとき保水に役立つもの。なのになぜ、いとも簡単に表土ごと流されてしまうのか。実はこの問題、植林の仕方のところに大きな要因がある。

 

ポット苗の問題

 木は地面を境に地上と地下の発達がほぼ対称になるという。それは種から育った「実生」の場合で、ポット苗の場合そうはならない。
 実生ではまず地下に向けて直根が伸びるが、ポット苗は根張りがポットの空間で抑制されるため根がループし「 とぐろ」を巻いたようになる。根を伸ばして育てた苗木も、輸送の際に切り取ってしまうことが多いらしい(根が付いたままだと輸送コストがかかるから、切ってしまう)。

 このような苗を植えても、切ってしまった直根が再生しないのはもちろん、図のように地表付近を側根が発達するだけで、栄養の少ない地下に向けて直根が伸びていくことはない[1]

木の構造

 庭で大きく成長した木を何度か掘り返したことがあるが、ポット苗の根はループした形のまま大きくなっており、地下に向けて直根が発達する様子はなかった。そのため大きく成長したあとでもスコップひとつで容易に植え替えできてしまう。 ループした根の木がそのまま成長を続けると、数十年後に根詰まりして枯死する場合もあるという[2]

 このことは植林や街路樹で問題になっているようだ。右のような根張りの山林は、大雨が降ると表土ごと崩落しやすい。街路樹は台風で簡単に倒れ、 洪水でも来れば綺麗サッパリ流されてしまうだろう。

 山林の木々が左の形で岩盤まで直根が伸びていれば、どんな大雨が来てもびくともせず、高い保水力を発揮するに違いない。

 

ポット苗の例

 家庭園芸は趣味なので、大きく成長しても自分で植え替えしやすいポット苗の方が商品として良いのかもしれない。 それに適度に枯れたり倒れた方が、生産者にとって都合が良い。

 

DSCN76003 2008年7月。庭に植えたトキワマンサクのポット苗。80cm間隔に植えて目隠し(生垣)とした。魚の骨のように真っ直ぐ伸びた苗木は間違いなく挿し木によるもの。

 4年目に計画通りのものが完成したが全部が無事育ったわけではない。病害虫や台風などによる折損などで4割を植え替えている。

 

 

DSC000761 台風で折損したとき代替に楽天で購入した樹高2mのトキワマンサク。根がコブのように締まっており、まとも成長するとは思えない。

 苗を買う人のほとんどが根の品質まで気にしない。そのためポットで大きく育った商品にはロクなものがない。

 

 

 

実生苗から始める

 林業ではポット苗をコンテナ苗やブロック苗に替える取り組みが始まっているが、家庭園芸はポット苗が主流。

 風水害でびくともしない、家を守る丈夫な木を育てたいと考えるなら、麻布で根巻きされた苗木ではなく、幼苗から始めることが必要だ。種から育った「実生苗」が望ましいが、幼苗なら挿し木でもよいらしい。挿し木は直根が無いが、2年以内の幼苗なら直根が伸びるという[3]。

 

DSC001593 庭に散らばるトキワマンサクの実生苗を引き抜いて集めてみたもの。直根が発達するため30cmくらいに成長してしまうと手で引き抜くことが困難。実生の樹形は自然なためシンボルツリーに適する。

 

 

 DSC001641 実生苗を既存の木の間に植えたところ(2014年10月)。実生なので直根が発達する。大きくなったら世代交代させる予定。

 

 

 実生の苗木を植えて3年後の様子(2017/8)。当初は気が遠くなる思いで始めたが、今年は急に伸びて1mを超えた。
 今年は十分光があたるよう、既に植えてある成木を1/2に間引きし、下枝を取り除いた。

 来年くらい、最初に植えた木を全部切って世代交代できそうだ。

 

 

 

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<参考文献>
[1]ポット苗と実生苗の根系の違い
[2]コンテナ苗について
[3]苗木の根切りが生長に及ぼす影響について