免震ゴムのデータ改ざん~そもそも基準は妥当だったか

「不安だ」「免震に魅力を感じて買ったのにどうしてくれる」こういったマスコミの報道によって東洋ゴムが一方的に悪者にされ、交換しないと収まらない雰囲気になっている。まことにお気の毒だ。
 

 

基準の方がおかしくないか

  世の中には大小いろんな防振ゴムが市販されているが、カタログ値なんて目安にしかならないもので、実際測ってみるとバネ定数が2倍違うなんてことはザラだ。そんなアバウトな商品が問題にならないのは、その誤差の影響が小さい(2倍違ったとしても効果が1/2になるとは限らない)ことや、バラツキの多いゴムの性質をふまえた上で余裕を見込んだ設計をするためだ。

  今回の報道で基準の方を疑問視する声はほとんど聞かれない。ゴムの物性はバラツキや変動が大きく温度によっても大きく変わる。認定基準は減衰とバネ定数両方について誤差±10%以下!というが、ゴムと鉄板を積層したものをこの基準に収めるような物づくりが現実に出来るのだろうか。
 今回はたまたま東洋ゴムが貧乏くじを引いたのかもしれない。似たような商品を作る同業他社(ブリジストンやクラシキなど)にも飛び火しそうだ。今頃必死に内部監査していることだろう。

 

10%のズレ=免震性能10%ダウンではない

 「免震性能が基準を満たさないゴムを使った」(東海テレビ)という報道があるが、誤解を招く報道だ。正確には「性能基準を満たさないゴムを使った」である。それが直ちに「免震に問題あり」となるわけではない。

 「最大でマイナス50%の誤差があり、同社のモデル計算ではこの値だとゴムが1.3倍変形してしまい、地震の揺れを抑えられない」Economic News(3月16日) という記事もある。これも誤差が免震に直結するように読める不適切な報道だ。そもそも防振ゴムの設計は、許される強度の中で出来るだけ弱いバネを使う(変形を大きくとる)ことがポイントになるものだ。

  免震性能は固有振動数を計算して振動伝達率を求めてみないとわからない。この数式はかなり複雑で、防振の理屈は一般消費者にとってかなり難解だ。

 

免震性能はゴムだけで決まるものではない

 免震性能は「建物の重さ」も関係する。建物の重さ10%ズレの影響はゴムのバネ定数10%と等価だが、こちらの方はなぜか問題視されない。たとえ基準内のゴムを使っても建物が資材をケチって軽く作られていると設計通りの免震効果は得られない。ゴムは交換すれば済むが建物の方はそうはいかない。

 居住者が問題にすべきは、ゴムが基準からズレているか否かではなく、建物の免震性能が結果的にどうなったのか(設計通りか)だろう。この計算結果を踏まえたうえで「不安だ」「どうしてくれる」といった話にならないとおかしい。

 

  今回の話、もし安全率で吸収できるのであれば、

 

「データの改ざんは悪うございました、お詫びします。
設計は元々十分余裕を見ており、この程度の誤差があっても性能に支障ありません。
免震性能もこの通り十分でございます。安心してお住まいください」

 

で終わる。実用上問題ないものをわざわざ交換するのは、時間と費用と資源の無駄だ。

 データ改ざんは常に悪意を伴うとは限らない。やむを得ない事情がある場合もある。マスメディアも東陽ゴムを悪と決めつけてアラ探しするより、国交省や同業他社(ブリジストンやクラシキなど)に取材に行った方が、価値ある報道ができるに違いない。

 

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