電動ドライバーの選び方~主にDIYを目的とした

 電動工具と聞いてみなさんは何を思うだろうか「そんなもの要らない」「勿体ない」そう感じるかもしれない。私の経験上、身近に置くことで非常に役立つ電動工具がある。それは「電動ドライバー」だ。
 ここでいま仮に、時計を買ったとして、それを木の柱に取付けるケースを考えてみよう。

この場合、時計を引っ掛けるためのビスを1本打つ必要がある。具体的には手回しのドライバーを使って4mmくらいのビスを木の柱に打つ。これだけの作業に、どんな問題が予想されるだろうか。
 高い場所にビスを打つのは結構大変だ。途中で重くなって、ねじ込めなくなるかもしれない。「ドライバーなんてどれも同じ」そんな感覚の人はサイズの合わないドライバーを使って頭をナメてしまうかもしれない。いきなりビスを打つのが無理な場合は、一度抜いてキリで下穴を開けるだろう。スンナリいっても1~2分はかかる。腕力も必要な作業だ。

 

 自宅でビスを打つ機会は結構ある。「鞄やハンガーを吊るためのフックを付けたい」「棚を追加したい」そう思ったことはないだろうか。この程度なら手回しのドライバーで何とかなるが、本数が多いと大変になる。例えば組立式の雑貨や家具を作る場合がそうだ

 ビス止めで苦労するのは、ヒトの腕がドライバーを回すような動作を得意としない為だ。ここは「モーター」という回す動作が得意なものを使って補うのが合理的で、その威力は一度手にすれば実感できる。今まで苦労していた締付け作業が一瞬で終わる。組立式家具も、何の苦労もなくあっという間に完成するだろう。いい道具を手にすると、簡単にいろんなものが作れるようになってDIYが楽しくなる。

※ビスが固くてねじ込めない時は、固形石鹸をねじ山に塗って潤滑すると楽になる。最近はカムロックや樹脂製のインサート(鬼目ナット)の締結が主流になって組立が楽になったが、強度は著しく低下した。

 

電動工具の市場

 電動工具の市場は大きくプロ用とDIY向けに分かれていて、メーカーにより注力する市場が異なる。マキタはほとんどプロ用なのに対し、リョービとボッシュの日本市場はDIY向けに力を入れている。

 プロ用電動工具(プロ機)を作るメーカーは多くない。現場で酷使されるプロ用工具を作るメーカーは過去のトラブルの経験を活かして商品の改良を重ね、部品一つ一つの作りから材料に至るまで相当なノウハウの蓄積がある。振動衝撃に耐えるギリギリのところを見極めた設計がされており、経験の無いメーカーが同じ値段で同じ品質のものを作ることは無理だろう。きわめて参入障壁の高い市場といえる。
 プロ機を作るメーカーにはマキタ、日立、パナソニック、ボッシュなどがあり、値段や性能は横並びだ。この中でマキタが選ばれるのは、他社に比べサービス網が充実している為だろう。仕事に使う道具はトラブルの復旧が早いことも大切な要素で、手厚いサービス体制がマキタブランドに高い付加価値を与えているようだ。

 

 プロ機は酷使に耐える堅牢な作りと、一日中仕事に使える大容量の電池が付く特徴がある。実売4万円前後と高価だが、価格の2/3は電池と充電器。DIYの電池容量はプロ用の半分も要らないから、プロ用を選ぶと無駄に多い電池に高いお金を払うことになってしまう。プロ機とDIYが分かれているのは、使用時間が大きく違う事情によるものだろう。

 ホームセンターで見る電動工具のほとんどはDIY向け商品だ。電池容量と耐久性を落としてコストダウンし実売2万円未満のものが多い。耐久性を落としたといっても休日使う程度なら10年以上持つ。少数だがプロ機に小容量の電池を組み合わたDIY向け商品があり、実売2.6万円で買える。プロ機と同じ性能の工具を安く欲しい人にお勧めできる(後述)。

 

インパクトドライバーかドライバードリルか

 電動ドライバーは普通に回転するだけのドリルドライバーのほか、主に回転方向の打撃を追加したインパクトドライバーと、軸方向の打撃を追加した振動ドライバーがある。DIYで最も使う機会が多いのはインパクトドライバーになる。
 インパクトの登場で発生トルクが大幅に向上し、小さな電動工具1つで小ネジからクルマのホイールナットまで対応できるようになった。原理的にネジの頭をナメにくいのもうれしい。プロの建築現場でも、DIYでも、今後これが主流になっていくだろう。

 インパクト式にも欠点があり、正確なトルク管理は苦手だ。インパクトはトリガーの調整で小ネジを締められるが、デリケートなネジ締めはクラッチ付きのドライバードリルが必要になる。インパクトとクラッチ付きドリルの2本あると完璧だが、最初の1本は広い用途をカバーするインパクトをお勧めする。

 

充電式かACコード式か

 昔の充電式工具は使えるものではなかった。パワーが弱いうえ、すぐ電池が無くなった。時間が経つと放電してしまい、使う前に長い時間かけて充電しなければならなかった。電池の寿命も短かったから、利用頻度の少ないDIY用はACコード式が普通だった。
 リチウムイオン電池の登場でこの状況は変わった。自己放電がほとんどなく、容量が大きく、寿命が長い。この電池のおかげで持続時間が問題になるプロ用途でも、利用頻度の少ないDIYの用途でも問題なく運用できるようになった。インパクト機構の搭載でパワーも十分になり、現在はACコード式を選ぶ理由はほとんどなくなっている。

 

充電式を選ぶ場合の注意

 充電式は最初の1台を慎重に選ぶ必要がある。充電式は電池と充電器が付いてくるものが多い。新しい工具を買い足すたびに電池と充電器が増えていくのは無駄なので、同じ電池を幅広い機種で使い回しできて、それらの機種が本体のみでも買えることを確認することが重要だ。
 この点、電池とセット売りしかないDIY機は要注意だ。電池付DIY機1台分のお金でプロ機の本体だけが買えてしまうから、1台目は少々高くてもプロ機と電池が共通のものを買い、2台目以降はプロ機本体のみを買っていくと結果的に無駄なく良いものを揃えられる。
 DIY機も本体のみ買えると良いが、そんなラインナップをするメーカーは少ない。現在ボッシュがやっているが、ボッシュの本体売りは電池セットやプロ機本体と値段の差があまり無くメリットが薄い。

 

ブラシ式かブラシレスか

 最近ではブラシレスモータを搭載した機種があるが、DIY用途ではメリットがほとんどない。DIY機のほとんどが安価なブラシ式で消耗品となるカーボンブラシの寿命は150~200hr。短く見えるが毎月延べ1時間使ったとしても10年交換の必要がない計算になる。そのためDIY機はカーボンブラシの交換が出来ない設計のものが多い。

 とはいえブラシレス機を一度握るとその高質な使用感に魅了される。BMWのエンジン、切れ味の良い刃物を想起させる。過剰スペックに違いないがモノにこだわる人にとって魅力の高い道具だ。

 

電動ドライバーの例

リョービ FDD-1000 チャック10mm 6.4N・m

DSC01408a 写真は9年前に購入したドライバードリルのエントリーモデル。実売4千円で今も売られている。20段のクラッチ付きで目盛1の最小トルクは実測で0.85~0.90Nm。プラスチックタップ4mmの締付け[1]から通販で買った家具の組立まで幅広く使える。パワー不足は下穴加工でカバーできる。

 充電式を手に入れる前、私はほとんどこれ1台でネジ締めの用途を賄ってきた。気になる点は強いネジ締めで頭をナメやすい、そしてやっぱりACコードが邪魔臭いことだ。

 

 

 

これから買う人にお勧めの機種

 電動ドライバーは非常に種類が多く、調べるのも選ぶのも大変だ。数多くの機種から選び抜いた電動ドライバーを紹介する。

マキタ TD134DSHX 1.5Ah(リチウムイオン)

DSC01414a プロ用インパクトに小容量の電池を付けたモデル。実売2.6万円。我が家のメイン機。
 利用頻度の低い事業者やDIY市場をターゲットにした商品と見られる。本体は新型ではなく5年前の枯れた型。トルクが150Nmあるのでクルマのタイヤ交換や自転車の調整分解も対応できる。軽量コンパクトで狭い場所のビス打ちが容易。

 インパクトの強さを調整する機能はなく、トリガーの引き加減だけで力を調整する。無理するとねじの頭を飛ばすが、慣れればシンプルな操作が使いやすく感じるだろう。

 

 電池がプロ機と共通なので、最初にこれを買っておけば以後別の工具や後述する掃除機を安く買い揃えられる。ブラシ交換可能なのでDIY用途では一生モノだ。

※ホイールナットの規定トルクは105Nm(軽は90Nm)。緩めるのは問題ないが、安全にかかわる部分だけに締め付けの最後はトルクレンチが無難。

 

マキタ DF010D 5Nm 1.0Ah(リチウムイオン)

DSC01402a ペンタイプの電動ドライバードリル。21段のクラッチ機構で締め付けトルクを細かく管理でき、インパクトでダダダ・・とやるわけにいかない機器の組立てや圧着端子の取り付けで威力を発揮する。目盛1の最小トルクは実測0.5Nm。プラスチック用ネジは3mm[1]から使える。

 これと上述のインパクトの1セットあれば完璧。

 

 

マキタ 充電式クリーナー  CL142FDZW(25W)

DSC01406a ドライバーについてくる高性能電池を掃除機に活用しない手は無い。マキタのプロ機を買うとクリーナ単体が驚くほど安く買える。
 元々作業現場の清掃用だがその高性能とシンプルで落ち着いたデザインが評価され家庭用に買う人も多いようだ。耐久性も高く主婦の蛮用にも十分耐える。

 

 筐体は厚いプラスチックで出来ていて手に持つとプロ用工具のようなガッシリした手応えがある。表面がつや消しのため安っぽくない。ノズルを付けた状態の重心はMakita文字付近に来る。重心が取っ手に近いため取り回しが楽。

 強弱切り替え式のスイッチを入れると「強」からスタート。強でも騒音はさほど気にならない。電動工具に付属するバッテリ2個をローテーションしながら使う形になるので持続時間はほとんど問題にならない。
  ラインナップは豊富で紙パックとカプセル式があるが、清掃が1箇所で済む紙パック式がお勧め。オプションのフレキシブルホースがとても便利なのでついでに揃えたい。

 

日立工機 FWH14DGL 140Nm 1.3Ah(リチウムイオン)

 DIYをターゲットに徹底してコストを削りつつ、プロ機に近い性能を実現したモデル。実売1.5万円。上記のマキタより一回り大きく重い。電池はプロ機と互換がある(メーカー確認済み)。インパクト1台だけあればよいという人にお勧めできる。マキタ同様、付属電池がコードレスクリーナと共用できる。
 続けて日立を購入しようと考える人には勧められない。日立はDIY用工具本体の単品売りはないので、これを買うと2台目はプロ機にするか、DIY用にするかで迷う。他のプロ機やクリーナーと組み合わせるには電池容量が少ないし、DIY用を選べば電池と充電器が重複して無駄になる。個人的には彩度の高い色とスポーツ用品のようなデザインが気になる。

 

<参考購入先>
ソケットアダプター セット ソケットレンチを活用するための必需品。ホイール交換や自転車の整備に欠かせません

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<参考文献>
1.タッピンねじ・タップタイトの技術資料
2.マキタ
3.日立工機

 

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