アナログオシロが市場から消えて久しい。2000年頃まで岩通やA&Dなどが細々と作っていたが、2003年にはほぼ消滅した。現在はほとんどすべてがデジタルオシロ。そこに映し出される波形は、なんかおかしい。
折り返し雑音(エイリアシング)の問題
よく知られた問題の一つ。高調波ノイズが多く含まれる信号を表示させると折り返し雑音の影響で嘘の波形しか見えない。TMIEレンジによって見た目が違う。いったいどれが正しいのか。
こうなってしまうのは、帯域や速度を優先してアンチエイリアシングフィルターを省略したためではないか。本当の波形を観測するには、FFTアナライザのようにTIMEレンジに連動してアンチエイリアシングフィルターを入れなければならない。
アナログオシロではこういうことは起こらない。高い周波数の高調波は自然に減衰して薄くなる。TIMEレンジを速くすると、それに応じた周波数の波形が良く見える。
縦軸分解の問題
デジタルオシロは縦軸の分解能が低すぎる。大半のA/Dが、高速化を優先して8bit。するとどうなるか。
写真は、アナログのファンクションジェネレータで正弦波を出して、アナログオシロ(岩通DS-8608A)とデジタルオシロ(レクロイ社製100万円クラスの機種)で観察した様子。
アナログオシロ(左)は山の先端が小さく尖っているのがわかるだろうか。デジタルオシロ(右)ではそれが見えないし、波形もギザギザしている。
アナログオシロが映す波形は本物。生の信号をそのまま映し出すため、見ていて安心感がある。これに対し、デジタルオシロの波形は「作り物」に見える。アナログよりはるかに性能の良い超高性能オシロなのに、見せる波形はお粗末。
最近のデジタルオシロは長いメモリを搭載し、突発的な異常の発見が得意なことを強調している。しかし、アナログ波形の観察には向かないことがわかる。
デジタルオシロが主流になったのは、オシロで観測する対象が変わってきたせいかもしれない。CANバスに流れる波形や簡易なロジアナとして使われることが多くなり、低周波のアナログ波形を観察する機会がなくなってきた。
ロジアナ的な使い方では、電圧の分解能はあまり必要ない。なので、電圧の分解能は8bitで十分、ということなのだろう。
昔ながらのアナログオシロはもう生産していないが、まだアマゾンから入手できる。但し、純アナログのオシロは連続波形を見るだけでストレージや波形の測定ができない。岩通のDS-86シリーズはそんな欠点を解消した、アナログにデジタルを組み合わせたハイブリッドオシロ。今ではとても貴重な逸品だ。
最後に~計測器を選ぶとき最初に見るチェックポイント
計測器を選ぶときは、まず最初に電源ボタンと、後ろの電源プラグの作りをチェックしてほしい。そこにメーカの測定に対する考え方が反映される。
電源ボタンは大抵、押し込みになっていると思う。この押し込みのバネが硬く出来ていて、さらに両側にガードがついていれば合格。
電源プラグは3Pの差し込みが多いと思うが、差し込んだ後、抜け止めの金具やブラケットをかぶせる構造になっていないといけない。
抜け止めの付いた電源プラグ差し込み口の例
どんなに計測器の性能が高く、いい測定ができても、電源ボタンを間違って押されたり、後ろの線が抜けてしまったら終わり。こういう所まで作りが行き届いているということは、測定現場のことを良く解っている人が設計している証拠。
横河やHIOKIは昔からこの点不十分でありUIも使いやすいとはいえない。こういう商品が出てくるのは、測定現場を知らない人が、机上で設計しているためだろう。
<参考購入先>
アナログ式オシロスコープ まだ一定の需要があるのか、一部のメーカーが作っています
USBオシロ アマチュアに手が届くオシロです
岩通のDS-8608Aは中古のみ。FFTアナライザのHP35670Aと並ぶ、知る人ぞ知る名機です。