電気炊飯器のご飯がまずいのはなぜか~電気とガスの味の秘密を解明する

 「おいしいご飯が食べられることが幸せ」と思う人は多いと思う。世間では電子制御された炊飯器が多いが、ご飯にこだわる人は炊飯器選びにも熱が入るものである。ご飯の仕上がりは炊き方によって異なると言われ、これをおいしく炊ける順に並べれば、以下が定説のようだ。

 

1.かまど炊き>2.ガス炊飯>3.電気(IH)>4.電気(ヒータ)

 

 多くのメーカが「かまど炊き」をリファレンスにして炊飯器の開発をしているようだ。私は残念ながらかまど炊きの味を知らない。ガス炊飯器は子供の頃家にあったが、味についてはあまり記憶がない。外食などでご飯がおいしく感じるときは、業務用のガス炊飯器を使っていることが多かったように思う。

 

小細工せずに美味しいガス

 最近の電気炊飯器の主流は電磁誘導加熱(IH)であり、カタログをみると「おいしく炊くため」と称する様々な細工が宣伝文句になっている。

 「圧力」「真空」「多段IH」「銅釜」「土鍋」「遠赤外線」「ビタクラフト」「スチーム」「豪熱沸騰」・・・

 ガスコンロを使った炊飯では、こういう小細工は一切ない。しかし実際炊いてみると、「ふっくら」して「甘み」が多く「香り」「食感」が良い。電気釜では永遠にマネのできない品質に炊き上がる。この違いはどこにあるのだろうか。

 

電気炊飯とガス炊飯の違いを調べる

 まったく同じお米を使って同じように下準備(洗米&吸水)したとすると、ガスと電気では次の要素が違いとして残る。

 

  1. 炊飯プロセス
  2. 燃料の火力
  3. 釜の構造
  4. パッキン(シリコンゴム)の有無

 

 4は炊き上がりの香りに影響する項目で、一度水だけで炊いてみればわかる。パッキンの多い物はポットのお湯と同じ、「変な臭い」がする。
 1~3については実験を行い観察した。実験に使用した機器は次の通り。

 

  • 電気炊飯:IH圧力炊飯釜(サンヨー ECJ-EK10)
  • ガス炊飯:ガスコンロ(リンナイ ハオ4700GFT)の炊飯機能を利用

 

ガスコンロの炊飯プロセスを注意深く観察した結果は、次のようだった。

 

中火で加熱を開始→沸騰後極弱火→中火→極弱火→短時間強火→消火(蒸らし)

 

オマケ機能の割にはいろんなことをやっている。それぞれの時間は温度センサによって自動調整されるようだ。電気炊飯器の火加減は直接見えないが、知ろうと思えば可能だ。消費電力をモニタすればいいのである。ただ、炊飯プロセスは古来からのセオリーがあるから、これから大きく外れることはしていないと考えられる。

 

ガス炊飯を観察する

 ガスコンロのの炊飯機能を使って、来る日も来る日も0.5合炊いてみた。炊飯に使う鍋は、土鍋、アルミ鍋、フライパン、圧力鍋などいろいろ変えてみた。土鍋だけはセンサがうまく機能しないので、手動で火力を調整した。

 

 その結果、次のことがわかった。

 

  1. 火力は味に関係しない(土鍋の合炊飯では終始弱火だった)
  2. 0.5合でもおいしく炊くことが可能
  3. 釜の材料や構造はあまり関係しない
  4. 炊飯プロセスは少々アバウトでもOK

 

 どんな炊き方、鍋を使っても、ガスコンロで炊いたご飯は例外なく美味しかった。甘みがあり、ごはんがツヤツヤなのである。

 炊飯プロセスや鍋の差は、出来上がりの堅さや焦げに影響するだけで、本質的な味には変わりがなかった。炊き方が少々アバウトでも、水加減が多少変わっても、ガス特有の「うまさ」は変わらずそこにある。

 ガスと電気の違いに「火力」を挙げる人がいるが、ガスで大きな炎は使わなかった。土鍋では終始弱火以下の火力だった。

 

suihan2 suihan3

 写真は電気炊飯の釜とガスコンロを使って0.5合を200mlの水(標準値の2倍)で炊いた結果。ふたを開くとブワッと大量のスチームが立ち昇り、あとには立ちまくるご飯とカニ穴が見える。オネバ(デンプンの膜)が壁面にびっしり。電気炊飯では決して見ることのない光景。

 

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電気とガスの違いは意外なものだった

 ここまできて、ふと不可解なことに気付いた。ガス炊飯の水加減は説明書に従い計量していたが、その量がかなり多めなのだ。そこで、電気炊飯器で使う水がどの程度の量なのか調べてみた。

 まず、米びつから出てくるお米の量、ここが間違っていたら話にならない。1合のボタンを押して出てきたお米は、約180cc、146gであり、これは何度試しても誤差はほとんどなかった。世間で言われている1合=180cc、150gだから、なかなか精度がよい。

 次に、これを30秒ほど洗米して同じように測定してみた。お米は水を吸って、約220cc,161gとなり、15g(10wt%)の水を吸った計算になる。炊飯の水加減は、お米:水=1:1.2が標準と言われているから、1合炊く場合の水の量は、180×1.2=216cc となる。

 電気炊飯器に付属の釜を利用して確認したら、洗米後のお米に対して216cc入れたとき容積比水位が1合の目盛ちょうどになった。やはり、電気炊飯器は、お米:水=1:1.2で炊くようになっている。それに、釜の目盛も、そこそこ信用できることがわかった。念のため他のメーカーでもテストしたが、ナショナル、サンヨー、タイガー、象印は同じだった。

 実験結果をもとに、ガスと電気の水加減をグラフにプロットしてみた。ガスの方は、ハオ4700GFTの取説にある数値をそのまま使用した。

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 電機炊飯の切片は0だが、ガス炊飯の水加減は120mlの切片を持つことが判明した。少量炊くほど水が多く、標準値との乖離が大きい。これは何を意味するのか?

 

ガスではなぜ多めの水が必要なのか

 炊飯は加熱開始から沸騰までの時間がとても重要で、ここに「10分」という決まり事がある[1]。これより短いとご飯に芯が残り美味しく炊けない。ガスを使った少量炊飯では、火を絞ると失火してしまうのでこの10分を稼げない。そこで水を多めにすることで沸騰時間の辻褄を合わせているようだ。

 少量炊飯では他にも、

熱伝導率の悪い容器を使う、温度を下げる(冷蔵庫で冷やしておく)

などの工夫が併用される。

 ガス炊飯でも熱伝導率の悪い土鍋を組み合わせれば、終始弱火でなんとか炊けるというわけだ。この場合の土鍋は「仕方なく」使う道具であることに注意したい。

 

結論~ガスのうまさの秘密は水加減にあった

 ガス炊飯では炊飯量に関係なく120mlの水を余分に入れて炊く。どうやらこれが、ガスの味の秘密のようだ。

 多めの水で炊くことで生じるメリットは想像つく。デンプンがよく糊化すること、対流によるムラの低減だ。ガス炊飯器の「失火するから火力を絞れない」という欠点が、逆に良い結果をもたらしていたようだ。

 

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2005/9/1追記 現代のガス炊飯器で検証してみる

 上記の水加減によるうまさを検証するため、ガス炊飯器 RR-035VKT2(リンナイ、3合炊き)を購入してみた。

 炊飯器本体は円筒で小さく、IHの五合炊きと比べると奥行きが無いのでとてもコンパクトに見える。早速、0.5合を洗米して付属の釜で0.5合の水量を計ってみると、約200cc、1合の場合は300ccであり、以前ご紹介したガスの水加減とぴったり一致した。

 炊きあがりは、まさにガスの味。洗米の仕方や、お米の銘柄による味の違いも表れる。

 

suihan5 ガス炊飯器(リンナイこがまる RR-035VKT2)を使った炊きあがりの様子。カニ穴と呼ばれる穴が均一に見られ、お米も立って、素晴らしい炊きあがり。

 釜は単なるアルミ鋳造品、内底は平坦で何の変哲もない。吹きこぼれ防止の上蓋はペラペラのアルミ板で、加熱装置もない。

 このあたりで見られる電気炊飯器の小細工は、炊きあがりや味に何の関係もないことをこの炊飯器が示している。

 

 

 この炊飯器の水加減は、以前調査したリンナイ製ガスコンロの炊飯機能と同じ。同じメーカーだから同じということもありうる。そこで、ハーマンのガスコンロ(LW2239TC1DB ) も購入して、説明書を開いてみた。するとリンナイとほとんど同じ(ハーマンの方が約4%多め)だった。

 これにより、ガスはどの商品も標準(お米:水 = 1:1.2)より多めの水加減で炊いていることがわかっ

 

電気炊飯器でガスの味を再現してみる

 電気炊飯器で水加減を増やして炊いた結果がガスと同じ味になれば、水加減がガスの味の秘密であることを証明できる。

 ところが、これが実際にできない。普通に水加減を増やすとベチャベチャになるだけ。何とかしてセンサーを騙す必要がある。

 電気炊飯器は釜の底にセンサーが当たる作りになっている。「このセンサーを低め温度にできれば火力を増やせるのではないか」そう思ってセンサーと釜の間にいろいろな断熱材挟んでみたが結果はほとんど変わらなかった。

 どうやら、ここのセンサーだけ騙してもダメらしい。電気炊飯器はいろんなセンサー情報をもとにガチガチに制御されていて、ちょっとやそっとでは火力を変えられないようだ。

 あまり極端なことをすると炊飯器を壊す恐れがある。結局この実験は断念した。

 

 

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2017/8/27追記 電気炊飯には美味しく炊けない理由があった

 それは全くの偶然だった・・電気炊飯で炊いたご飯がまずい、真の理由をついに発見した。

 子供に食事の準備を任せたときだった。炊きあがり予約時間の30分前に炊飯器を空けしまい、配膳してしまったのだ。このご飯を食べてみて驚いた。お米の香りがふわっと漂う。いつもとまるで違う。美味しい。これは以前実験したガスの味にかなり近い。

 電気炊飯器の炊飯は、炊きあがり予約時間の30分前には大方完成している。その後は「蒸らし」と称する工程をやるが、どうやらその温度と時間に問題があるようだ。

 

 写真はTIGER JGO-G550-T。17:30の予約で炊いている炊飯器の蓋を30分前ににあけてみた様子。既に炊きあがっていて、オネバがお米を覆いツヤツヤ。お米のいい香りが漂う。

 ふたを閉め、17:30終了ブザーが鳴ってから蓋をあけると、いつもの香り、いつもの味。お米の香りなんかしない。ご飯がパサパサしていて微妙に臭い。明らかに「劣化」している。お米の銘柄の違いなどわかるはずもない。

 

 

 電気炊飯器は、炊きあがり予約時間の30分前には蒸気がほぼ出なくなる。そこから高温の長時間蒸らしが始まり、味と香りが台無しになったところで終了ブザーが鳴る仕組み。

 一般的な炊飯シーケンスは水が無くなったら火を止めて5分蒸らすことになっている[1]。電気ではここが保温30分になっている。この不適切な蒸らしと保温の工程が、電気炊飯器を不味くしている本当の理由に違いない。

 実はこれ、電気に限らず全自動ガス炊飯器(上記のリンナイこがまる)でも同じことが起こりうる。電子ジャーは余計な機能。これを殺して使わないと、せっかくのガスの味が台無しになる可能性がある。

 

手動で電源を切るベストなタイミングを探る

 何回も試した結果、炊きあがり予約時間の30分前に[取消]ボタンを押して電気を切り、そのまま5分〜10分蒸らして配膳する形がベストだった。10分以上過ぎると香りが悪くなりNG。

 30分前という時間は炊飯器によって違うかもしれない。蒸らしに移って良い正確なサインは、「蒸気」の有無。すなわち、蒸気がほとんど出なくなったら電気を切る。これは手動で炊く場合と同じこと。

 蒸らしが終わったら、すぐ食べる食べないに関係なく、ご飯をよくほぐす。ここまでやっておけば、いつまでもおいしく食べられる状態になる。

 内釜の性能は蒸らしの工程に表れる。冷めやすい窯は10分もすると冷えてしまう。ゆっくり温度を下げながら水分をお米に戻すことで、美味しいごはんができると考えられる。

(2018/8追記)
 炊飯器のメニューに速く炊ける「早焚き」モードがある。TIGERのそれは吸水と蒸らしを省略したもの。このモードを使って吸水と蒸らしを自分でやることで、理想に近い炊き上がりが得られる(但し、炊く米の量にもよる)。予約時間が間に合わないとき、活用していきたい。

 

<参考購入先>
2万円以下のIH炊飯器 このあたりから選べば十分。味になんの寄与もしないシカケにお金を出す必要はありません

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