Pepper と無料クラウドサービスの落とし穴

 最近、無料で個人データを預かってくれるクラウドストレージサービスが増えてきた。「あなたの大切なデータを保管します」「どこからでもアクセスできます」などのうたい文句で利用を促している。

 Googleは写真データについて無料&無制限のサービスを展開している。なぜ無料なのか。なぜ無制限なのか。これにはれっきとしたウラがある。

 

利用規約の罠

 クラウドサービスには利用規約あり、サービスを利用するとこれらすべてを承諾したこととみなされる。小さい文字でゴチャゴチャ書いてあるので、開いても読み飛ばしてしまうかもしれない。いろいろ書いてあるが、大事な点だけ取り上げる。ほとんどのクラウドサービスで次のような文章を見る。

 

お客様のデータはサービス向上のために利用させていただくことがあります。もちろんプライバシーポリシーは守ります。

 

  「サービス」とは具体的に何だろう。範囲が広すぎてわからない。中には次のことを想起する人がいるかもしれない。

 

お客様のデータは、お客様によりマッチした広告を届けるためのデータとして利用させていただきます。もちろんプライバシーは守ります。

 

 商品をクリックすると「あなたにお勧め」とかいって関連する商品が現れるアレだ。しかし、画像や文字(文章)のデータはそれ以外に重要な用途がある。それは、人工知能の学習(機械学習)に利用されることだ。つまり1は次のように翻訳できる

 

お客様のデータは、人工知能の学習データとして利用し、当社の事業の発展と利益追求のために活用させていただきます。もちろんプライバシーは守ります。

 

 現代ではデータさえ食わせればどこまでも賢くなれる人工知能が実用化されている。将来、人工知能を使ったサービスは広告だけでなく、ありとあらゆるところ活用され社会に普及するだろう。

 ソフトバンクのPepperやiPhoneのSiriは、今のところオモチャのような代物だが、クラウドの膨大なデータを活用して次第に賢くなるのは間違いない。

 プライバシーのことをしきりに問題ないと強調するのは、それを見るのが人間でないため。元々プライバシーは心配する必要のないことだが、データをくれというとプライバシーのことを気にする人が多いから書かれているのだろう。

 最初の規約文章からこれを想定できる人はどのくらいいるだろうか。「サービス向上」という表現だと何でもアリなものに同意したことになってしまう。こういう曖昧なものにはガイドラインが求められる。

 

 

喉から出が出るほど欲しい個人データ

 人工知能を使ったサービスはIT企業にとってきわめて重要な取り組みだ。将来この業界で主導権を握るためには、どこよりも賢い人工知能を作る必要があり、そのためにはとにかく沢山の学習データが必要になる。

 個人向けのサービスを展開するためには、個人データを使って学習させるのが一番だから、どのIT企業も、あなたが保有している画像や文字のデータは喉から手が出るほど欲し情報だ。

 普通、個人のデータは頼んでもらえるようなものではい。そこで「便利に使えますよ」といって無料の「器」を用意した。この器にデータを放り込めば、企業はそれを使って人工知能を学習させ、これまでない優れたサービスを提供できる(金儲けに活用できる)というわけである。

 つまり最初の「サービス向上のために利用」というのは、「人工知能を使った新たなサービスの提供に使う」という意味を含んでいる。「良いことではないか」と思うかもしれないが、後述するようにメリットばかりとは限らない。

 

 

ソフトバンクのPepperは盗撮端末か

 PepperはGoogle Glassが失敗した個人の情報収集に成功するだろうか。

 私はPepperを見かけるといい気分がしない。Pepperに姿を晒せば、写真や声を録られているような気がするためだ。そのためPepperがいる店の入り口や受付には近寄り難い抵抗を感じる。

 同じ画像を録る監視カメラとPepperとで何が違うのか、どこが問題なのか。

 Pepperは見たものや聞いたものをクラウドサーバーに送信する仕組みを持っている。そして、取得したデータを次のように利用すると説明事項に書かれている[1]

Pepperが収集したお客様のデータは当社および関連会社の製品及びサービス改良を目的に永続的に使用する(多少略)」

これは「自分たちの利益を永続的に追求するために個人情報を収集します」と解釈できる。ちなみにデータ収集は個人を特定しない形で行われるのでプライバシーの問題はないとしている。これはクラウドドライブと同じだ。

 

 いずれにしても、ロボット1体送り込んでしまえば、クラウドドライブよりはるかに多くの個人情報を効率的に収集することができる。Pepperが具体的にどんな形でデータを送信しているのかわからないのでは、怪しくて近寄ることができない。少なくとも上記の注意事項は

Pepperが収集したお客様のデータは、Pepperの改良のためだけに使用し、他の目的には流用しません

とでも書き直されない限り、導入は考えられない商品だ。

 

 

将来あなたは失業する?

 人工知能がもたらす人間を超える精度のサービスによって、産業構造が再編される可能性が高い。しかもそれは遠くない将来に起こる。将来職を失う人も大勢出るだろう。就職も、結婚も、人の生死も、機械が判定する日がいずれやってくるだろう。

 お勤めの業界は大丈夫だろうか。Googleやマイクロソフト、ソフトバンクらが展開してくるサービスによって、将来あなたの勤め先が無くなってしまうかもしれない。

 Googleはずいぶん前からいろんな無料サービスを提供して、沢山の個人データを吸い上げている。人工知能の研究は相当進んでいるだろう。将来Googleは世界中のありとあらゆるサービスで主導権を握るかもしれない。

 

 

結局私たちはどうすべきか

 私たちにできる防衛策は、むやみにデータを与えないこと。データを食わせなければ、そこの人工知能は成長しない。

 人工知能に利用されやすい画像データをクラウドに保存する場合は、無料容量が大きく、暗号化キーがクライアント側で管理できるサービスが良い。このストレージは運営側でも勝手に見たり、利用できないので安心かもしれない(このようなサービスの一つにMEGAがある[2])。

 

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<参考文献>
1.ソフトバンク Pepper 規約・重要事項 https://www.softbank.jp/robot/consumer/legal/
2.MEGA https://mega.nz/