有線LANの速度が出ない 遅い問題をFTAで深堀りする 意外な原因とは CAT8は買うな!ってホント?

LAN接続が100Mに落ちた様子

1Gbpsで繋がっていたはずの有線LANがいつの間にか100Mbpsに落ちている・・線を刺しなおすと回復するが、時間が経つと100M。今回はこの厄介な問題の原因を究明する。

 

装置の構成

我が家は新築の際、屋内に有線LANを設置した。パナソニックのまとめてネットギガが中心にあり、各部屋のマルチメディアコンセントに繋がる。接続ケーブルでPCへ。問題は、ある一部屋のPCで起きている。

パナソニックのマルチメディアコンセント

問題が起きているマルチメディアコンセント

 

調査

最初に思いつくのがケーブルの交換。やってみたが改善しない。

速度が落ちる原因をネットで調べる。ケーブルの劣化かもね、ドライバーを更新したら?などとある。自動ネゴをやめて速度固定にする話もあるが、原因不明のまま固定しても接続が切れるだけ。

PCは買ったばかりの新品だし、多分無罪。すると、残るは屋内配線ケーブルの断線。考えにくいことだが、これを調べようと思ったら専用テスターが必要。そこで、こんなものを買ってみた。

LANのテストツール

ネットワークテスターNF-8209。数ある中華製の一つでモノはオモチャみたいだが、いろいろな機能が付いている。取説は全部英語だったので、日本語に訳したものを用意した。自由にDLして使ってください。

NF8209日本語マニュアル

問題の調査で使うのは、マニュアル項目1の導通テストと、5の詳細テスト。これを見ていく。まずは導通テスト。問題ない模様。

ケーブルの断線を調べている様子

詳細テストではオートネゴの結果が出る。コンセントからちゃんと1Gで繋がる。配線をPCに戻すと100M。

LANの接続を調べている様子

なにコレ?どういうこと?? わからなくなってしまった。

 

問題の切り分け

この問題は意外と複雑で、「思いつきで試行錯誤」では改善しないことがある。そこでFTA分析(Fault Tree Analysis)した。

まずは、第一階層(設定がおかしいのか、ケーブルなのか、挿すところなのか)を切り分けないといけない。これは単純に、「交換してみる」のが手っ取り早いが、注意がいる。

ケーブルの劣化と言ってもいろいろある。例えば図の中の赤のルートは時間が過ぎて接触不良になるら、手元にある古いケーブルと交換しても直らないことがある。「直らないから関係ないね」としてケーブルの要因を切り捨ててしまうと、解決にたどり着けない。

ケーブルを挿した状態で、コネクタを押したり引いたりひねるなどして接続が切れる(PC側のランプが消える)場合はケーブルか、挿すところ(コンセント側)を交換しないとけない。写真はLANコンセント(ぐっとすNR3160W)を調べた様子。

ぐっとす不良品

なんかおかしい。左から2番目と、3番目のピンが凹んでいる。下は新しく取り寄せた新品。

ぐっとす新品

だいたい水平に並んでいる。これと交換したが、結果はNG。

屋内配線まとめてネットギガに挿さっているコネクタを調べた様子。ここは家を建てたときに電気屋さんが工事した手作業の部分。

コネクターの様子

コンタクトが盛り上がっていて真ん中が微妙に高い。コンタクトブレードが最後まで押し込まれていないように見える。

圧着工具を買ってカシメなおしてみる。買ったのは、安い中華製ではなくエレコム製LD-KKDR。ラチェット式で最後まで握れたかどうか、解りやすい。

LAN端子をカシメ直している様子

握ると「グスッ!」という。 え?グスッ? 少し握りシロが余っていた。結果は・・NG。FTAではOR結合(AとBどちらがNGでもNG)なので、これが要因だったかも知れないことに注意。まだ他に要因がある。

最初にケーブル交換を試しているが、どれも新築のときに買った古いもの。アマゾンから新品を取り寄せてみた。結果は・・OK!!!

 

不良品を観察する

エレコムとアマゾンベーシック

左は不良品(エレコム)、右はアマゾンベーシック(新品)。コンタクトブレードの溝の深さに注目。不良品の溝は浅く、ブレードが浮いたように見える。この場合、圧着しなおせば復旧するはずだが、そうはならなかった。他にも要因がある。

エレコムのケーブル端子

不良品(エレコム)の拡大。上の面が微妙に凹んでいるように見える。経時変化か、元々なのかわからないが、寸法精度が悪い。このような端子は接触が安定しない。

なお、ブレード浮きの再圧着に使える工具は限られている。サンワサプライLAN-TL8 でできることを確認済み。

 

まとめ

今回の原因は、結局

①ケーブルの劣化(コンタクトブレードとケーブルの接触不良)
②電気屋さんの手抜き工事(まとめてネットギガ側のコネクタ圧着不良)

だった模様。ちなみに問題のケーブルは、8年前に購入したエレコムの商品だった。交換しても改善しなかったのは、もっと古いものだった為。ケーブルの劣化が疑われる場合は、手元にあるテキトーなケーブルではなく、新品が必要だ、というのが今回の教訓。

「思いつきで試行錯誤」したせいで、ネットワークテスターという余計なものを買ってしまった。圧着工具は無駄にならなかった。ケーブルの劣化はコネクタの劣化がほとんどなので、コネクタだけ付け替えて復活できる。

LANケーブルに付いてくるコネクタの品質はマチマチ。ケーブルを買うときは電線(CAT6eだの8だの)ではなく、コネクタの品質を重視したい。

 

CAT7、CAT8は買うな?

 CAT7以上はシールドのせいでノイズが乗って遅くなる、と称する記事をみかけるが、それは数ある要因の一つに過ぎないことに注意したい。上記のFTAに追記するとすれば、第一階層。

 問題が起きたとき、わかりやすい特徴の違いを見て「そのせいだ」と短絡的に考えないよう注意したい。コネクタの形やコンタクトの浮きなど、考えられる要因を一通り調べることが大切だ。

 

<参考購入先>
Cat6の新品ケーブル
ネットワークテスターNF-8209
サンワサプライLAN-TL8 市販ケーブルのブレード浮きを修正できる工具です
サンワサプライ RJ-45コネクタ
外皮むき工具 LAN-TL15
エレコム LD-RJ45T 切り口が外に出ないタイプのコネクタです