オーディオ用インシュレーターには金属やウッドなどの硬いものと、弾性体で出来たゴム系の2種類があり、両者は使い方と効果がまったく異なる。本記事はゴム系インシュレーターの正しい使い方をご紹介する。
振動絶縁(防振)の理屈
ゴム系のインシュレーターは振動絶縁を目的に使う。その効果は、一般的な防振動理論で説明できる。オーディオ機器の下にインシュレーターを敷いた場合の共振周波数fc(Hz)は、
fc = SQR( k/m )/(2π) (1)
で表される。SQRは平方根を取る関数、kはインシュレーターのばね定数(N/m)、mは機器の質量(kg)である。インシュレーターのばね定数は不明だが、機器を乗せたときのたわみから実測できる。
インシュレーターをfcで使ったときの周波数fにおける振動伝達率τ(%)は、次の式で計算できる。
τ = 100・|1/(1-(f/fc)2)| (2)
結局、振動伝達率τを低くする(防振効果を高める)ためには、出来るだけやわらかいインシュレーターを使う、もしくは機器を重くすることが有効。
ややこしい計算をしなくても、感覚で効果を知る方法がある。インシュレーターを敷いた状態で、機器に触れると水平にフラフラ動く場合は、防振が良く効いている。ほとんど動かない場合は、防振が機能していない。
いろいろなゴム系インシュレーター。能書きは無視して、「ばね定数」に注目して選ぶことが重要。
基本的に上下方向(潰れ)のばね定数が小さく、上下方向と水平方向(せん断)のばね定数が近いものほど優秀。
ばね定数は面積と厚みで調節できる。機器の重さによって調節できるよう、切って使えるものが便利。
薄いゴムや、金属など別の素材に薄いゴムを貼ったものはゴム系インシュレーターとは言わない。そのゴムの役割は、すべり止めと、ガタつきを無くしているだけである。
用途別の使い方
プレーヤーのインシュレーター
振動に敏感なアナログプレーヤーはでゴム系のインシュレーターが使われる。高い防振性能を得るため(低いばね定数を実現するため)に、スプリングや空気ばねが併用されることが多い。
CDプレーヤーも振動に敏感なことに変わりない。こちらはピックアップメカが内部で防振支持されており、通常はこれで十分なことが多い。本体の下にゴム系のインシュレータを敷けば防振効果を高めることが出来るが、音に寄与しないことがほとんど。
CDプレーヤーの下に金属やウッド系のインシュレータを敷いた場合は、単に見た目を変えただけになる(外観チューンという)。
アンプのインシュレーター
インシュレーターを使う意味が最も低く、単に見た目を変えただけになる。納得できない人は、音を出しながらアンプを叩いたり、揺すってみるといい。
アンプの中には、「トランス」という震動源がある。この振動が外に伝わって拡大するのを防ぐため、トランスに防音対策が施されている。
プロ用アンプやローコストな製品ではこれが不十分で、ラックなどを振動させて音が出る場合がある。このような場合にのみ、ゴム系インシュレーターが有効になる。
スピーカーのインシュレーター
スピーカーの下にゴム系インシュレーターを敷くと、床に伝わる振動を低減できる。階下に迷惑をかけている場合などに有効だ。ゴムを敷くとスピーカー本体がふらつくが、そのふらつきが大きいほど、高い防振効果を発揮する。
この場合音への影響がある。スピーカーの底面が宙に浮くため箱がよく響くようになる。これに関する詳細は関連記事1を参考にして欲しい。ふらつきに関しては音に関係しない。
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