フィットは純正ツイータを追加してイコライジングチューンするだけで十分なクオリティのサウンドを実現できる。今回はこれについて詳しく説明する。
純正オーディオの構成
オーディオはナビ装着用スペシャルパッケージ+純正ソフトドームツイータ+パナソニックストラーダ CN-S300D。
ナビ装着用スペシャルパッケージを付けるとリアに2SP追加されるがスピーカーはおそらくノーマルと同じ。
左は純正ソフトドームツイーター(GS-3930T)。コンデンサー1つでドアスピーカーとパラに接続される。デザインはフィットのインテリアにベストマッチする。
ソフトドームは分割振動で高域を出すため過渡応答はホーンやハードに劣るが指向性が広く癖が出にくい特徴がある。
純正スピーカーと配線の様子
スピーカーは最初から付いてくるものをそのまま使う。純正品はシンプルなシングルコーン。フレームは樹脂製で、コネクタの上に水よけが付く。問題は特に見当たらず、これより明らかに良いといえる社外品は少ない。
磁気回路が小さいので制動が弱い(Qが高い)。純正の音がこもった様な音色なのはそのせいだが、低音を抑える方向でチューニングできる点で都合良い。締まりはないが、バスレフの共鳴で出すよりはマシ。
ドアパネルを外したところ。サービスホールには樹脂製の蓋が付いている。特に問題は見当たらない。制振はあきらかにビビる場合以外は必要ない。吸音材は水を含む欠点があるので最初は入れないで様子を見る。
ドアスピーカーは時々音が出なくなったり、音量が小さくなることがある。原因はガラスに付いた水滴が窓の開閉によってドアの内側に入り、湿気の多い状態が続くことで磁気ギャップやコネクタの電気接点が錆びてしまうこと。窓の開閉が多い運転席側が真っ先にダメになりやすい。
純正ソフトドームツイーターとの分岐コネクタ。防水カバーがあるが、ケーブルを出す部分に隙間がある。ここから水が入り、接触不良の原因になることがある。
ビニールテープが巻いてあったが、粘着がベトベトになってテープがズレていた。写真は不乾性パテ(ネオシールB-3)と養生テープで防水強化したところ。
コネクタの電気接点はすべてRational003(コンタクトオイル)を塗布。これで廃車になるまで良いコンディションを期待できる。
イコライジングチューンしてみる
今回はオール純正の構成でイコライジングチューンを試みる。聴感だけの試行錯誤で満足いく結果を得るの困難なので、測定しながら調整する。測定方法には次がある。
1.チャープ信号を再生し、WaveSpectraで観察する。
2.ピンクノイズを再生し、WaveSpectraでFFT分析&保存し、エクセルでオクターブ分析する。
1はクルマの室内でリアルタイム測定が可能だが、WaveSpectraの結果が細かすぎて調整が難しい。WaveSpectraの代わりにリアルタイムオクターブ分析可能なDSSF3(有償ソフト)を使うと良いが、一般ユーザーには敷居が高い。
2はICレコーダーと当サイトで公開しているエクセルのオクターブ計算マクロ(後述)を使うことで実施できる。イコライジングチューンはまず2の方法で特性がフラットになる結果を求め、その後いろんな音楽ソースを聞きながら最終微調整を行う。
いろいろな音の測定機器。ICレコーダーが手軽で便利に使える。この場合、無指向性マイクが本体にフラットに埋め込まれた形のものがよい。
その点、ソニーの製品がおすすめできる。写真の機種は一番左の測定用マイクロフォンと比較して測定に使えることを検証済み。
筒状のマイク2本が出っ張った形の機種(右から2番目)や、指向性マイクが付いた製品は測定に向かない。
調整結果と音質の評価
最終的な調整結果。イコライジングでは高域と低域を押さえこむ、通常とは逆の形になっている点に注目。低音をブーストしないで出せるため大音量でも歪みにくく、バスレフポートの共鳴ではない為質も良い。
調整は左右SPの中央ではなく運転席の耳位置で行う。イコライザーの調整幅は±8dB(実測)だった。
運転席の周波数特性。意外に低い音が出ていてサブウーファーは不要。山谷が多いいのはガラス反射波との干渉とみられるが、聴感上のバランスは良好。狭い空間の室内音響は難しい。
イコライジングの幅とバンドはもう少し欲しいが、7バンド±8dBでもここまで出来る。
地を這う低音は出ないが、ほとんどのミュージックソースで不足を感じない。フラットで質感が高く、上品でさえある。この音を社外品に替えて出すのは難しいだろう。
<参考購入先>
ソニーICD-UX マイクロフォンの特性がフラットで測定に向くお勧めのICレコーダー。LPCM WAV形式で録音可能
Rational003 電気接点用コンタクトオイル
サイバーナビ AVアンプのような測定マイクを使った自動音場調整ができる商品です
測定用マイク 測定に使えるマイクロフォン
ファンタム電源 測定用マイクにはこの電源が要ります
不乾性パテ(ネオシールB-3) 端子部分の防水保護に使える不乾性パテです
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参考:測定方法の詳細
WaveSpectraはオーバーラップの機能がないため音源データとの組み合わせで相性問題が起こる。次の設定は多くのテストから導き出した設定。
音源、録音形式
44.1kHz 16bit WAV形式で統一する。WaveGeneで作る音源のレベルは-3dBとする。
チャープはWaveGeneのサイトからユーザー波形サンプルをダウンロードし、そこに含まれるFLATSWEEP_004096.WAVをユーザー波形に登録して使う。
FFT分析設定(WaveSpectra)
サンプルデータ数8192、窓関数はFlattopとする。Avg60以上で平均を取る。チャープの場合はPeakの方が精度が高い。
測定の流れ
(1)テスト音源を作成する
WaveGeneでチャープまたはピンクノイズ作成しWAVデータを保存する。時間は30秒くらいでよい。
(2)WAVデータをカーステレオで再生可能なメディア移す(USBメモリ、CDなど)
ライティングソフトで音楽CDを作成する。MP3(256kbps)に変換するとUSBから再生できて便利だが、16kHz以上がカットされるので評価の際に注意する。
(3)測定対象機でテスト音源を再生しICレコーダで録音する
録音形式はLPCM 44.1kHz WAV形式、LowCut=OFFとする。
(4)WaveSpectraで録音したデータを再生分析し、オーバーレイの波形を保存してWSO形式のファイルを得る。
(5)オクターブ計算マクロでWSOファイルを読み込んで計算する
(6)「振幅補正」タブで結果を見る
必要に応じて低域特性を補正する。
<ダウンロード>
オクターブ計算マクロ