シャープの1ビットデジタルでヘッドホンを駆動したらどんな音が出るのだろう・・1ビットデジタルで再生できるシャープのポータブルMDレコーダーと、4極接続できるゼンハイザーHD650を使ってこれを実際にやってみた。
機器構成
CDプレーヤ(光デジタル出力)→MDレコーダー(シャープMD-DR77)→HD650ケーブル(4極改造品)→HD650本体
シャープのMDレコーダー(MD-DR77)はデジタルアンプを内蔵した数少ないポータブルオーディオ。ヘッドホン端子が4極になっている。シャープから4極のヘッドホンが発売されているが、音質的にあまり良いものがない。そこで、音質に定評あるHD600を使う。
HD600のケーブルはLRのプラスマイナスが独立しているので、先端を4極プラグに改造すればこれと接続可能。これで入り口から出口まで全部デジタルになる。
MDレコーダは過去のMD-DR7やIM-DR80も利用できる。
音楽を聴くときはダミーのMDを入れておいてレコーダをREC待機にしておく。ちょっと特殊だが、これでフルデジタル駆動が実現できる。
試聴結果
HD650で聴く1ビットデジタルの音は素晴らしい。これほど澄み切った音場感は、これまでに聴いたことがない。
我が家にはアキュフェーズの高級プリやマッキントッシュがある。これらのヘッドホン端子から出てくる音とは、一聴して「クオリティ」が違う。
入口から出口まで、一切アナログ要素が介在しないデジタルアンプは、素晴らしいリアリティ、解像感、音場感を提供してくれる。「忠実再生」の視点からみると、これ以上のものは無いかもしれない。
このデジタルサウンドを聴くためには、4極のヘッドフォンが必要になる。
本機はこれまであまり評価されてこなかったが、その理由に4極ヘッドホンにいいものが無かった事情がありそうだ。HD650を繋いでみて、ようやくその真価が見えたように思う。
問題点
MDレコーダのヘッドホン出力がもともと8mWしかないためHD650で十分な音量が取れない。これはHD650のインピーダンスが高い(300Ωある)ことが関係している。
例えばポップス、ニューミュージック系なら問題ないが、一般に録音レベルが低いクラッシック系のソースの多くはダメだ。
ヘッドホンで1ビットデジタルのサウンドを楽しもうと思ったら、2006年現在はポータブルMDを流用しなければならない。こんな特殊なことをしなくて済むヘッドホン専用のデジタルアンプが欲しい※。
※:2018年現在は、いくつかの商品があります。
ソニー S-Master HX
フルデジタル ヘッドホンアンプ
4極プラグへの改造方法(参考)
ゼンハイザー純正のケーブルを剥くと色の付いた電線が出てくる。この接続対応は次の通り。
1:L+=緑
2:R+=赤
3:L-=無色(緑と対の方)
4:R-=無色(赤と対の方)
この電線はハンダの熱で絶縁が溶ける仕組み。ハンダ付けしたら、カバーをかぶせて樹脂モールドしてしまえば完成。ウデに自信がある方はチャレンジしてみてほしい。
付属のケーブルを4極プラグに改造する場合、標準プラグ側から20cmくらいのところで切り、短い方に4極ジャックをつけて3極変換ケーブルにすると従来との互換が保てる。
下の写真は実際にこの作業をしたところ。電極が非常に小さく意外に難しい。ケーブルが太いのでプラグやジャックのケースにも若干の追加工が必要になる。
<参考購入先>
ゼンハイザー HD650
ゼンハイザーHD650用交換ケーブル 現在は4極バランスケーブルが市販されています
4極プラグ
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