ネット通販のタイヤが安い。ネットで買ってショップに持ち込むと工賃が高くなるが、結果的に得なのか損なのか。「ハンドルが振動するようになった」これは交換後よくあるトラブルだ。ショップを見分けるポイントとネットでタイヤを買う場合の注意点をご紹介する。
新車装着タイヤの問題
写真はそろそろ5年になるフィットの新車装着タイヤ(ミシュラン ENERGY SAVER)。新車装着タイヤは市販品に比べ品質が低いように感じたことが何度かある。
4年すぎるとひび割れが目立ちはじめ、異音が出たこともある[1]。市販タイヤでこのような経験はない。
このことからすると、新車タイヤは、劣化防止剤などの添加物を減らしたコストダウン品の可能性がある。
何度かクルマを買った経験からすると、新車装着タイヤは5年もたない。タイヤ交換が発生するが、そこで問題になるのは、タイヤ交換をどこでするか。まずは、これまで私が経験したトラブルをご紹介したい。
タイヤ交換で経験したトラブル
以下は、私が過去経験したトラブル。
走行中ホイールナットが脱落
カー用品店で交換したら、走行中にホイールナットが脱落したことがある。ここはナット締め付けのトルク管理などしておらず、エアーインパクトで「ダダダダ・・」で終わりだった(オートバックス某店)。
タイヤを替えたらハンドルが振動
時速110キロちょうどでハンドルが左右に振動する・・・この種の問題はタイヤ交換した後で最も良く経験する。通常はバランスの再修正で収まるが、こちらは再確認のため時間とガソリンが無駄になる。こういう二度手間はお互い避けたいものだ。
再バランスをお願いしたら、「制限速度を超えて走るんですか」と開き直るショップもあった(タイヤガーデン某店)。
社外ホイールにしたらハンドルが振動
社外ホイール(RAYS SPADA)を付けた時、再バランスでは振動が改善せず、ハブリングを入れて収まった。原因はセンターの出ないホイールをそのまま取り付けていたことだった(タイヤガーデン某店)。
ブレーキを踏むとガタガタいう
ブレーキフィールを改善するためショップが選んだ社外品に替えたら止まり際にガタガタいう。点検の機会にディーラーで外して見て驚いた。パットの裏に突起があり、そこを支点にシーソーのような動きをしてガタガタしていたのだ。この原因は、クルマと互換の無い商品を無理やり取り付けたことだった(コックピット某店)。
専門店は、カー用品店と何が違うのか。思い浮かぶのは、タイヤに関するより詳しい知識と技術、施工品質ではないかと思う。しかし私の経験では、専門店でもやってはいけない作業をやり、本来付かないものを付けてしまう。
長年同じ仕事を続けていると、初心を忘れ、手抜きをし始め、クレームが来ないのをいいことに不正が常態化する。これはクルマに限らず、建築など他の業界でも見られる問題のようだ[2]。
良いショップを見分けるチェックポイント
お客様の信頼を裏切らない、期待を満足させる良心的なショップを見分けるにはどうしたらよいのか。私が導き出した答えは、次だ。
(1) ナットの締め付けにトルクレンチを使っている
ホイールナットの締め付けトルクは強すぎても弱すぎてもダメ。適正値に管理した締め付けが必要なところだ。テキトーに手締めしたり、インパクトで「ダダダ・・」は論外。トルクレンチを使って、きちんと規定トルクで締めてくれるショップを選ぼう。
(2) バランス修正をまじめにやる
バランス修正が不十分だと、特定の速度でハンドルが左右に振動することが多い。バランス修正はフロントとリア、両方について丁寧にとる必要がある。リアを手抜きするショップがあるので、必ず確認しておきたい。リアを手抜きされるとローテーションしたとき振動が問題になりやすい。
タイヤ交換したら出来るだけ早く、高速走行でハンドルが振動しないか、チェックをお勧めする。
バランス修正では設備(修正機)が重要になるが、私が調べた範囲では、専門店が所有する設備と、カー用品店が持つ設備には、大差ないようだった。カー用品店では、10g以下はゼロとみなして終わりにしてしまう場合が多い。そのため修正ウエイトも最小10gしか持たないところが多い。通常これで十分だが、5gまで追い込むショップならさらに安心だ。
(3) 社外ホイールは必ずハブリングとセットで売る
いくらバランスを精密にとっても、ハブに装着したときセンターが出ていないと意味がない。純正ホイールはハブとセンターがぴったり合うよう作られているが、社外ホイールは要注意だ。テーパーナットだけではセンターが出ない場合がある。社外ホイールをハブリングなしにポン付するショップでホイールを買うのは避けた方がよいだろう。
ハブリングを付けると確実にセンターが合うが、ハブリングが固着して取れなくなる場合がある。この場合、純正ホイールに戻せない。このようなリスクを嫌う人は、社外ホイールは考えない方が良い。
注:社外品でも特定車種専用ホイール(ディーラーオプションなど)の場合は、こういう問題は起こらないと考えられます。
(4) 空気圧をどうするか聞いてくる
タイヤの特性は空気圧で大きく左右される。通常規定値で問題ないので「普通で」と答えればよい。軽量ホイールを買うと、その効果を錯覚させるため空気圧を高めにするショップがあるので注意したい。
タイヤを替えると窒素ガスの充填を勧められることがある。窒素の方が良いのはわかるが、体感できるメリットがあるかといえば疑問だ。これは商売のネタを業者が増やしただけ、迷わず辞退しよう。
タイヤを安く買う方法
最近はアマゾンなどネットでタイヤを買えるようになり、取付だけショップにお願いする人が増えた。この場合問題になのが持ち込みタイヤの工賃。調査の結果次のようだった。
4本分の工賃(脱着+バランス+バルブ+処分費。税込)
1~1.2万円(1サイズによって異なる場合あり)
工賃はカー用品店 ディーラー、タイヤ専門店で異なり、カー用品店が最も安かった。通販では商品の不良交換なので脱着が発生する場合がある。この場合の工賃は、0.9万円前後(脱着+バランスのみ)になる。
ショップで買う場合に比べると工賃が高いが、元々工賃の一部はタイヤ代金に含まれているというから、持ち込み料金(迷惑料)を取られるわけではない。問題はタイヤの価格と合計して高いか安いかだけである。
アマゾンで売られているブリヂストンのレグノGR-XI (2017/4)。驚異的な価格だ(送料別700 円)。
取付けは提携のカー用品店、ディーラーでやってもらえる。現在、オートバックス、宇佐美、出光など7社がアマゾンと提携した取り付けサービスを展開している。
取り付け工賃が気になる人はタイヤ交換チケットを検討してほしい。
通販で買ったタイヤは取り付けする店舗に直送できるが、できればまず自分の手元に送ってもらって製造年月日と外観のチェックをお勧めしたい。問題があればこの時点で交換リクエストを出せる。
(2017/4/1追記)
レグノGR-XI 175/65R15を買った場合の金額を比較してみた。
アマゾン通販 タイヤ4万円+工賃1.2万円=5.2万円
タイヤ館 タイヤ5.4万円+工賃0.8万円=6.2万円
割高な工賃を考慮しても通販の方が1万円お得。万一返品交換が起きても2度目の工賃は上記のように0.9万円程度なので、損にはならない。
通販は安心か
安く売られているタイヤには何か事情がある場合がある。取付後に判明した不具合、たとえばクルマが勝手に左右どちらかに流れる「コニシティ」などの問題が起きた場合、再脱着の工賃までアマゾンは保障しない。
しかしレグノのようにタイヤの単価が高い場合、装着後に返品交換(再脱着費用)が発生してもなお、損にはならないようだ。
アライメント修正は有効か
タイヤ専門店でアライメント修正を勧められることがある。
20年以上前の話。雪道で滑ってタイヤを縁石にぶつけ、アライメントが狂ったことがある。ハンドルセンターが狂い、低μ路で簡単にスピンするようになった。購入したディーラー(マツダ)に持ち込んだら営業が近所を運転して「こんなもんじゃないの?」だった。
そこで当時、まだ高価だった4輪アライメントテスターを持つ専門店に調整に出したことがある。私は元のように走れるようになれば十分だったが、効果は予想以上だった。中速から実感できるステアリングの安定感、センターからの滑らかな操舵感・・・新車のときよりいい。まるでクルマのグレードが1ランクも2ランクもアップしたように感じられた。
その後、違う車で修正してみて、修正効果はクルマによって異なり、違いを体感できない場合もあることがわかってきた。僅か数ミリ、数度の修正でも、違いが出る場合は出る。工賃1万円程度なら、やってみてソンはないサービスだ。
タイヤ専門店のメリットは何か
先に書いた通り、消費者がこれらショップに期待するのはタイヤに関するより詳しい知識と技術、施工品質ではないかと思う。しかしこの点、カー用品も追いついてきている。そこで先日、近所のタイヤ館に行ってこういう質問をしてみた。
「カー用品店ではなく、お宅でタイヤを買うメリットは何ですか」
すると、「センターフィット」と「お値打ちなアライメント修正」を挙げてきた。どちらも専門店に足を向かせるセールスポイントとしては弱い。サイトを見ても、「笑顔でお出迎え」「グリーンパスを作ります」「安心のアフターサービス」とか書いてある。一度タイヤ買ったら、タイヤについて販売店の助けが必要な用事は当面なくなるのが普通だ。アフターサービスといってもピンとこない。
カー用品店ではなく、専門店でタイヤを買うメリットは何か?ほとんどの消費者にとって、タイヤはできるだけ安く上げたい消耗品に過ぎない。ネットで安くタイヤを買われてしまう今、ここをしっかり考えたうえでサービスを展開しないと、タイヤ専門店の経営は厳しいかもしれない。
<参考購入先>
アマゾンのタイヤ 問題があれば返品や交換できるので安心です
タイヤ交換チケット
ホイール インチダウンの場合は慎重に
ハブリング 社外ホイールで必須のパーツです
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