試乗日:2020/3/15
車種: トヨタ ヤリス (6AA, 5BA)
ボディ・内装
ヤリスの赤はマツダの深みのある赤とは違い、ソリッドの赤に白を少し混ぜた色。
外観は近年のトヨタ車に見られたアニメロボットとは違って、国際的に通用する精悍なスタイル。内装もマツダに近いクオリティを得ていて最下位のXグレードでもチープな感じがしない。内装のデザインはどこかマツダ2に似ている。
停車時のステアリングが異様に軽く「すえ切り」しやすい配慮がされている。走り出せば問題なく不自然さもない。
アクセルフィールもヴィッツの時代と違って急にスロットルを空けるような不自然さがない。ブレーキフィールもこのクラスの普通で、ハイブリッドの回生ブレーキも違和感ないレベルに仕上がっている。
シートも良くできており、長距離ドライブで問題なさそう。
空調の騒音はやや大きめであり、最下位のXグレードは最大風量の時、気になるレベルにある。
ドルフィンアンテナのせいでFMラジオの入りが悪い。これはアンテナの特性であり諦めるしかなさそう。あとUSBオーディオはUSBメモリとの相性によってうまく再生できないケースがある。
下のグラフでグレーの線が「思い通りに走れる」基準。ヤリスの1.5Lは徹底した軽量化により、スポーツカーになりうるポジションを得ている。グラフの1.5Lの位置は、ロードスターと同等。
1.0LのXも結構いい位置。この位置ならアクセルオンでスロットルをガバッと開ける小細工をしなくても普通に走る。同時期に発売されたFIT BASICはこれらより100kg近くも上にある。
下のグラフはハイブリッドの動力性能を比較したもの。横軸はモータのトルクを排気量に換算した「目安」。ヤリスはアクアと同じ重さなので、同等以上の燃費が期待できる。4WDのE-Fourはグレーの線からの距離が同じなので、走りに関しては同じくらいと予想される。
同時期に発売されたフィットは圧倒的に大きなモーターを搭載しておりヤリスより力強い加速感が期待できるが、実際は燃費を重視した加速感だった[1]。
ヤリスの1.5Lには6MTが用意されている。ギア間隔は綺麗な等間隔であり問題ない。
走り
エンジンを回すと3気筒固有の音がするが、バランサーの設計が優れているためか振動は気にならない。音だけが3気筒。
1.0Lと1.5Lの加速感は同等。1.0Lは回転数を高めに、1.5Lは静粛性を重視して低めにして、加速感を揃えた模様。
1.0Lは2,500回転を超えたあたりで急に3千回転まであがる。この付近でアクセル一定にすると回転数が上ったり下がったりして安定しない。少し気になるが、走りがギクシャクすることは無い、音だけの問題。
タイヤの扁平率はグレードによって違うが55~70の範囲にある。60だと不整地で少しゴツゴツした感触があるが、問題ないレベル。
ハイブリッドの走りはスーッとフラットに前に出る感覚がある。ガソリン車と違って低回転からたっぷりトルクがある。この乗り味は高級車に近い。
総合
車にとって重さが一番重要なスペックであることを印象付ける。同時期にフィットが発売されているが、基本性能の部分で最初から勝負にならない。今回は難しい軽量化に注力して結果を出したトヨタの勝ち。
その副次効果で珍しいことが起きている。スポーツカーと呼べるクルマを1台も持たないトヨタから「まっとうな」スポーツカーが出てきた。現時点でヤリスMTのポジションにはロードスターしかない。ロードスターは2シーター。ヤリスMTは4人乗れるスポーツカーの有力候補になる。
しかし、売れそうもないMTをあえて出すのはどういう意図だろう。マイナーチェンジで消えてしまう可能性があり、この機会を逃がすと買えなくなるかもしれない。
ターボ付きのGRヤリスがある。車重が重くなっているうえ、公道では明らかに過剰スペック。値段も問題。動力性能はノーマルの1.5Lの方がバランスよく、軽い分、楽しさもこちらの方が上とみている。スポーツカーが好きな人には、こちらをお勧めしたい。
1.5Lガソリン車とハイブリッドの損益分岐点は走行8万キロ。8万キロ以上走る人はハイブリッドも候補に入れるといい※。
※:ハイブリッドGとガソリン1.5LGの価格差37.4万円。ハイブリッド燃費20km/L、ガソリン車燃費12km/L、ガソリン価格140円/Lと仮定した場合。
<参考購入先>
ヤリスのすべて
<関連記事>
1.試乗レポート~フィットハイブリッド(2020/3/31)燃費でトヨタに勝つのは無理!?
試乗レポート~トヨタ ヴィッツ(DBA-KSP40 1L CVT)~あのフラットな乗り味はどこに行ってしまったのか (2006/1/29)