時間が経つと不味くなるのはなぜ? 電気炊飯器の寿命と美味しく炊く秘訣

 それは全くの偶然だった。電気炊飯が不味いと言われる真の原因をついに発見した。そしてその改善策を考案した。この方法はすべての炊飯器で適用できる。味の不満で買い替える前にぜひ試してほしい。

 

炊飯の方法と美味しさの関係

 「おいしいご飯が食べられることが幸せ」ご飯にこだわる人は炊飯器選びにも熱が入る。ご飯の仕上がりは炊き方によって異なる。おいしく炊ける順に並べると、次が定説のようだ。

1.かまど炊き>2.ガス炊飯>3.電気(IH)>4.電気(ヒータ)

 多くのメーカが「かまど炊き」をリファレンスに炊飯器の開発をしているという。使う窯や加熱方法によって「炊きムラ」が出ることがあるが、これを除くと基本的には、同じお米、水加減、工程で炊いたご飯の味に、違いはない。

 

圧力、真空、土鍋・・すべて関係ない

 最近の電気炊飯器の主流は電磁誘導加熱(IH)であり、カタログをみると「おいしく炊くため」と称する様々な細工が宣伝文句になっている。

 「圧力」「真空」「多段IH」「銅釜」「土鍋」「遠赤外線」「ビタクラフト」「スチーム」「豪熱沸騰」・・・

 普通の鍋とガスコンロを使った手動炊飯[1]では、「ふっくら」して「甘み」が多く「香り」「食感」が良い。このことから、これら売り文句は、炊き上がりや味に何も関係無いことがわかる。

 

電気炊飯が不味い本当の原因は何か(2017/8/27追記)

 それは全くの偶然だった。

 子供に食事の準備を任せたときだった。炊きあがり予約時間の30分前に炊飯器を空けしまい、配膳してしまったのだ。このご飯を食べてみて驚いた。お米の香りがふわっと漂う。いつもとまるで違う。美味しい。これは以前実験したガスの味(後述)にそっくり。

 電気炊飯器の炊飯は、炊きあがり予約時間の30分前には大方完成している。その後は「蒸らし」と称する工程をやるが、どうやらそこに問題があるようだ。

TIGER JGO-G550-T 炊き上がり時刻の30分前に蓋を開けてみた様子 写真はTIGER JGO-G550-T(2016年9月購入)。17:30の予約で炊いている炊飯器の蓋を30分前ににあけてみた様子。既に炊きあがっていて、オネバがお米を覆いツヤツヤ。お米のいい香りが漂う

 ふたを閉め、17:30終了ブザーが鳴ってから蓋をあけると、いつもの香り、いつもの味。ご飯がパサパサしていて臭い。明らかに「劣化」している。お米の銘柄の違いなどわかるはずもない。

 

 

 電気炊飯器は、炊きあがり予約時間の30分前には蒸気がほぼ出なくなる。そこから高温の長時間蒸らしが始まり、味と香りが台無しになったところで終了ブザーが鳴る仕組み。

 一般的な炊飯シーケンスは水が無くなったら火を止めて5分蒸らすことになっているが[1]、そこが上手くできていない。買った当初はうまく機能していたはずだが?いずれにせよ、今はこの不適切な蒸らしと保温の工程が、電気炊飯器を不味くしている。

 

蒸気を見て手動で電源を切る

 本来の正しいシーケンスは、蓋から立ち昇る「蒸気」を見て、ほぼなくなった時点で火を切り、蒸らしに入ること[1]。電気炊飯器をでも同じように、蒸気がほとんど出なくなったら電気を切る。これだけで、見違えるように美味しくなる。

 

 今までいくつも炊飯器を使ってきたが、どれも買った当初は全自動で美味しく炊けたように思う。なぜ味が落ちてしまうのか。その理由を次に説明する。

 

最初は美味しかったのになぜ?(2012/12/12追記)

古い炊飯器を買い替えると「美味しい!」と感じる。ところが数年経つと味が落ちて「そろそろ買い替えようか」となる。これは推測だが、時間が経つと味が落ちるプログラムが仕組まれている可能性がある。

例えば、水が無くなってからの加熱を長くする。これを数年かけて、気づかないよう少しずつやる。すると、ご飯に酸化臭が付いて不味くなる。新しい炊飯器に買い換えるとこれがリセットされるから「美味しい!」となる。

上述した蒸気切れを見て電源を切る手動炊飯では、この仕組みが無効。6年過ぎた今も、同じ炊飯器を使って極上の炊き上がりを実現している。

 

 


 

参考:ガスの味の正体を解明する

 ガスコンロ(リンナイ ハオ4700GFT)の炊飯機能について炊飯を行い、「ガスの味」を調べてみた。まず、ガスコンロの炊飯プロセスを注意深く観察した結果、次のようだった。

中火で加熱を開始→沸騰後極弱火→中火→極弱火→短時間強火→消火(蒸らし)

オマケ機能の割にはいろんなことをやっているが、基本的には昔からあるセオリーに沿っている模様[1]

 

ガスコンロの炊飯を観察する

 ガスコンロのの炊飯機能を使って、来る日も来る日も0.5合炊いてみた。炊飯に使う鍋は、土鍋、アルミ鍋、フライパン、圧力鍋などいろいろ変えてみた。土鍋だけはセンサがうまく機能しないので、手動で火力を調整した。その結果、次のことがわかった。

  1. 火力は味に関係しない(土鍋では終始弱火)
  2. 0.5合でもおいしく炊くことが可能
  3. 釜の材料や構造はあまり関係しない
  4. 炊飯プロセスは少々アバウトでもOK

 どんな鍋を使っても、ガスコンロで炊いたご飯は例外なく美味しい。甘みがあり、ごはんがツヤツヤ。

 炊飯プロセスや鍋の差は、出来上がりの堅さや焦げに影響するだけで、本質的な味には変わりがなかった。炊き方が少々アバウトでも、水加減が多少変わっても、ガス特有の「うまさ」は変わらずそこにある。

 ガスと電気の違いに「火力」を挙げる人がいるが、ガスで大きな炎は使わなかった。土鍋では終始弱火以下の火力だった。

 

電気炊飯の釜とガスコンロを使って炊飯している様子 電気炊飯の釜とガスコンロを使ってお米0.5合を炊飯した結果

 写真は電気炊飯の釜とガスコンロを使って0.5合を200mlの水(標準値の2倍)で炊いた結果。ふたを開くとブワッと大量のスチームが立ち昇り、あとには立ちまくるご飯とカニ穴が見える。オネバ(デンプンの膜)が壁面にびっしり。電気炊飯では決して見ることのない光景。

 

電気とガスの違いは意外なものだった

 ここまできて、ふと不可解なことに気付いた。ガス炊飯の水加減は説明書に従い計量していたが、その量がかなり多めなのだ。そこで、電気炊飯器で使う水がどの程度の量なのか調べてみた。

 まず、米びつから出てくるお米の量、ここが間違っていたら話にならない。1合のボタンを押して出てきたお米は、約180cc、146gであり、これは何度試しても誤差はほとんどなかった。世間で言われている1合=180cc、150gだから、なかなか精度がよい。

 次に、これを30秒ほど洗米して同じように測定してみた。お米は水を吸って、約220cc,161gとなり、15g(10wt%)の水を吸った計算になる。炊飯の水加減は、お米:水=1:1.2が標準と言われているから、1合炊く場合の水の量は、180×1.2=216cc となる。

 電気炊飯器に付属の釜を利用して確認したら、洗米後のお米に対して216cc入れたとき容積比水位が1合の目盛ちょうどになった。やはり、電気炊飯器は、お米:水=1:1.2で炊くようになっている。それに、釜の目盛も、そこそこ信用できることがわかった。念のため他のメーカーでもテストしたが、ナショナル、サンヨー、タイガー、象印は同じだった。

 実験結果をもとに、ガスと電気の水加減をグラフにプロットしてみた。ガスの方は、ハオ4700GFTの取説にある数値をそのまま使用した。

ガスと電気炊飯器の水加減の違いを示したグラフ

 

 電機炊飯の切片は0だが、ガス炊飯の水加減は120mlの切片を持つことが判明した。少量炊くほど水が多く、標準値との乖離が大きい。これはなぜか。

 

ガスの水加減はなぜ多いのか

 炊飯は加熱開始から沸騰までの時間がとても重要で、ここに「10分」という決まり事がある[1]。これより短いとご飯に芯が残り美味しく炊けない。ガスを使った少量炊飯では、火を絞ると失火してしまうのでこの10分を稼げない。そこで水を多めにすることで沸騰時間の辻褄を合わせているようだ。

 少量炊飯では他にも、

熱伝導率の悪い容器を使う、温度を下げる(冷蔵庫で冷やしておく)

などの工夫が併用される。これらの目的は「時間稼ぎ」。

 ガス炊飯でも熱伝導率の悪い土鍋を組み合わせれば、終始弱火でなんとか炊けるというわけだ。この場合の土鍋は「仕方なく」使う道具であることに注意したい。

 

結論~ガスの味の正体

 ガス炊飯では水を余分に入れて炊く。これがガスの味に関係している。水が多いことで考えられる違いはデンプンの糊化で、これがガスの味の正体と考えられる。「失火するから火力を絞れない」という欠点が、ガスの味を生み出していた。

 

電気炊飯器でガスの味を再現してみる

 電気炊飯器で水加減を増やして炊けばガスの味になるはず。これを実験で確かめようと思ったができない。普通に水加減を増やすとベチャベチャになるだけ。何とかしてセンサーを騙す必要がある。

 電気炊飯器は釜の底にセンサーが当たる作りになっている。「このセンサーを低め温度にできれば火力を増やせるのではないか」そう思ってセンサーと釜の間にいろいろな断熱材挟んでみたが結果はほとんど変わらなかった。

 どうやら、ここのセンサーだけ騙してもダメらしい。電気炊飯器はいろんなセンサー情報をもとにガチガチに制御されていて、ちょっとやそっとでは火力を変えられないようだ。あまり極端なことをすると炊飯器を壊す恐れがあるので、この実験は断念した。

 

ガス炊飯器はどうなのか(2005/9/1追記)

 ガス炊飯器 RR-035VKT2(リンナイ、3合炊き)を購入して調べてみた。

 炊飯器本体は円筒で小さく、IHの五合炊きと比べると奥行きが無いのでとてもコンパクトに見える。早速、0.5合を洗米して付属の釜で0.5合の水量を計ってみると、約200cc、1合の場合は300ccであり、以前ご紹介したガスの水加減とぴったり一致した。炊きあがりは、ガスの味そのもの。

 

ガス炊飯器(リンナイこがまる RR-035VKT2)を使った炊きあがりの様子

 ガス炊飯器(リンナイこがまる RR-035VKT2)を使った炊きあがりの様子。カニ穴と呼ばれる穴が均一に見られ、お米も立って、素晴らしい炊きあがり。

 釜は単なるアルミ鋳造品、内底は平坦で何の変哲もない。吹きこぼれ防止の上蓋はペラペラのアルミ板で、加熱装置もない。このあたりで見られる電気炊飯器の小細工は、炊きあがりや味に何の関係もないことをこの炊飯器が示している。

 この炊飯器の水加減は、以前調査したリンナイ製ガスコンロの炊飯機能と同じ。同じメーカーだから同じということもありうる。そこで、ハーマンのガスコンロ(LW2239TC1DB ) も購入して、説明書を開いてみた。するとリンナイとほとんど同じ(ハーマンの方が約4%多め)だった。

 これにより、ガスはどの商品も標準(お米:水 = 1:1.2)より多めの水加減で炊いていることが確認できた。

 

 

<参考購入先>
2万円以下のIH炊飯器 このあたりから選べば十分。味になんの寄与もしないシカケにお金を出す必要はありません
リンナイのガス炊飯器 ユニークなガス炊飯器。専用ガスコードを忘れずに。
ガスコード

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