コーヒーでパッキンが茶色くなるのはなぜか~後悔しない水筒の選び方

 コーヒーを水筒に入れるとすぐにパッキンが傷む。このことは意外に知られていない。私は毎日、ハリオV30で淹れたコーヒーを水筒に入れて持ち運んでいる。するとどうなるか。次の写真を見てほしい。

 

コーヒーに使ってきた水筒のパッキンをその新品と並べてみたところ 左は毎日コーヒーを入れ続けた水筒のパッキン(サーモスFESシールパッキン)。右は新品。同じパッキンには見えないほど色が変わっている。

 右も使い始めればすぐに茶色くなり、同時にいやな匂いが染みついて取れなくなる。

 

 「この茶色は、単にコーヒーで汚れただけ」。多くの消費者がそう思い、そこで終わっている。この茶色を綺麗にしようと、漂白を試みた人がいるかもしれないが、まったく落ちなかったと思う。

 

コーヒーで色づいたパッキンの切断面の拡大 コーヒーで色づいたパッキンの断面。茶色いものが素材に深く浸透している。漂白しても綺麗にならないのはこのため。

 それと、コーヒーが触れていない部分に比べ、触れていた部分が膨らんでいる(矢印の部分)。いったいこれはどういうことか?

 

 

 コーヒーは他の豆類同様「油分」を含んでいる。一方、水筒のパッキンに広く使われる「シリコン」は、油分をよく吸う材質がある。つまり、パッキンについた色の正体はコーヒーの油分であり、膨らみは油分を吸って「膨潤」した結果だ(染み込んだ油の量だけ体積が増えて膨らむ現象)。
 シリコンパッキンにコーヒーが触れると油分を吸い込んで膨らんでいく。膨らんでしまうとパッキンの効果が低下し漏れの原因になりやすい。

 

 このような問題が起こらない、油分に強いパッキンがある。ニトリルゴム(NBR)だ。コーヒーに油分を吸いやすいシリコンパッキンの組み合わせは明らかに間違っている。ここはNBRを使うのが正しい。食品衛生法にも適合する。

 NBRをパッキンに使った水筒がないか・・・そう思って探してみたが、見つからない。

 残念ながらこの問題は長年放置されたまま。メーカーも改善に取り組んでいない。そこで、いくつかのメーカーに、「NBRのパッキンを作ってほしい」と要望を出しておいた。そのうちNBRのパッキンを使った、コーヒー専用の新商品が登場するかもしれない。

 

 

水筒の構造

 「水筒を地面に落としてしまった」これは普通にあることで、走行中の自転車から落とす場合もある。水筒はこれに十分耐える構造でなければならない。
 
 水筒で壊れる部分はほとんどが「栓」。ステンレスの水筒本体は落として凹むことはあっても壊れることはない。もし破断したら製造不良である。

いろいろな水筒

 我が家の水筒。外装塗装は使ううちに剥げてしまうが、これは仕方のないこと。中央のサーモスFESは元々黒かったが今やほとんど剥げている。

 外装は無地の塗装か、最初なら塗装なしのものがよい。

 

 

サーモスFESの飲み口 サーモスFESの飲み口。近年は運動中に素早く水分補給できるよう、パイプ形の飲み口が付いた開閉式の栓が普及している。

 このタイプの栓はキャップのクローズが中途半端になったり、ロックを忘れるなどして漏れ事故が起こりうる(私はこれでクルマのシートにコーヒーをこぼしてしまったことがある)。

 

 

飲み口がカップ形になっている中栓の例

 中栓の出口がカップ形のものは、しずくが残って漏れやすい。このタイプは1滴でも漏れると周囲を汚す困るコーヒーの容器に適さない。

 コーヒー用の水筒は栓を完全に取る必要がある「ねじ込式」がよい。ねじ込式でも横に溝があって少し緩めると出るタイプは溝に残ったしずくが漏れてしまう。

 

 

ストラップの取り付け場所が異なる水筒の例

 ストラップは本体側の脱着式ではなく、カバー側に付いている形のが手入れしやすい。

 

 

タイガーのサハラ タイガーのサハラ。上で書いてきたコーヒー用水筒に求められる構造を満たす。唯一の欠点はパッキンだけ。

 栓の裏側に窪みがあり、写真のようにひっくり返して置いても栓に付いたしずくが外に垂れない。良くできている。

 サハラの内面は鏡面加工されていて汚れがつきにくい。軽くて汚れにくいという、新しい付加価値を提供している。

 

 

 

 

保温性能は「栓」で決まる

 水筒の瓶は内部を真空にした「魔法瓶」と呼ばれる構造が一般的。瓶の保温性脳は構造的にみて横並びで大差ない。保温性能のボトルネックは瓶ではなく栓にあり、栓の構造がポイントになる。

 サハラの栓が厚くできていることからわかるように、ねじ込み式は栓の断熱がしやすい。これに対し、開閉式の栓は十分な断熱ができない。プラスチック1枚隔てて熱は逃げ放題になっている。

 本体(魔法瓶)がガラスで出来ているものは氷を入れるとき割ってしまうことがある。ここはステンレス製を選ぶのが正しい。

※:私は子供のころ、買ったばかりの水筒に氷を入れようとして内側のガラスを割ってしまい、親に迷惑をかけた苦い思い出がある。

 

消耗品の入手性がいいか

 パッキンや栓、ストラップなど本体以外の部分は消耗品。水筒を買う場合はこれら消耗品の入手性を必ずチェックしておきたい。
 水筒を選ぶ際も、お父さん用、息子用、娘用・・など別々にせず買わず同じ商品で統一すると消耗品の管理が楽になる。

 サーモスやタイガーはネット通販で本体以外のほとんど全ての部品が入手できるので安心して買える。アマゾンで見る中国輸入品の多くはパッキンで寿命が決まる使い捨て消耗品なので注意したい。

 

<参考購入先>
タイガーの水筒
サーモス
スタンレーの水筒 頑丈で評判の水筒。重いのが欠点
タイガーの消耗品
サーモスの消耗品

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