本物のぬか漬けを食べたくなって、その製造にチャレンジした。レシピを検索すると沢山ヒットするが、Wikiか人の記事をコピーして書かれたものがほとんど。そこで、当館で取り組んだ結果をご紹介したい。
ぬか漬けとはなにか
塩分によってほどよく脱水され、乳酸菌によって適当に分解された生野菜。独特の香りが食欲をそそり、生きた乳酸菌が腸にいいとされる。
スーパーに売っているぬか漬けは何か
スーパーの漬物コーナーにある「ぬか漬け」は、生野菜に味を付けて米ぬかをまぶしただけ。食べてみるとぬか漬けとは程遠い味。たくあんや梅干しも似たような状況[1]。
ぬか漬けは微生物が関係していて、その分解速度が速い(味の変化が激しい)ことから、スーパーの流通に向かない。本物を食べたかったら、漬物専門店に行くか、自宅で作るしかない。
ぬか漬けの材料
米ぬか、または煎りぬかと塩があればいい。米ぬかにはいろんな虫や微生物がいるが、気にしなくて良い。当初がどのようなものでも、環境に適したものが生き残り、それ以外は消滅する。これは生ごみ処理[2]と同じ。
我が家で使っているいりぬか。アマゾンで安く購入した。ぬかの最小量は1kg/1人。基本的に多いほど、ぬか床が安定しやすい。「足しぬか」の分も合わせて最低2キロは用意しておきたい。
混合比(重量比)は、とりあえず
水:ぬか:塩=5:5:1(夏場)
水:ぬか:塩=10:10:1(冬場)
としておく。塩分濃度は分解速度とのバランスで決まるもので、温度が一定しない家庭での最適値は季節によって違う。
例えば、冬は分解速度が遅いため、塩分を少なくして長く漬けることになるから、夏と同じ塩分で作ると塩辛くなる。すると「塩抜き」という余計な工程が必要になる。食べごろに分解したとき、ちょうどよい塩分濃度で仕上がるのが理想。ここはまだ検証不十分であり今後改定していく。
ぬか床の作り方
上記の材料を混ぜるだけ。塩水をいちいち沸騰させる必要はない。乳酸菌を繁殖させるために、5日(冬場は10日以上)は、屑野菜をいれながら毎日混ぜる。
ぬかに塩を分散させて、水を少しずつ足しながら混ぜていけばOK。
容器の選び方
ぬか漬けの課題に水分管理がある。野菜から出る水分でぬか床がベシャベシャになったり、酸っぱくなってしまう。これがぬか床を破綻させる大きな原因の一つ。
そこで、容器は底に2~3mmの穴を5~8カ所くらいあけたものをトレイに乗せて使う。これは余剰水分を抜くため。
トレイにキッチンペーパーを置いて、その上に乗せる。余分な水分が自然に外に出て蒸発する仕組み。これで最も難しい水分管理の課題を解決できる。
写真は2.5mmのキリを使って穴を空けている様子。
底から水分を抜かない方法では、水抜き のような道具を使うか、キッチンペーパーなどで吸い取る必要があって面倒になる。
調子が悪いときぬか床を休ませる必要がある。毎日切れ目なく漬物が食べたい人は、この容器を2台作って、2台体制で運用することをお勧めする(後述)。
漬物容器は、角の部分までしっかり混ぜるために、角ばったものではなく、丸いものが適している。
漬け方
最大厚さ10mm以内になるようカットした野菜の塊を、ぬか床に埋設する。ニンジンやダイコンなどの皮はあらかじめ除去する必要がある。
塩もみすると色が抜けにくいという話もあるが確認できていない。面倒なことをやる必要はない。
厚みが薄い白菜などは、バラけた状態で埋設し早めに取り出す。漬かる時間が早いので注意したい。時々様子を見る必要がある。
漬け時間は季節(温度)やぬか床の状態、野菜の種類によって違う。なす、キュウリ、白菜などは数時間~24時間以内。ダイコン、ニンジンは12~36時間程度。漬けたまま忘れないよう注意。
漬け終わったら取り出してパックに入れ、冷蔵庫で保存する。味を固定したい場合は、ぬかをよく洗い流してキッチンペーパーを敷き、その上に置く。これによって現状を長く維持できる。ぬか床に入れっぱなしにしないこと。
完成したぬか漬け。独特の香りが子供たちには不評だった。
管理運用
最初の1カ月は野菜を入れすぎないよう注意。
野菜を取り出すとき、必ず混ぜる。これは野菜から出た水分が野菜の付近に多く溜まっているため。
混ぜたら表面を平らに整形しておく。これは空気の当たる面積を減らすため。空気が当たる表面に好気性の細菌(カビなど)が増えるので、時々かき混ぜて奥に練り込む。
容器の内側を綺麗にするよう言われているのも同じ理由だが、実際は乾燥してしまうのでカビにくい(様子を見て問題なければやらなくてよい)。
塩分濃度が低いと空気が触れる表面が黒っぽくなりやすい。これはカビなどの菌類。そこで毎日かき混ぜる必要がある。かき混ぜるのが面倒な人はクッキングシートか、サランラップをぬかの表面にぴったり貼りつけてシールしておくとよい。一晩で黒っぽくなる場合は塩分が足りない。
運用しているとぬか床が減っていくので足す必要がある(足しぬかという)。混合比は上記レシピでいいが、ぬか床の水気に応じて水の量を少なく調整する。
夏場の管理
菌の活動は温度によって加速度的に高まるので、気温が上がる夏場の管理は難しい。もうダメと感じたらぬか床の一部をジップロックに密封し、冷蔵庫などで保存して秋になったら再開する。
トラブルの対処
味はぬか床の熟成に伴い変わっていく。最初の1カ月は味が安定しない。調子に乗って野菜をどんどん入れていると、酸っぱくなったり味がおかしくなることが多い。
味がおかしくなった場合、数週間放置すると改善するのでリセットしないよう注意。ただ放置する間、漬物の生産がストップしてしまう。2台体制で交互に運用すると、一方の調子が悪いとき生産を止めずにぬか床を休めることができる。
表面のカビは、ぬか床の奥に沈めてしまえば消滅するが、味を損なう原因になるのでカビが生えやすい場合は上記のように表面をシールする。
ぬか床の添加物
トウガラシや昆布などを入れると、味が良くなるという話があるが、検証したものを見ない。そこで実験した。
結果、トウガラシ以外は、味に大きな変化は見られなかった。ぬか床に何か入れても分解消滅するのであまり意味がない。昆布やダシ粉などは、漬け上がったものにまぶすのがよい。
<参考購入先>
いりぬか
水抜き 底に穴のない容器を使ったとき必要
<関連記事>
1.ロクな漬物がないではないか~薬臭いたくあんを手作りの味にする方法
2.生ごみ処理の実験と結果~家庭の生ごみ処理はなぜ普及しないのか
<参考文献>
糠漬け-Wikipedia