ピンコードで理想的な接続ができるか

 市販のピンコードを見渡すと、音質に関係しない導体の純度やシースの構造ばかり注目されていて、一番肝心な「コンタクトの仕上げ」や「はめあい精度」のことについて、ほとんど意識されていない。

 高額なケーブルほど、電線が堅くて曲げにくく無意味に重く出来ている。そのせいで端子に真っ直ぐ差さらず、まともな接続ができないばかりか、ケーブルの重みで機器に有害なストレスをかける。ひどい物は、仕上げがいい加減でバリがあったり「はめあい」がきつい為、差し込むと端子にキズを付けたり、端子のメッキを削ってしまうものもある。

 RCA形式(ピンプラグ、ピンジャック)の接続自体、理想にほど遠いのだから、この形で良好な接触を追求するのも限界があるが、民生用オーディオ機器の信号ラインの接続はピンコードが主流であり、これで追求して行くしかない。いずれにせよ、RCA接続では、ケーブルにお金をかける価値はない。

 高級機ではバランス伝送用にキャノン端子の付いているものがあるが、こちらの方が信頼性が高く、お勧めである。しかし、民生用のキャノンケーブルはマニアを意識して妙に高価なものが多い。プロ用機器であれば、XLRタイプのものでも数千円で入手することができるし、これで十分である。

以上のことから考えられるピンケーブル選定のポイントは、

  1. コードやプラグが軽量にできていること
  2. コードがしなやかで容易に曲がること
  3. マイナス端子が一体でなく、割ってあること
  4. マイナス端子の内側がなめらかに出来ていること
  5. 接触部に品質の良いメッキがしてあること。
  6. はめあい精度が高くなめらかに挿入できること
  7. シールド効果の高い構造になっていること

などが挙げられる。一般に議論されている電線の構造や導体の純度などは、音質に関係しないから無視してかまわない。
kaiseim 1,2 は、プラグが設計通りに機能するために重要なことである。まずは、プラグが相手にまっすぐ平行な状態で取り付けできなければ、お話にならない。

プラグやコードが軽いほどいいというのは、左の図から理解できよう。接点の中心点がO、プラグの重心をm、お互いの距離をLとすると、mの質量が小さいほど、またLが小さいほど、接点周りの慣性モーメントが小さくなって、相手の端子との相対的な位置関係を保持しやすい。すなわち、振動などの外乱要素に対して安定した接触関係を維持するために大切なことである。Lを短くするには、プラグの奥行きは、出来るだけ短い方がよいこともわかる。

 

RCAではお互いの相対位置を固定するための手段がないが、プラグの外周がねじを切ったリングになっていて、これを回すことでチャッキングできる構造が唯一である。このような構造になっていれば、なおよい。


3,4 は、接触抵抗の低減に有効なポイントである。円筒部を割るのは、接触面積を増やすために重要なことである。円筒同士では、実際に接触している面積はきわめて小さい。どちらかに、エッジの要素がいる。 また、割った部分が金属むき出しではなく、外側をプラスチックなどで覆っているものがよい。割った部分のスキマが見えると異物が入りやすいし、腐食も進みやすい。

5 は、経年変化に関係するポイントである。市販のほとんどのピンコードが、1年もたつと、いくら拭いても新品の輝きが戻らない。これは、メッキのピンホールが原因で酸化してしまったことを意味する。逆にいえば、どんなケーブルも、新品では接触状態がいいため、音にあまり差は出ない。しかし、時間が経つと、メッキの悪いものは、次第に接触状態が悪化し、音に差が出てくる。

電気接点の多くが金またはニッケルメッキだが、しばらくたつと下地メッキが錆びてしまい、接触抵抗が増大してしまう。また、金対金のコンタクトは潤滑の面で相性が悪い組合わせであり、コンタクトオイルも塗らずに金メッキされている端子に金メッキのプラグを接続すると、接点が摩耗してしまう。

微細な信号を扱うオーディオでは、スズメッキが適している。スズメッキは、外観、腐食、耐摩耗性ではニッケルにも劣るが、軽い接触圧で数ミリオーム以下の接触抵抗が得られることを実験的にも確認している。スズ自体、潤滑性があるし、柔らかいので相手となじみがよく、かなり良好な接触状態を容易に作ることが出来る。金メッキ品のほとんどがコンマ数ミクロンしかない、見た目だけの「装飾メッキ」のため、スズメッキ端子の方が、実質的な性能が高い。※

※JIS C2805に圧着端子の規定がある。スズメッキ圧着端子のメッキ厚は1μm以上であり、様々な試験によって性能が保証されている。

6 は、はめあいに関することである。寸法精度ではめあいを出すより、ばね力で押す方が、良い接触状態を作りやすい。そこで、相手に接続することで、割ってある円筒部か、その外側のプラスチックリングのいずれかがばね力を発揮し、内側に適度な面圧がかかる構造になっていることが必要である。
本来、メーカがきちんとはめあい精度を管理したジャックとプラグ(ケーブル)をセットで用意する形がよいが、残念ながらこのような販売形式を取るメーカは存在しないようである。

7 は、誘導ノイズに関する重要な項目である。ノイズの点からいえば、コードは短いほど、導体の抵抗が小さいほどいい。シールドしていないものは論外で、シールドされていてもその構造はいろいろある。一般に、金属箔を巻いたものや、ち密な編み組みになっているものが優れている。

sild 写真は17年ほど前に購入したA社の極太高級ケーブルを剥いたところ。シールドは編組みだが、スキマが大きいのが問題だ。製造工程に問題があるのか、導線自体も腐食してしまっている。

シールド構造は唯一ケーブルに関係したポイントだが、市販のケーブルでは、残念ながら耐ノイズ性のスペックを測定し、記載しているものは皆無のようだ。

 

ちなみに、スピーカケーブルで重要だった導線の抵抗値は、信号ケーブルの場合あまり問題にならない。それは、オーディオ機器の出力インピーダンスが最も低いもので50ohm程度であるからだ。従って極端に細いものを長く使わなければ、まず影響ないと考えていい。

結局、信号ケーブルは「コンタクトの信頼性」と「耐ノイズ性能」の2つが重要であり、その他の要素は音に関係しないから考えなくても良い。コンタクトの信頼性はコネクタで決まり、耐ノイズ性能は、信号ケーブルのシールドによって決まるから、この点に注意して選定するのがポイントである。

上記の次項をふまえた上で、お勧めのピンコードは何か、ということになるが、残念ながら市販品に上記のすべてを満たすものは存在しない。
電線だけで探すと、TV配線用のS4CFB(マスプロ)が上記の条件をすべて満たしている。数百円/mのこのケーブルは、オーディオ用として売られているほとんどの電線を凌駕するだろう。

 

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