ピンケーブルの選び方1~RCAケーブルにお金をかける価値はない

 市販のピンケーブル(RCAケーブル)では、導体の純度やシースの構造などをアピールしている。その特徴が優れているほど、商品の付加価値が高いらしい。

「これだけ純度が高くて、高価な商品なら、さぞやいい音が出るに違いない」

そんなケーブルを買ってきて機器に挿すと、意外な問題に気づく。

「真っ直ぐ挿さらない・・」

 電線を挿すと重みで垂れ下がる。電線が硬く曲がりのクセで端子にストレスがかかる。
 プラグにバリがあって、挿すと端子にキズが付くものがある。
 挿し込みが硬く、ガリガリ端子のメッキを削りながら挿す場合もある。

そんな経験をしても「高価なケーブルだから」と問題にしない人が多いようだ。

 

ピンコード選びのポイント

 私が考える、ピンケーブルを選ぶポイントは次の通り。

1.コードやプラグが軽量にできていること
2.コードがしなやかで容易に曲がること
3.マイナス端子にスリットがあること
4.マイナス端子の内側がなめらかに出来ていること
5.接触部に品質の良いメッキがしてあること
6.はめあい精度が高くなめらかに挿入できること
7.シールド効果の高い構造になっていること

 よくアピールされる電線の構造や導体の純度は、上記1~7を満たした上で検討するオマケ次項。
 方向性があると称するケーブルに注意したい。電線はどの方向で使っても同じ特性であることが良質の証だ。

 

 1,2 は、プラグが設計通りに機能するために重要なことだ。まずは、プラグが相手にまっすぐ平行な状態で取り付けできなければ、お話にならない。

kaiseim プラグやコードが軽いほどいいというのは、図から理解できる。

 接点の中心点がO、プラグの重心をm、お互いの距離をLとすると、mの質量が小さいほど、またLが小さいほど、接点周りの慣性モーメントが小さくなり、相手の端子との相対的な位置関係を保持しやすい。これは振動などの外乱に対して安定した接触を維持するために大切なこと。

 

 コードはしなやかに曲がらなければならない。図のように挿し込んだ状態で電線を曲げたとき、プラグが斜めになったり、ジャックに力がかかる(ストレスを与える)ようなケーブルは使えない。

 

 3,4 は、接触抵抗を低く保つために要求されるポイントだ。マイナス側の形状は単なる円筒よりも、スリットがある方が接触点が増えて抵抗が下がりやすい。

 マイナス側にスリットを設けたプラグの例。黒ずんでいる部分が接触していた場所。

 スリットの外周が樹脂で覆われているので、機器に刺したとき隙間から端子が露出せず錆びに強い。

 

 

 5 は、経時的な劣化を防ぐために要求されるポイントだ。市販のほとんどのピンケーブルが、1年もたつと、いくら拭いても新品の輝きが戻らない。これは、メッキがさびてしまった為だ(金メッキの表面には多数のピンホールがあるので、そこから下地が錆びる)。

 このような問題が起こらないメッキに「スズメッキ」がある。軽い接触圧で低い接触抵抗が得られることから、大電流を扱う圧着端子などでよく使われるメッキだ

※JIS C2805に圧着端子の規定がある。スズメッキ圧着端子のメッキ厚は1μm以上であり、様々な試験によって性能が保証されている。

 6 は、自分と相手との隙間に関するポイントだ。きつすぎず、ゆるすぎず、「しっくり嵌る」ことが理想。RCAの「はめあい」に関する寸法精度はいい加減なので、「ばね力」でこれを実現するしかない。
 すなわち、プラグを差し込むと若干小さめに作られたマイナス側の円頭部がふくらみ、そのまま押し込むことで適度な面圧がかかる形が理想だ。

 7 は、誘導ノイズを減らすために重要な項目だ。シールドの構造がポイントになる。隙間なく緻密に編んであるものほど優れる。その点、TV配線用に作られたケーブルはすぐれたシールド構造をもつ。

 

sild 写真は1980年代に購入したオーディオテクニカの極太高級ケーブルを剥いたところ。シールドは編組みだが、スキマが大きいのが問題だ。製造工程に問題があるのか、導線自体も腐食してしまっている。

 シールドの性能は唯一ケーブルを差別化できるポイントだが、ピンケーブルではこれが不明なものがほとんど。

 

 ちなみに、スピーカケーブルで重要だった抵抗値は、ピンケーブルの場合ほとんど気にしなくてよい。それは、オーディオ機器の出力インピーダンスが最も低くて50Ω程度であるからだ[1]

 

まとめ

 結局、オーディオ用の接続ケーブルは、「軽くてしなやか」「接触の信頼性」「ノイズ耐性」の3つを押さえればよい。接触はプラグで決まり、ノイズ耐性はケーブルのシールド構造で決まる。

 「そんな商品はないものか」と思って探したが、見つからない。

 電線だけで探すと、アンテナケーブルS4CFB(マスプロなど)が上記の条件をすべて満たしている。数百円/mのこのケーブルは、オーディオ用として売られているほとんどの電線を凌駕するに違いない。

 

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