電源コードで音は変わるか

電源コードについて理解するには、電源の働きについて知る必要がある。パワーアンプを例に取って説明する。

 

パワーアンプの動作を間単に説明すれば、コンセントからもらった電気を、音楽信号に連動するよう調整し、スピーカに送り込む、となる。その調整はトランジスタやFETなどの半導体素子が行っている。

音楽信号は変化が激しい。瞬時的な大電流や、高い周波数の信号が含まれている。この電気の供給源をコンセントに直接要求するのはムリなので、すぐ近くに十分な大きさのダムを置いて、ここから必要な電気をもらっている。このダムに相当するのがアンプの「電源部」だ。

必要な電気を必要なだけ供給できるようにするためには、電源のインピーダンス(抵抗)が低いほどいい。電源のインピーダンスは、アンプに内蔵されているダムの性能そのものである。アンプで電源が重要と言われるのは、このような理由による。プレーヤやその他の機器についても、同じ理屈により電源が重要なことには変わりはない。

電源ケーブルの役目は、このダムが枯れてしまわないよう、常時電力を供給することにある。この能力は容量だけが問題になる。単なる電線(抵抗体)なので、応答性や周波数特性は問題にならない。オーディオコンポーネントには、通常そのために十分な容量をもつ電源コードが付属しており、ダムの水が不足することはない。付属のコードの容量が足りているか否かは、コードを手で触ってみればわかる。コードが熱くなっていなければOKで、ケーブルを変える必要性はない。

 

 だから、機器の電源部が良くできている場合、人間が電源ケーブルの変更による音の差を聞き分けることは、ほとんど不可能といっていい。高価な機種ほど、電源部にお金がかかっているから、電源ケーブルの交換によって音が変わる度合いは低くなる。

というわけで、電源ケーブルを変える積極的な理由はないが、もし何かの理由で交換が必要になった場合、下記に留意して選べばよい。

  1. 電流容量が元付いていた電線以上であること
  2. プラグが軽量に出来ていて、コンセントに対し、まっすぐ確実に接続できること
  3. タフピッチ銅の太い単線を束ねて構成されていること
  4. スターカッド構成やリッツ線が使われていないこと
  5. 絶縁体にポリエチレン、テフロン、和紙などの誘電率の低いものが使われていないこと
  6. 直流抵抗が小さいこと

(1)はもっとも基本的なことで、無意味に重く、コンセントに差し込むと垂れ下がるようなものは不可である。
(2)~(4)は高周波のロスに関係することである。電源ラインで60Hzを越える高周波特性を良くする必要はい。むしろ、高周波のロスが大きい方がノイズが減衰して良い結果が得られる。これを積極的に発揮するものが、「ノイズフィルタ」である。電源コードにスターカッドやリッツ線を使うのは逆効果であり、このような商品は理屈を知らない素人の創作か、素人騙しと伺える。
(5)は電力ロスに関係することであり、太く短くすることで電源周波数域のインピーダンス(直流抵抗とみていい)を小さくでき、ロスを減らすことが出来る。

そもそも、コンセント以前の屋内配線が安くできているのに、アンプまでの短い配線に何万円も投資するのは無駄である。電源まわりで本当に必要なのは、電源プラグとコンセントとの相対位置を固定するためのホルダーである。後者については、残念ながら商品として市販されているものはない。そこで、コンセントを抜け止め機構付きに交換するといいだろう。

ACタップについても、抜け止め機構はぜひほしいが、オーディオ用と称して売られているほとんどの商品にこれが無く、無駄な付帯機能が付いているものが多い。ACタップについては、パソコン用に売られているもの(OAタップ)をお勧めしたい。OAタップでは、電流容量、抜け止め機構等十分な機能を持ったものが多く市販されており、選択肢も広い。

 

オーディオ用と称して、コンセントからの交流をわざわざ直流に変換し、また交流を作るようなコンバータが市販されているが、お勧めできない。
このような装置の能書きにはコンセントの電源波形と出力波形の比較写真が載っており、整流回路の理屈をしらない人が見ると、波形が綺麗になっているのをみて効果があるように勘違いしてしまう。
また、この手の機器で最も大切な出力インピーダンスが不明なものが多く、スイッチング回路を使った製品もあるから、ヘタをすると、電源コンセント直結するより悪くなる可能性もある。

(2004/2/11 追加)
電源コードで音が変わってしまうような電源部の弱いコンポーネントの音を改善する場合どうしたらよいか。それは、コンセントのインピーダンスを下げる努力をすると効果がある。これは、昔から実証されているようにブレーカから直接配線を取るのが最も簡単だ。

また、上記で否定したコンバータだが、波形整形ではなく、電源のインピーダンスを下げることを目的に作られたものなら有効と考えられる。つまり、現在のダムのキャパが不十分なら、その前に大きなダムを用意してやろうという考え方である。このような機器は無論、PWMを使わない方式でなければならない。
しかしパワーアンプを対象にこのようなコンバータを作ろうとすると、アンプより高価になってしまう。アンプのコストの大部分を電源部が占めていることからわかるように、より高い能力の物を用意すれば、より大きなコストがかかってしまう。従って、このケースは理屈上有効だが、アンプを買い換えた方が現実的といえる。

 

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