超高画質テレビの意外な欠点

proHGもう15年以上前になるが、ソニー プロフィールHG(KX-21HD1 21型。写真のカタログは ’85/6のもの)というテレビを所有していた。この機種にはチューナすら付いておらず、外部から映像入力された信号を単純に写すだけのものだった。当時、外部入力にS端子はなく、映像入力はコンポジットが主流であった。映像は純粋なアナログ処理で、Y/C分離もアナログ式のクシ型フィルタだった。

 このテレビから学んだことが3つある。すなわち、一般に入手できる最もハイクオリティなソースは、生放送のアナログ地上波であること、Y/C分離、NR、プログレッシブといった機能や、デジタル処理技術は、見え方を向上させる事は出来ても、画質の向上には、なんの寄与もしないことである。3つ目は、最後にご紹介する。

 


 このモニタが映し出す絵はソースにきわめて忠実で、質感が高く、CMが変わるたびに映像のクオリティが変わるのを確認できる恐ろしい描写力を持っていた。当時レーザーディスクが最もクオリティの高いソースとされていたが、私がこのテレビで比較した限りでは、生放送で送られてくるアナログ地上波が、最もクオリティが高かった(このテレビは、放送が生放送か、録画した物であるか、明確に区別できた)。ハイビジョン放送が始まり、DVDが普及した現代でも、これに変わりはないだろう。

 このモニタには現代のテレビでは決して見られない、特異な特徴があった。まず、Y/C分離が完全でないので、ドット妨害が出る。しかしそのドットがクッキリとした点に見えた為、相当目立つものだった。
 さらに、このモニタに映し出される走査線は、まるで定規を使って細いボールペンで線を引いたように、1本1本が非常に細く、ハッキリと見えた。従って、走査線と走査線の間の黒い隙間も、同じようにハッキリと見えため、これがかなり目立っていた※1
 これらはいずれも、走査線のフォーカスが異様にシャープなために起こる現象であり、走査線がハッキリわからないほどボケて見える現代の安物テレビでは、決して見ることが出来ない。

※1 走査線の隙間を埋めるデジタルスキャンコンバータ(DSC-10)というオプションが別売りされていたが、それがまたテレビと同じくらい高価な物であった。

 

 最近のテレビでは、デジタル処理による高精度なY/C分離や、プログレッシブといった機能が付いているが、このテレビにはそういったたぐいの物はいっさい付いていない。そのため、ドット妨害や走査線は確かに目立つ。しかし、そこに映し出される絵は、現代ではとうてい望みえない、高いレベルの忠実度、質感を持っていた。
 このモニタの後継として、後にプロフィールPROが登場したが、基本的な映像の質感、クオリティは、プロフィールHGを超えるものではなかった。

 どうしてこのモニタの画質はこんなにいいのだろう? それはおそらく、電源や映像回路、ブラウン管といった、テレビの基本的な部分が、しっかりと作られ、アナログ技術により徹底的に画質が磨かれていたからだと、私は思う。
 このモニタの放熱隙間から内部を覗いたことがあるが、ブラウン管を中心とした上下左右の四方にプリント基板がギッチリと配置されていた。チューナも内蔵していないのに、どうしてこんなに回路が必要なのだろうかと、疑問に思ったほどだ。

 このモニタは当時特異な存在で、チューナも付いていない21インチのこのテレビを、20万円近く出して買ったのを覚えている。現代の相場は、1インチ=2~3千円であり、20インチを超えるテレビが4万円を切っていることを考えると、その価格差は5倍もある。私が買ったモニタが高価だったというより、20インチのテレビがどうやったら4万円を切るような価格で作れるのか、不思議でならない。現代のテレビも、ビデオデッキ同様、中身が相当手抜きしたもののように感じる。
 TV、ビデオなどのAV機器は、10年前と比較して、極端に価格が下がった。「高画質化」の名のもと、デジタル技術を画質向上のためでなく、コストダウンのために利用して、徹底的に手抜きしたのが、今時のAV機器なのだろう。

 

 最後に保留になっていた3つ目のポイントをご紹介する。

 それは、ソースに忠実、質感が高いというような、高性能テレビのこういった性質は、鑑賞に際しマイナスに作用することが多いこと。

 世の中、品質の良いソースばかりではない。生放送された地上波は非常に美しいが、それ以外のソース、例えば録画したソースを放送した物や、レンタルビデオについては、ソースのアラがもろに見えるので、映像ソースを楽しむ以前に、画質の方が気になってしまう。

 結局このモニタの能力が生きるのは、映像クオリティのモニタリングを目的とした場合だ。一般ユーザよりも、画質マニアに向いている。あまり高画質でない一般のテレビの方が、画質が気にならず、純粋にソースを楽しむことができたように思う。

 テレビを見る目的が鑑賞ということであれば、見え方を良くする高精度Y/C、NR、プログレッシブ、デジタル処理技術などが、今度は重要な役割を担ってくる。
 また、大画面という要素も重要である。4:3のソースが圧倒的に多い現代では、28インチのワイドより、29インチの4:3の方が有利だ。しかし、メーカの開発比重がワイドやプラズマに移っており、4:3のテレビでまともな物はほとんど無い。これについては、下記のリンクを参照されたい。

 

<参考購入先>
高画質テレビ 安いものはそれなり。コストダウンされた安価なテレビに良い商品はありません

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