蓄熱暖房装置~輻射暖房のメリット

 我が家ではリビング、キッチン、吹き抜けなどが全部繋がっていて、その総床面積は33畳ある。この空間の暖房を、これまではエアコン(7.5kW)+吹抜天井ファンのサーキュレーション(逆転)で賄っていたが、以下の課題があった。

•エアコンから離れた場所の足元が寒い。
•頭に直接暖気が当たり不快。
•設定温度到達後は、冷風が出ているようで寒い。
•暖かさを求めて設定温度を高くすると空気が極端に乾燥する。

 伝熱の形態には「熱伝導」「熱伝達」「熱輻射」の3つがある。エアコンの暖房は加熱した空気による熱伝達だけだが、蓄熱暖房やオイルヒータでは熱輻射も働く。熱輻射による快適な暖房を期待して蓄熱暖房器を導入してみた。

 

熱輻射の性質
 熱輻射は温度の高い方から低い方へ働く。従い周囲の壁が体温より低ければ体から熱を吸い取られ、逆に高ければ体が熱を吸収する。周囲の壁や床の温度が人体より高ければ、室温が低くても寒さをあまり感じない。輻射暖房でこのような環境を作れるとベストだ。

 熱輻射を利用した暖房器具の放射量は、放熱部の表面温度と面積に比例する。石油ストーブや電気式のセラミックヒーターの発熱部はかなり高温になり、近づくと熱く感じるが、少し離れるとそれを感じなくなる。これは発熱部の表面積が小さいためだ。

 オイルヒータや蓄熱暖房器の表面温度は高くても80℃なので、接近しても熱くない。その代わり輻射面積が広いので距離による減衰が少ない。この熱輻射を長時間放射して周囲の物体温度を上げることができれば、上述したような包み込むような暖房効果を実現できる可能性がある。

 

人体への熱輻射はどの程度か
 輻射暖房の効果について定量的に検討した記事をあまり見かけない。そこで周囲の壁と人体との関係を同心円柱モデルにあてはめて輻射量を計算してみた。
 結果は、概ね 0.7W/℃。例えば周囲の壁が人体より10℃低い場合、0.7×10 = 7W の熱が人体から奪われていく。20℃も差があれば14Wになる計算だ。人体の発熱が約60W前後であることを考えると、十分問題になりそうな数字である。RCの冷え切った部屋で底冷えする寒さを感じるのは、輻射によって壁に体温を吸われるからだろう。

 

輻射暖房器具の動作とランニングコスト
 輻射暖房器はいろいろあるが、輻射面積が大きく室内全体の暖房に使えるものはオイルヒータと蓄熱暖房器しかない。オイルヒータは電気代が高くつくといわれ、その通りである。通電時間を節約しようとタイマーでチマチマON/OFFすれば輻射暖房のメリットが半減してしまう。通電して最初は熱輻射の効果しかない。対流熱伝達で部屋の空気が温まる頃に通電が切れ、空気の熱伝達のみの暖房になってしまう。この暖房機は熱輻射→熱伝達にバトンタッチするだけで、熱輻射と熱伝達の両方の暖房効果が得られる時間が少ない。

 蓄熱暖房器は割安な深夜電力を利用して蓄熱する。蓄熱体の温度は深夜から早朝にかけて最大になるので、朝方の熱輻射の効果が最大になる。起きる少し前からタイマーによりファンが動き始め、輻射と対流熱伝達の両方の暖房効果が得られる。これにより、最も気温が下がる朝を快適に過ごせる。布団から出るのもさほど苦にならない。

 地域によっては電気代の割引が適用されるため、43kWh(消費電力6kW)クラスの大型機でも電気代はエアコンのほぼ半分と驚くほど安い。イニシャルコストは高いが(工事費込み30万円くらい)、7~8年で償却できそうである。蓄熱暖房器のランニングコストがエアコンより安い理由には、深夜電力を使うほかにも使い切れなかった熱量を翌日に持ち越すことで蓄電時間が短くなることが挙げられる。

※電力会社の中には蓄熱暖房割引があり、機器を設置しているだけで使う使わないに関係なく電気代が割引される。中部電力の場合は月々1800円程度の割引。

 

輻射暖房に適した間取り
 関東以南では吹き抜けがある開放的な間取りの場合、1Fに蓄熱暖房器を置くだけで全館暖房が実現できる可能性がある。この場合、24時間換気システムの見直しが必要だ。 一般に個室は吸気(3種)または給排気(1種)にすることが多いが、これだと直接外気が入るため、室内はいつも冷え切った状態になってしまう。熱交換式にしたところで結果は同じだ。
 我が家は吹抜で2Fの個室まで繋がっているので、2F個室の換気をすべて「排気」に変更した。その結果、1Fの蓄熱暖房器で暖められた空気が吹き抜けを通じて個室に入り、全館暖房に近い環境(温度差4℃以下)が出来た。

※個室を排気にすると風量が多すぎて音が問題になることが多い。個室排気は、湿度感応式の2段階風量制御できるファンが適している。個室にファンが付けられるよう、新築時すべてのパイプに対し100Vの先行配線しておくと、どのようなケースにも対応できる。

 また、熱輻射の効果を最大限得るために暖房機の設置場所を慎重に選ぶ必要がある。輻射は光線と同じで暖房器から見えない場所には届かない。従って、できる限り広い範囲が見渡せる場所に置くのがベストだ。

 

我が家の蓄熱暖房の結果
 対流熱伝導+輻射暖房によってエアコンで感じていた不快さが解消された。導入した蓄熱暖房器はオルスバーグ製、最大蓄熱量43kWhのタイプである。メーカ事前見積もりでは76kwh必要という結果だったが、43kWh1台で十分だった。最も寒い時期はさすがに暖房が足りないが、この場合エアコンの暖房と併用すれば問題なかった。

 最低気温8℃、設定温度22℃の条件で、1日あたり30%~40%(13~17kWh)放熱されることがわかった。従って、蓄熱量を50%以上に設定すれば、24時間有効な輻射をキープできそうだ。
 この条件(蓄熱量50%、設定温度22℃)を数日続けると、家中どこでも4℃以下の温度差となって全館暖房に近い結果が得られた。フローリングの床は真冬でも裸足で過ごせるようになった。

 

蓄熱暖房器の機種
 主な製造メーカにアルディ(白山製作所)と、オルスバーグがあり、物自体はほとんど同じである。我が家ではオルスバーグを導入した。オルスバーグは蓄熱量を細かく設定できるほか、現在の蓄熱量が常時バーグラフで表示されるので過不足や消費量がわかりやすい。導入後、不具合があった。頻繁にファンがON/OFFする。送風ダンパーのバイメタルが調整不良ということで、メーカに連絡したらすぐに調整してもらえた

※送風が高温のとき、ダンパーが開いて外気とミックスする仕組みだが、バイメタルの調整が悪いとダンパーが開かず温度リミッタが作動してしまい、頻繁にON/OFFを繰り返すことになる。

 

蓄熱暖房器の導入
 暖房効果、ランニングコスト共に優れた蓄熱暖房器だが、あとから導入ようとすると200Vの専用電気配線工事や床の補強が別途必要になるため、いろいろ面倒が生じるほかお金もかかる(工事費だけでオイルヒータが何台も買えてしまう)。新築時に先行配線と補強をしておくのがベストだ。我が家では将来、蓄熱暖房器を導入した場合に備え先行工事をしておいたので、導入が比較的楽だった。

montana1 我が家に導入した蓄熱暖房器(オルスバーグ 6kW 43kwh)。24時間換気システムを見直すことで(個室を排気に変更)全館暖房効果が得られた。

 

DSC0040103   周りにスチールラックを組むと洗濯物の乾燥に使える。冬季は天候に関係なく安定して乾かせる。同時に加湿もでき合理的だ。

 
 

 

<参考購入先>
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