毎年海水浴シーズンの前になると、テレビでこんなインタビューを目にする。
「今年はどんな水着が流行りですか?」
私は、次の聞き方が正しいと思う。
「今年はどんな水着を流行らせるんですか?」
「流行」は大衆の意思から自然発生したものではなく「業者」によって作られたものが多い。
例えば、去年ミニスカートだったから、今年はロングスカートにしようとか、水着の場合は去年ビキニだったから今年はワンピースにしようとか。
基本的に、去年流行したものが着られなくなるようなものを「流行らせる」。同じものを2年も着られたのでは儲からないからだ。
流行をトレースするということは、周囲に合わせて行動している。みなが右に行けば右に行き、左に行けば左に行く。それは船が沈没しそうになったら、「みなさんそうしておられますよ」と言わて、海に飛び込む気になる国民性なのかもしれない[1]。
流行を追えば、つねに業者に踊らされるだけ。「私、流行に敏感なの」という人は、自らの愚かさをアピールしているように聞こえる。
同調行動の原理とバンドワゴン効果
多くの消費者は自分の頭で物事を考えない。メディアの情報を単純に信じ、単に噂や流行に流されて生きている。いったんマイナスイオンがいいとなれば、一斉にそれを求め、カイワレや牛肉が危ないとなると、一斉にそれを避けるといった具合だ(これを、同調行動の原理というらしい)。
その市場心理は非常に強力で、いったん動き出した流れは変わらず、強力なバイアスがかかってますます増幅されていく。それは、多くの人が、「皆がそうしているものに従うのが、正しいだろう」というスタンスで、世間の流れに従っているからだ(これを、バンドワゴン効果というらしい)。
この性質は商売に巧みに利用されている。また、この効果によって生まれた需要や期待のことを、最近は「バブル」と表現されることがある。
結局は一人一人の意識の問題か
ブームは、加熱するほど、冷めるのも早い。飽きてきた頃になにか新しいものを業者が考え出すと、過去のブームのことなどすっかり忘れて一斉に飛びつく。ブームや流行の火付けはいつも業者で、踊るのは消費者。
こういう商売が成立するのは、業者のせいというより、消費者の意識の問題かもしれない。一人ひとりが自分の頭で物事を考えるようになれば、業者も個人のニーズに訴える誠実な商品戦略に切り替えてくるはずだ。私は、そんな世の中になることを願っている。
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<参考文献>
1.沈没船の小話(リンク切れ)
市民のための環境学ガイド書庫(リンク切れ)