合成洗剤より石けんの方が良い!?~石けん運用の問題点

 世間では合成洗剤の害が叫ばれている。石けんを使うきっかけは、皮膚炎や湿疹が治らない・・そんなことが多いようだ。私の場合は、カーシャンプーでクルマの塗装が痛んだ[1]ことがきっかけだった。

 合成洗剤を石けんに換えると、いろんな問題が新たに生じる。簡単に置き換えるわけにはいかない。今回はその内容をご紹介する。

 そして最後に、皮膚炎や湿疹がなかなか治らない人へ、ひとつアドバイスをお伝えする。

 

合成洗剤は本当に害なのか

 石けんも合成洗剤も、相手に吸着したり、界面を活性化させる働きは同じ。しかし、石けんの洗浄力は弱く希釈すれば容易に活性を失う。これが石けんが皮膚や環境に優しいといわれる理由だ。

 皮膚疾患に悩む人は、そんな話を聞き、普段使っている洗剤を石けんに変えようとするかもしれない。

 しかし、石けんをシャンプーやボディソープの代わりに使うと、強すぎる洗浄力とアルカリによって、逆効果になる場合がある。以下を読んで、慎重に検討してほしい。

 

石けんの洗浄力は合成洗剤と比べどのくらい違うか

 下の表は、手に塗ったサラダ油が完全に落ちる洗剤の濃度を調べたもの。

各種洗剤の洗浄力テスト(水温21℃)

希釈率 20 40 80 160 320 640倍
液体石けん
(台所用,DCM JPN)
×    
液体石けん
arau
×    
粉石けん(0.8g/cc)
スノール
×  
粉石けん
そよ風、洗濯用)
×  
液体複合石けん
ミヨシ
×  
粉末合成洗剤
ホワイト
×
液体合成洗剤
ピュア

 

 やはり、石けんの洗浄力は合成洗剤より落ちる。同じ洗浄力を得るための石けんの量は、合成洗剤の約1.5倍~2倍必要。

 液体石けんの洗浄力はさらに低い。これは含まれる石けん成分が少ない(約70%が水分で、濃度を濃くできない)ため。

 

洗濯で使ってみる

 洗濯用の石けんはスノール(シャボン玉)とそよ風(ミヨシ)が候補にあがる。無添加の液体石けんは洗浄力が弱く、投入量が多くなってコスト的に合わない。これは、デリケートな衣類のソフト仕上げ用と割り切るべき。

 スノールは99%という高純度石けんで高品質を誇る。臭いも刺激臭がなく、甘く優しい香りだ。しかし、その高純度故、水に溶けにくく、洗浄力も水質に左右されやすいという欠点を持つ。

 スノールの溶かし方は袋に記載されているが、実際はうまく溶けない。うまく溶かすコツは、次項を参照。

 そよ風(ミヨシ石けん)はこのような石けん洗剤の問題を改良して使いやすくした商品。

 

 日常使う調味料や、油汚れを想定して石けん洗剤の汚れ落ちのテストをしてみた。木綿の布にしょうゆ、ソース、ケチャップ、サラダ油の染みを作ってよく乾燥させたものを洗濯物(家族3人分)と一緒に放り込んで洗った。

 洗濯機はナショナルのNA-F700Pを使って「かくはん洗い」で使用、水量は50Lとし、洗剤の投入量は容器に記載の目安値をそのまま用いた。結果は次の通り。

洗濯用石けんの洗浄力テスト

項目 粉石けん
そよ風、洗濯用)
液体石けん
arau
液体複合石けん
ミヨシ
粉石けん
スノール
投入量 1.2g/L 1.67ml/L 1.33ml/L 1.18g/L
汚落ち
泡立ち ×
洗浄水のPH 9.0 7.2 8.3 8.8
仕上がり臭 弱い香料臭 弱いラベンダー臭 やや強い香料臭 弱い石けん臭
パッチテスト    
写真 No.1 No.2 No.3 No.4

水道水 24℃、PH=6.0、GH=2

汚れ試験片の染みは、下から上に向かって、しょうゆ、ソース、ケチャップ、サラダ油である。 これを24時間以上乾燥後、洗濯した結果が下の写真。

sekken3

 夏場で水温が高いということもあってか、今回のテストでは汚れ落ちに関してはどれも大差ない結果となった。大きな違いはPHと泡立ちだけ。洗浄力の評価はJISで決められているが、実際は様々な要因が絡むため評価するのは難しい。理屈上、石けんの洗浄力は成分の濃度とPHの高さで決まる。

 そよ風のPHが高いのは、洗濯用途に必要な助剤(炭酸ナトリウム)が配合されている為と考えられる。無添加石けんは助剤が全く配合されておらず、複合石けんは配合されていても少量のようだ。

 スノールのPHはそよ風についで高い。これは純石けん分が99%と多く(そよ風では70%) 助剤がない分を純度で補った結果と考えられる。arau のPHは低いので、デリケートな衣類の仕上げに向く。

 石けんの泡立ちは表面張力に比例し多いほど良いとされるが、合成洗剤ではあまり関係しないので一概に比較はできない。

 仕上りの香りについては好みもある。石けんで洗濯すると、まるで柔軟剤を入れたかのようにふんわり仕上がる。最初は石けん信者の過大評価と思っていたが、実際に洗濯した衣類の仕上がりは意外によい。保温力が上がって暖かく感じる。

 

洗濯用石けんの候補

 洗剤別に所感をまとめた結果は以下の通り。カッコ中の数字はランニングコスト。水50Lに対して上記表の投入量から算出した。

そよ風(23円/回)
 洗濯用の助剤が配合されており性能、コストのバランスに優れる。水温が17℃を下回ると溶けないので使える季節が限定される。身体用途には不適。

arau(29円/回)
 PHが低いため汚れ物の変動に弱い。普段の洗濯用途には不足だが、デリケートな衣類の仕上げ、身体用途に向く(下記参照)。助剤(炭酸ナトリウム)を追加して使えば洗濯用途も可能。

複合石けん(ミヨシ)(21円/回)
 石けん成分以外の界面活性剤(脂肪酸アルカノールアミド)を含むことで、液体石けんの欠点を補完。身体用途には不適。

スノール(42円/回)
 高純度の無添加粉石けん。夏場でも水に溶けにくく、ランニングコストも高い。粉石けんは洗濯用用途に不向きである(石けんカスが蓄積してカビの原因になる)。

 

 結局粉の溶ける夏場は「そよ風」を使い、そよ風が溶けない時期はミヨシの複合石けんを使うのが良さそう。無添加にこだわるとスノールにいくが、使い勝手やランニングコストをカバーするほどの価値は見いだせない。

sekken1 高純度、高品質をうたうスノールと、洗濯用洗剤の実性能を重視したそよ風。そよ風の値段はスノールの約半分。

 洗濯用の液体石けんは、ミヨシ石けんの「複合石けん」がお勧め。これも液体石けんに添加剤を配合して洗浄力をアップさせ、使いやすくした商品。ただし、仕上がりの香りがちょっとキツめ。

 

 

粉石けんの課題

 石けんを使い始めると、今までのように水に溶けないことに気づく。

 合成洗剤はスプーンですくってポンだが、スノールのような純度の高い粉石けんでそれをやるとダマになってしまう。うまく溶かすコツは、まず冷水で粉を分散させて、レンジで温める。

 毎回これをやるのは面倒と思い作り置きしたら、一昼夜でゲル状に固まってしまった。作り置きはできない。洗濯の度に、この作業が必要のようだ。

 「そよ風」の方は溶けやすい。水温17℃以上あれば、スプーンに入れてポンできる。夏場は問題ないが、それ以外の季節はやはりダメ。

sekken2 水への溶けやすさの比較(水温21℃、濃度はどちらも16ml/g)。左がスノール、右がそよ風。スノールはいくら攪拌しても粒子が浮遊するだけでなかなか溶けない。

 そよ風はよく溶けているが、水温が15℃を下回るとやはり溶けなくなってしまう。

 

 

  問題はまだある。洗濯機で石けんを使い続けると洗濯槽の裏に石けんカスが蓄積し、そこにカビが繁殖して不衛生になる。時折それがハガレて、洗濯物に付着するようになった。

 洗濯層に蓄積する石けんカスは落ちにくく、洗濯槽を洗浄してもなくすことができなかった。こうなってくると、なんのために石けんを使うのかわからない。

 結局、洗濯に粉石けんはかなり使いにくいというのが結論だ。

 

台所の食器洗いで使ってみる

 台所用の石けんは油汚れに対する洗浄力が重要。経済性からスノールなどの粉石けんが適当で、直接振りかけて使う形になる。この場合、スノールなど溶けにくい洗剤も使える。

 粉せっけんを使うと、細かい粒子が鼻に入ることが多かった。また、強いアルカリのせいで肌荒れしやすい。これらは液体石けんにすることで改善するが、コストが高くつく。

 食器洗い乾燥機に石けんを使うのは無理。泡だらけになってセンサーが誤動作しやすいほか、しばらく続けると内部が石けんカスだらけになってしまった。

 

シャンプー、ボディ、洗顔に使ってみる

 この用途には液体石けんが適している。粉石けんは洗浄力が強すぎて皮脂を取りすぎてしまう。液体石けんでも原液だと濃いので、あらかじめ3~4倍に希釈したものをボトルに入れて利用する。

 石けんはアルカリなので、体や髪を洗ったあとは、リンス(クエン酸水)で中和する必要がある。特に髪を洗った後これを省略するとギシギシした感じになってしまう。

 浴室で石けんを使い出すと、浴室が石けんカスで汚れて掃除が大変になる。

 結局、浴室で石けんは使いずらいというのが結論だ。

 ちなみに、ファンケルの洗顔パウダーは無添加石けんに保湿剤をプラスしたもの。これは上述した洗濯用のスノールで代用できる。肌に対し粉石けんは洗浄力が強すぎるので、量に注意する。使う量は1cc以下、ほんのわずかで十分。

 

肌への適合を調べる「パッチテスト」の方法

 新しい洗剤を使う場合は、事前にパッチテストをお勧めしたい。

 パッチテストの方法はいろいろだが、腕の内側など(皮膚が薄く刺激に敏感なところ)に濃度の濃い試験液を塗って乾燥させ、24時間そのままにして湿疹やかゆみ、腫れ、水泡等の異常が起きるかどうかを見る。

 皮膚の異常は塗った場所で起こるとは限らない。界面活性剤は皮膚を浸透して血液に入るので、別のところに発症する場合が多い。

 上記表のパッチテストは私自身を対象にテストした結果。自分の肌で問題なければ、次に家族全員で同じテストをする。全員問題なければ安心だ。

 

結論

 石けんをいろんな用途に使ってみたが、かなり使いにくい印象だった。粉は水に溶けにくいし、石けんカスで周りが汚れていく。洗濯機の洗濯槽はカビだらけになった。

 現在広く普及している粉の合成洗剤は、5℃の冷水でも良く溶け洗浄力も温度に左右されない。石けんに比べると圧倒的に使いやすい。洗濯石けんが合成洗剤に置き換わった理由が納得いく。

 コストが高く、使いにくい石けんを積極的に使う理由が見当たらない。我が家は家中の洗剤を石けんに替える試みをしてきたが、このような問題から、すべて合成洗剤に戻した。

 

皮膚炎や湿疹がなかなか治らない人へ

 石けんは体に優しいという触れ込みだが、実際はアルカリのせいで肌荒れしやすく、傷口にも優しくない。合成洗剤を石けんに置き換えるのは間違っている。おそらく何も変わらないはず。

 皮膚炎や湿疹を改善するには、洗剤を石けんに変えるのでなく、洗剤を使うのを「やめる」のが最善だ。

 皮膚に異常があるところへ界面活性剤を使い続けると問題が多い。経皮毒などの害もある[2]。何も付けないで、まずは皮膚のバリア機能が回復させるべきである。

 

<参考購入先>
液体石けんそよ風 1200ml 洗濯用石けんはこれで決まり
台所用石けん 液体タイプ 300ml 
無添加衣類の石けん 5000ml お買い得な大容量タンク。補充用に
石けん専用リンス 中身は単なるクエン酸水なので1本目が空になったらクエン酸水を補充していく
スノール紙袋 1kg

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2.ニキビが減る!~シャンプー ボディソープの手作りで皮膚疾患を治す
カーシャンプーを石けんに置き換える

<参考文献>
石けん百科 石けんの性質から理論まで幅広い情報が充実している
YH化粧品 シャンプーの害と往復ビンタ商法についての解説がある。