コーヒーの味を長持ちさせる

 コーヒーは淹れたてが美味しく、その後急速に味が落ちる。朝淹れたコーヒーはせめて昼まで持って欲しい、そう願うのだが2時間がせいぜいだ。この品質劣化をステイリング(staling)と呼び、その原理はまだ解明されていないらしい[1]

 今回は、味が悪い割に長持ちする缶コーヒーから得たヒントをもとに、自宅で入れたコーヒーの味をできるだけ持たせる方法を検討したのでご紹介する。

 

缶コーヒーが不味いのはなぜか

 私はコーヒーが好きで、ブラックが好み。コーヒーの淹れ方は、散々やったあげく、味、経済性、後始末などのバランスから、「粉を買ってきてペーパードリップにする」に行き着いた。味は大切だが、面倒でないことも私にとって大切bな要素になる。

 外出先で仕方なく缶コーヒを買うことがあるが、ブラックはとにかく不味い。砂糖入りのものは、とても飲めた味ではない。

 缶コーヒーが不味いのは、添加剤が原因に違いない。「コーヒー」と称する飲料を100%コーヒー豆から作ったら、とてもこの値段では作れないはず。

 ペットボトル入りの「アイスコーヒー」の味は最悪で、カラメルの味しかしない。業務用のアイスコーヒはかなりまともな味だが、値段が3~4倍する。コーヒーをマジメに作ったら、本来このくらいの価格になるのだろう。

 

豆から挽いているのに不味い「ミル挽き自販機」

 高速道路のSAには大抵、ミル挽きの自販機がある。100%コーヒー豆を使っているのに、なぜか不味い。最近では内部の様子をカメラで見せるシカケがついた自販機がある。これを見て、まずくなる理由の一つがわかった。

 自販機では抽出に時間をかけられない事情がある。目の粗いフィルターを使って強制ろ過している。

 これが、ミル挽きの自販機が粉っぽくてコクがない、大きな要因に違いない。

 

味と引き換えに劣化を遅らせる「アルカリ添加剤」

 コーヒーが劣化を遅らせるために、缶コーヒーにはpH調整剤としてアルカリが添加されている。

 その調整剤は、炭酸水素ナトリウムもしくは、炭酸ナトリウムが使われているという。この添加によってどのくらい味が持つのか。コーヒーの風味がどう変わるのか。今回はこれを実験してみた。

 

実験方法

 pH調整剤は炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウムを用意。実験は簡単。コーヒーにこれらの添加剤を入れて味の変化を調べる。コーヒーメーカーはハリオV60。粉はスーパーで売っているごく普通の市販品(UCC ゴールドスペシャル リッチブレンド)を用いた。

 

実験1 市販コーヒーのpHはどのくらいか

DSC01289b まずは市販のコーヒーのpHを調べる。不味いコーヒーの代表にUCCの無糖コーヒーを選んだ。概ねpH5.7(20℃)。味は薄く、カラメル臭がする。薄いコーヒーに添加物を加えてカラメルで色づけした。そんな感じの商品だ。

 別の商品も調べた。pokkaのaromax Blackは  pH5.60(18℃),5.45(50℃)だった。

 

DSC01291b 同じUCCのゴールドスペシャル リッチブレンド。ハリオV60で淹れた結果は概ねpH5.2(50℃)。時間が経つと濁ると同時に味が落ちる。ただ、5時間経ってもpHはほぼ変化無し。味と一緒にpHが落ちるわけではないようだ。

 しかしpH5というと結構な酸性。コーヒーは体に良いと言われるが、飲みすぎは良くなさそう。

 

 

実験2 アルカリに調整してみる

 UCCゴールド リッチで作ったコーヒーに重曹を入れてpH7.5までもっていく。そのお味は・・

 うぇぇ、不味い。飲めん。これはもうコーヒーではない。別の飲み物になっている。

 今度は同じコーヒーに炭酸ナトリウムを入れてpH7.5にする。味は・・これは飲める。

 どこかで飲んだ味。そう、缶コーヒーにかなり近い。不味いことに違いないが、このまま5時間経っても味はあまり変わらない。アルカリにすると持ちがよくなるのは確かだ。

 

実験3 pH6(弱酸性)に調整してみる

 炭酸ナトリウムでpH6.0(50℃)に調整してみる。味は酸味が押さえられた感じで悪くない。2時間経っても濁らず味も問題ない。レンジで温めれば香りが立ち、淹れ立てに近いコーヒーが飲める。

 昼まで(5時間)経つとさすがに味が落ちるが、缶コーヒーよりは美味しい。これなら水筒に入れて持ち歩きできる。これまでより長い時間、美味しいコーヒーが飲めそうだ。

 何回も作って実験した結果、最適なpHは5.7~6.0(50℃)、上限は6.5(50℃)のようだった。pHをあげていくと酸味が減って味気なくなる。酸味もコーヒーの重要な味の要素であることを再認識した。

 

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結論~コーヒーを長持ちできるレシピはこれだ!

 コーヒーに炭酸ナトリウムを入れてpH5.8前後に調整する。

 使う炭酸ナトリウムは微量のため管理しずらい。そこで希釈水を作ってそれを入れる形を考えた。

 例えばコーヒー3杯分(粉24g+水360cc)の場合、炭酸ナトリウム2%水溶液を、小さじ1杯(ペットボトルキャップ1杯)入れる。

 これで缶コーヒーとほぼ同じ、pH5.8(50℃) のコーヒーが出来る。さらに1/2杯追加するとpH6.4(50℃)程度にできる。このあたりの調整はお好みで。

 一度に作るコーヒーの量がいつも決まっている場合、次を参考に希釈水を作り置きするといい。

コーヒー1杯分:水300ccに炭酸ナトリウムを2g溶かしたものを小さじ1杯(ペットボトルキャップ1杯)入れる。
コーヒー2杯分:〃4g 〃
コーヒー3杯分:〃6g 〃
コーヒー4杯分:〃8g 〃
コーヒー5杯分:〃10g 〃

 炭酸ナトリウムは後から入れるのではなく、コーヒーを淹れる際、あらかじめサーバーに入れておく。

 炭酸ナトリウムと似たような名前の薬品に注意。炭酸ナトリウムの別名はソーダ灰、炭酸ソーダ。炭酸水素ナトリウム、過炭酸ナトリウムはどちらも別物。過炭酸ナトリウムは漂白剤です。間違って飲まないようご注意ください

 

豆(粉)を長持ちさせる保管方法(2018/8追加)

 コーヒーがモトから酸化していたのでは何にもならない。酸化防止には脱酸素剤が有効だが、市販品は個別包装されていないので封を開けるたびに劣化が進んでしまい、使いにくい。

 そこで使い捨てカイロで代替する。酸素と水分に反応して熱を出す仕組みのカイロは、強力な「脱酸素剤」になる。

 使い方は簡単。小さいカイロをコーヒーストッカーに放り込んでおくだけ。蓋を開けたときに入る酸素と反応するだけなので、相当長持ちする。

 熱くなるのでは?といった心配はない。密封した容器の中では、酸素を消費したらそれ以上反応は進まない。ビニールに入ったカイロが熱くならないのと同じこと。

 

 

 

<参考購入先>
炭酸ナトリウム 掃除用ではなく食品添加と書いてあるものを使ってください
HARIO V60 コーヒーメーカー ハンドドリップに匹敵する味のコーヒーメーカーです
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<参考文献>
1.アルカリ処理による液体コーヒーの安定化 – 特開平10-215771