ネットを検索すると、よく似た記事を見かけることがある。「パクられた!」と思っても文章が違う。でも書いてある内容は同じ。一致しないから申し立てできない・・諦めるのは早い。今回良く似た記事をGoogle経由で排除できたので、そのノウハウをご紹介する。
リライトは著作権侵害になるか
デッドコピー(コピペ)がアウトなことは誰でもわかるが、リライトの場合はどうなのだろう。
著作権法によると、よく似た文章でもアイデアや思想、ありふれた表現を並べて作った文章(表現上の創作性がない文章)は侵害の対象にならないとしている。つまり単に似ているだけでは侵害にならない。
但し、「表現上の本質的な特徴を直接感得できる場合」は侵害とされている(著作権法の中の、翻案権という[1][2])。
ここが難しいところだが、リライトした記事の文章表現が元記事と本質的に同じ場合は、著作権侵害になるかもしれない。だが文章表現を元記事が想像できないくらい変えてしまえば侵害にならない。ここがリライトする側のウデの見せ所。
リライト記事の多くは後者で書かれていて、これが法で裁けない問題のパクリ記事になっている。
いくら違法でないとはいえ、人が書いた内容をパクって収入を得ようとすれば不愉快に思われて当然。トラブルに発展する可能性が高くなる。
偶然の一致は侵害にならない~自分で書いたものならセーフ?
著作権法では偶然の一致は侵害にならないとしている。このことから、
「それは何も見ず自分で書いたもの」「そんな記事しらんがな」「偶然の一致でしょ」
で通せると思っている人を見かける。
通常著作権の調査では最初に類似点が比較され「似ている」とされると、次は自動的に「参考にしただろ」という疑いがかかるから「参考にしてない」ことを被告が立証しなければならない[5]。そこで
「確かに似ていますが、それは何も見ず自分で書いたものです。絶対に間違いありません!」
と言っても、こう言われておしまい。
「その仕事を続けていたのなら、当然過去に読んだ可能性があるでしょう。あなたそれを無意識に目にしていたかもしれませんよね。読んだのを忘れているだけではないですか?」
これを「無意識の依拠」というらしい。自分の記事が新しい以上、過去の情報を「知りようがなかった」ことを示さなければならない。著作権者の記事が書かれる以前からネット環境のない病院にいたとか、未開の無人島にいたのなら「知りようがなかった」といえる。
しかしネットに繋がる環境にいて、普段から同じジャンルの情報に触れている人が、いくら「参考にしていません」と言っても通らないことが想像つく。
従って、たとえ本当に何も参考にせず書いたとしても、既に似た記事があるところへ公開したら「知りようがあった」以上、侵害になる可能性が高い。
記事を書いたり公開する際は、事前によく調べることがとても重要だということがわかる。
パクリ記事を見つけた場合のアクション
パクリ記事を見つけた場合のアクションには、次の選択肢がある。
1.パクリ記事を書いた人に連絡する
2.パクリ記事を書いた人が契約しているISPに連絡する
3.Googleの著作権侵害による削除申し立て窓口[4]を利用する(YouTubeにも窓口がある)
4.裁判所に申し立てる
1をやった経験からするとお勧めしない。連絡して素直にひっこめる人は少なく、クレーム相手としてこちらの素性が知れてしまう。
2と4は著作権侵害が明らかな場合に有効。ISPは無関係と思うかもしれないが、違法と知りながら配信を続けた場合、配信業者も罪に問われることがあるので連絡すればある程度の対応が期待できる。4はカネがかかるので相手が有名人で高額な賠償が望める場合に限定されるだろう。
お勧めは3。簡単に申し立てができ、こと細かく証拠を提出する必要もない。
3を実行して申し立てが認められると相手の記事がネットから消えるが、申し立て人の名前が公開される点に注意したい(この対策は、会社名の欄に何か書いておけばいいらしい[6])。
YouTubeの申し立てではGoogleアカウント名が公開されるので、余計な情報が相手に伝わらないよう、事前に適当なGoogleアカウントを作るか、情報を編集しておくことをお勧めする。
申請フォームの記入欄は限られている。ここは簡潔に要点を書く。詳しい内容は、後から送られてくるメールに返信する際、記述できる。
疑わしきは罰する~Googleの著作権対応
GoogleはDMCA(アメリカのデジタル ミレニアム著作権法)に基づいて削除の判断をしている。
Wikiによると、訴えを受けた事業者は詳しい説明や証拠がなくてもコンテンツを消していいことになっている。これは対応が遅れると被害が拡大して配信事業者にも罪が及ぶことがあるため。
つまり、疑わしい場合はとりあえず受理して、異議を受け付ける形になっている。
相手から異議申し立てが来た場合、10日以内に裁判所に提訴してその写しを提出するか、申し立てを取り下げるかを判断することになる。裁判所に提訴する場合は地元でできる少額訴訟が便利だ。
被告(訴えられた人)は異議申し立てできるが、それをすると自分の個人情報(住所、名前など)が申し立て人に送られるほか、裁判に発展する場合もある。
この仕組みは、裁判と違って申し立てる側に有利である。
原告は疑わしいだけで相手記事を消去に追い込むことが可能。被告は異議申し立てをする場合、相手に個人情報が渡り裁判のリスクを負う。そこで異議申し立てを躊躇すれば、実際に違法か否かに関係なく申し立て人の勝ち。
被告になった人は異議申立てして勝っても相手に個人情報が渡ってしまう関係上、次回から慎重にならざるを得ない。
Googleの対応は基本的にはアメリカ著作権法に基づくが、実態は法律では裁けないパクリ記事の抑止力として機能しているようだ。
オリジナルを証明する手段
著作権の争いではどっちがオリジナルかが問題になる事がある。これは「先に公開していた」ことが決め手になるが、頻繁に更新しているとそれが立証しにくい場合がある。この場合Webアーカイブが証拠に利用できる。
日本語サイトは Wayback Machine[3]にある程度保管されているが、あまり古いものは残っていない。そのため日頃の次の行動が重要になる。
1.常日頃パクリ記事を監視する。
2.公開日と更新日をわけて管理する[7]。
3.新規事項を追加した場合は、その修正履歴を記事にきちんと残す。
4.定期的にサイトのバックアップをとり、長期間保管する。
1はアクセスの高い自分の記事のタイトル検索するだけでもある程度カバーできる。
発見が遅れて古い侵害記事を申し立てしようとすると、それが書かれた時点の記事を調べて類似点を比較し、さらに現在との同一性を確認しなければ「侵害している」とは言えないので面倒なことになる。つねに監視することが重要だ。
2の更新日の更新は、著作権を主体に考えて構成要素(画像含む)に変更があったとき実施する。誤字脱字の修正、言い回し変更、大幅なレイアウト変更などは構成要素が変わらないので、更新日を更新しない方が良い。
著作権でアイデアは保護されない
アイデアは著作権ではなく知的財産権になる。例えば、当館にある
「青空駐車では汚れの被膜が塗装の保護になる」「上白糖にザラ糖をある比率で混ぜると固まるのを防げる」
といった話はアイデア。
アイデアは特許庁に出願しないと権利にならず、パクっても処罰されないが、だからといって自由にパクっていいというものではない。ここは良識ある行動が求められる。
よく似たパクリ記事をネットから消す手順
ネットを検索すると一文も一致しない似た記事をみかけることがある。これに対し「似ている」と言っただけではGoogleに削除してもらえない可能性が高い。そこでまず、次のように構成要素を分析して似ている割合を定量化する。
※以下の方法は、私以外にも本記事の読者の方から実際に削除に成功した報告をいただいている実績のある方法です。
1.両方の記事を比較して、同一性のある構成要素を抜き出す
相手と共通する部分だけでよい。ありふれた事実は除外。
2.相手記事の中から同一性がない構成要素を抜き出す
相手が独自に創作したとみられる要素のこと。
3.同一性のある部分と、同一性のない部分の割合を調べる
1と2の数を比べて、1が大半を占める場合はGoogleの通報窓口にGo!
Googleに削除申し立てする場合、とりあえずこの手順に沿って同一性のある部分と同一性のない部分をわかりやすい形で示せばよい。
Googleから定型文のようなメールしか来ないことからすると、審査官は日本人ではないらしい。日本語の読解力が必要な類似性の示し方だと「ご指摘のコンテンツは見つかりませんでした」と言われてしまうことが多いようだ。ここは日本語が読めなくても一目でわかるような表現の工夫が必要である。
表現の工夫の例。エクセルなどのソフトを使い、両方の記事をキャプチャーして並べて作る。自分の記事のどこと、相手の記事のどこが似ているのかが視覚的にわかる。
赤い枠は段落単位で囲えばよい。相手方の記事の中の、枠で囲われた段落が同一性のある部分、枠から外れた部分が、同一性のない部分。
私はこれで、一文も一致するところが見つからないリライト記事の削除申請に成功した。
サイトのまるごとキャプチャーはChrome拡張機能(FireShotなど)が使える。
Googleへの説明は短く要件だけを簡潔に。日本語より英語で書いた方が対応が早い模様。上記の資料があれば、説明は下記だけで十分。
https://www.XXXX/ 添付フイルの通り、著作権者の記事と似ています。 As Capture shows, there are many similarities.
資料を送って5時間後に以下のメールが届いた。
お客様 Google へご連絡いただきありがとうございました。 デジタル ミレニアム著作権法に従い、下記の URL を Google の検索結果からまもなく削除いたします。 https://www.XXXX/
返事が来るまでの時間からすると、申告した枠の中身をいちいち読んでいない可能性が高い。
似ている部分は正しく指摘することが重要。いい加減な申告をすると後で自分が困る事になりかねない。それから、企業を相手にする場合は長期連休が始まるときが良いタイミングだ。
まとめ
・表現を変えたリライト記事(パクリ記事)は法的にセーフだが、不快感を与えることから訴えられる可能性が高い。
・「参考にしてません」は通用しない。たとえ本当に何も参考にせず書いたものだとしても、既に似た記事があるところへ公開すれば著作権侵害になる可能性が高い。
・パクリ記事を見つけたら、Googleの「著作権侵害による削除申し立て窓口」に直行するのがよい。
・GoogleはDMCAに基づいて判断するので、詳しい説明や証拠がなくてもコンテンツを消してくれる。この制度は法律では裁けないパクリ記事の抑止力になっている。
・著作権の争いではどっちがオリジナルかが問題になる事がある。この場合Webアーカイブが証拠に利用できる。
・アイデアは著作権で保護されない。公知の情報をパクっても処罰されないが、良識ある行動が求められる。
・「似ている」感覚は、構成要素に分解し、類似性のあるものと無いものを仕分けることで明確にできる。
・一文も一致するところが見つからないリライト記事でも、視覚的に一目でわかる資料を用意することで削除申し立てができる。
最後に~パクられない記事を書くために
同じメッセージを発信する記事でパクられないためには、やはり「独自性」「網羅性」が重要なことわかる。
せっかくユニークな記事を書いても網羅性が足りないと、別の人が同じテーマでより充実した記事を書いてしまって検索順位で負けてしまうことがある。そこでいくら「パクった」といっても自分が書いた部分が半分以下では文句も言えない。他人にネタを与えて自分が損しただけで終わる。
逆に、独自性・網羅性の高い記事は容易にパクれない。付け足しようがないからリライトするしかないが、見つかったらGoogleに申し立てされて削除になるだろう。
時間と金をかけてパクリ記事を書いても無駄に終わる。今後は、そんな世の中にしていきたい。
<参考購入先>
著作権問題の判例 過去の判例が最も参考になります
コンテンツ別 ウェブサイトの著作権Q&A
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<参考文献>
1.著作権の保護範囲に関し著作物の「本質的な特徴の直接感特性」基準に独自の意義を認めた裁判例(1) 田村善之
2.パクリデザイナーと言われないために押さえておくべき3つの裁判例 STORIA法律事務所
3.Wayback Machine
4.Googleの著作権侵害による削除申し立て窓口
5.著作権侵害行為 弁護士法人 フラクタル法律事務所
6.本名を晒さずGoogleに削除依頼(DMCA侵害申し立て)できたお話
7.この実現は、以下の記事が参考になる。
WordPress 記事の更新日時を自由に変更する:改造版
Google の著作権侵害対策 – 文化庁
注意:本記事の著作者は法律の専門家でないので、本記事の内容が正しいとは限りません。記事の通りに実行しても、結果が期待通りになる保証はありません。