工学系の人は関数電卓を使う機会が多い。エクセルなどの表計算ソフトが便利に使えるようなった現代でもサクっと計算できる関数電卓は便利だ。ところが、市場にロクな商品がない。
歴代のカシオ電卓
写真は歴代のカシオ関数電卓。左から、最新機種 fx-JP500、10年前のfx-993ES、30年前のfx-580。世代を重ねるごとに大きくなっている。fx-580はポケットに入るが、他は無理。
fx-580にはソフトケースが付いていたが長年の使用でボロボロになり破棄。落下も何度か経験し角が割れている。そろそろ買い替えようと思い、10年前にfx-993ES(最初の写真中央)を購入。しかし使いにくくてお蔵入り。以下が問題だった。
カシオ電卓の問題点
カシオの電卓で使いずらいと思う点は以下の通り。
1.ENG(エンジニアリング)キー(小数点位置を変える機能)がSHIFT併用になった
2.ENG記号(G,M,k,μ,n,p・・)の機能が付いてない
3.Min、MR(メモリー機能)がSHIFT併用になった
4.ボタンを押すとカタカタいう
工学系の人にとってENG(エンジニアリング)機能はよく利用する便利な機能だ。単に小数点位置を変えるものだが、これがSHIFT併用になってる。小数点をずらす方向によっては、遠く離れたSHIFTボタンとの間を何回も指が往復することに。その様子はまるで「指の運動」。
「ENG記号」はGPaで出てくる応力解析の結果を理解したり、抵抗やコンデンサなどの定数(pF,μF)の計算が直感的にできる便利機能。μとかGなどの単位で直接入力もできる。
fx-993ESを買って失敗してから10年、少しはマシになったかと思って最新のfx-JP500を買ってみたが似たような状況。機能表をよく見ると、ENG記号は最上位機種のfx-JP900にしか付いてない。また失敗した。
関数電卓はシャープやキャノンも作ってるが、ENG記号の機能が付いて無い。現在、この機能が欲しければカシオ一択になっている。
カタカタいう問題はケースが樹脂製になり裏の4か所の出っ張りで机に接する構造が原因。この4点に不陸があるためボタンを押すと本体が机から浮いてカタカタいう。このせいで使用感がどうにも悪い。
電卓の裏面。最近のカシオは裏に4か所の出っ張りがあるが平面が出ていない。一番右のfx-580の裏面は出っ張りがなく平坦に出来ていてこの問題が無い。
名機fx-580
キーはシリコンゴムで出来ていて裏が平面のため、使用感がとてもよい。ENGキーが2つ(進む、戻る)あり、メモリーもMin、MRがあるためSHIFTキーを押す手間が無い。これが便利すぎて手放せない。
他の計算も一々「=」を押したり「S⇔D」を押さなくても即座に結果が出る。慣れもあるが、この時代の電卓は現代の機種に比べて同じ計算が少ない手数で出来る。中でも機能が充実したfx-580は名機だと個人的に思う。
但し欠点がある。本体をひねると表示が消えたり灯いたり安定しない点。これは電池ホルダーと基板(カーボン接点)の接触不良。分解してお互いの接点を拭いてやると復活する。接点用オイルRational003を薄く塗れば完璧。バラしたついでにパーツを洗浄するといい。写真はそうしてオーバーホールしたもの。初期性能が完全復活した。
不陸を改善してみる
不陸カタカタ問題の改善を試みた。ガラスなど平坦な面に400番くらいのペーパーを置いて、本体を押さずに、自重だけで横スライドさせて少しずつ出っ張りを削る。ペーパーに押しつける場合は本体中央を軽く押すようにする。完全には治らないが、これでだいぶ改善する。
結局これしかない現実
ENG記号は、カシオ最上位のfx-JP900にしか付いてない。これから電卓を買う工学系の人へのお勧めはこれ一択。ENG記号など要らんという人は、2つ下の fx-JP500でいいだろう(JP700との違いは行列ベクトル計算の有無)。
不陸でカタカタする場合は上記のようにペーパーで削る。
文字サイズの比較。最新の高精細表示は文字のサイズが小さくて老眼につらい。30年前の古い電卓を使ってる人は、一度分解清掃(オーバーホール)して大事に使うことをお勧めする。
電卓のありたい姿とは
カシオの電卓は実際に使ってない人がUIを設計しているように見える。これが「いろいろ機能は付いているけど、どれも中途半端で使いにくい」ことになっている原因ではないか。
1つの電卓に機能を詰め込むのはそろそろ限界だと思う。最近の電卓は多機能になったが、エクセルを使ったりpythonのプログラムを組んだ方が便利な計算を電卓でやる必要はない。
「機能を特化して使い勝手を徹底追及」「エクセルやPythonより素早く答えを出せる」
これが電卓本来のありたい姿だと思う。
<参考購入先>
カシオ fx-JP900 今はこれ一択です
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