ハンダが詰まらない自動はんだ吸い取り器の選び方~HAKKO FR301 vs goot TP-100

HAKKO FR-301 と good TP-100の外観

チョッと吸うごとに分解清掃が必要で、作業がはかどらない・・

はんだ吸い取り器の課題は、「ハンダの詰まり」。これをいかに少なくできるかが、商品の価値を決める。gootとHAKKOにはハンディ型の自動はんだ吸い取り器がある。今回は、この2つを徹底比較する。

 

比較

 

FR-301 商品セットgood TP-100ケースの中身

パッケージの中身。左はHAKKO FR301  実売19000円。右はgoot TP-100実売19000円で同じ。どちらも交換用フィルター、クリーニング用のピン、こて台が付属する。

FR301にはノズルを交換するための「ノズルレンチ」が付いている(後述)。保証はgoot 1年に対し、HAKKO3年。HAKKOの方が商品が新しい模様。

 

FR-301 フィルターパイプTP-100 のフィルターパイプ

フィルターパイプの構造。ここはメンテナンスに関わる重要な部品。HAKKOはフィルターがなく、金属の受け皿が奥にある構造。レバーを下げるとパイプを押すスプリングがロックされ、黄色のボタンで解除&セットする。非常に良くできている。

gootの一次フィルターは金属ウール。パイプはレバーで引っ張りながら抜く仕組み。金属ウールは使ううち、中央に吸い取ったはんだのタワーが出来るため定期的に取り除く必要がある。HAKKOの方は勢いよく受け皿に当たる仕組みで、ワセリンでも塗っておけば簡単に剥がれる。これにより連続使用を実現している。

 

FR-301 フィルターパイプの裏側TP-100 フィルターパイプの裏側

フィルターパイプの反対側。ここは基本的に同じ。gootは本体側にもフィルターがセットされている。フィルターの厚みが大きく、吸引力が低い。

 

FR-301 温度調整ダイヤルTP-100 温度調整ダイヤル

温度調節ダイヤル。HAKKOは350℃~500℃の設定。gootは250℃~450℃まで設定できるが、中央は温度が高すぎてパターンを傷めることがある。ところが、目盛りを中央から下げるとノズルが詰まりやすくなる。

 

FR-301 温度調節ダイヤル

上の小さなくぼみは温度校正用トリマー。小手先温度計を見ながら目盛りの構成ができる。gootには無い装備。

 

交換ノズルの比較

交換ノズル。左HAKKO、右goot。HAKKOの交換ノズルは先端のビットのみ、gootはパイプと一体になっている。値段はパイプ付きのgootが高価であり、千円くらいの価格差がある。

 

FR-301の先端を外した様子goot TP-100 の交換ノズル

ノズル交換の様子。HAKKOは付属のノズルレンチを差してひねるだけのワンタッチ。非常に簡単かつ素早い交換が可能。gootはねじ込み式。ペンチなどを使って回す必要がある。

 

コンセントプラグの比較

電源コード。左HAKKO。右goot。HAKKOは細いコードに2極プラグ付きで取り回しが良い。gootは3極の太いコードで少しごつい印象。コードが固くコードの重みで本体が動く。HAKKOには3極タイプもある。

 

HAKKO FR-301 の握りにあるランプ

HAKKOのパイロットランプ。設定温度に達するとランプが消える仕組み。gootには無い装備。

 

HAKKO FR-301 の手元スイッチ

手元スイッチ。コンセントを抜かなくても手元でOFFにできる。これもgootには無い装備。

 

FR-301のポンプ分解ねじ

ポンプ分解ねじ。これを外すとポンプ部分を分解メンテナンスできる。HAKKOはフィルターを薄して吸引力を強くする代わりに、メンテを必要とする設計。

gootはポンプを分解できない構造なので、ポンプのメンテが必要ないようにフィルターを十分厚くしている。そのため吸引力が犠牲になっている。

 

使い勝手

HAKKOの操作感は非常によい。圧倒的な吸引力で勢いよく吸い込み、効率的に作業が出来る。フィルターパイプの中に金属ウールが無いので、清掃しないで長く作業できる。

gootが好調なのは最初だけ。5回目くらいから徐々にノズルが詰まりはじめ、10回くらいで詰まって吸引しなくなる。フィルターパイプの金属ウールにはんだのタワーが出来、ノズルの出口に接近するので取り除く必要がある。これはハンドのスッポンより多少マシな程度の道具である。

gootは10回程度吸う毎にノズルの清掃とフィルターのメンテが必要。作業効率が悪く、なかなか進まない。この問題は設定温度によって変わる。高めにすると改善するが、熱でP板のパターンを傷めやすい。

使い勝手は、圧倒的にHAKKOが良い。カートリッジとノズルが、とても良くできている印象。

 

総合

まとめると以下の通り。

 

表1.自動はんだ吸い取り器の比較(2022/10調べ)

  HAKKO FR301 goot TP-100  勝者
値段(実売) 19,000円 19,000円 互角
保証 3年 1年 HAKKO
一次フィルター なし
(皿受け)
金属ウール
(消耗品)
HAKKO
温度調整 350℃~500℃
(校正可)
250℃~450℃ HAKKO
ノズル交換 ワンタッチ式 ねじ込み式 HAKKO
交換ノズル 先端のみ ノズル一体型(高価) HAKKO
電源コード 2P,3P 3Pのみ、太くてごつい HAKKO
パイロットランプ 設定温度で消灯 (該当機能なし) HAKKO
手元スイッチ プッシュ式 (該当機能なし) HAKKO
ポンプ分解 ねじ1つで可能 (該当機能なし) HAKKO
使い勝手 快調 詰まりやすい HAKKO

 

HAKKOの商品は、現場の経験を取り入れ、使い勝手と効率を徹底的に考え抜いて作られた印象。たかが吸い取り器、と思うが、情熱を注いで設計された印象であり、使い勝手の良い道具に仕上がっている。

一方gootは昔の構造から変わっておらず、改善の工夫が見られない。両者の商品力の差は歴然としており、gootを選ぶ理由が無い。gootは、がんばって改良してもらいたい。

 

<参考購入先>
HAKKO FR301  はんだ吸い取り器としては、完璧に近い道具です
HAKKOの交換ノズル