ヤマハGTシリーズの欠陥とテクニクス SL-1200シリーズの評価

ダストカバーを閉じた様子

写真は中古で導入したSL-1200MK5。今回は、このメンテナンスとダストカバーの取付け結果をご報告する 。

 

ヤマハGTシリーズの問題点

 SL-1200MK5を導入する前、GT-750を使ってきたが、このプレーヤーには次の問題を感じていた。

 

1.無駄にデカくて重い

 大きく、将棋盤のように厚みのある本体が場所を取る。

 

2 .使い勝手が悪い

 糸吊り式のアンチスケーティングは調整が面倒、DDなのに回転ブレーキが無い(無駄に大きい慣性のせいでなかなか止まらない)。微妙なアーム高さ調整がしずらい。

 

3.ターンテーブルの重みでキャビネットがクリープ変形

 ターンテーブルの重みで天板が沈みこみ、これにつられてトーンアームのZ軸が中央に向けて傾く。見た目ではわからない。針の高さが内周と外周で違う原因を調べて判明。これは木製の棚板が時間がたつと撓む現象(クリープ)と同じ。木製キャビネットに共通する欠点。

 

4.メンテ・修理が難しい

 このモデルは回転検出のためのFG( Frequency Generator)が磁気リング式であり、これが接着剤の経時劣化で剥がれやすい問題がある(写真外周の茶色いリング)。接着しなおそうと思って外したら位置決めするものが何もない。

GT-750の磁気リング

 DDモーターはFGを「正」として制御するから、これが偏心していると自分で回転ムラを作ってしまう。プラッターにいくら大きな慣性があっても無意味。いったい、どうやって組み立てたのか? おそらく専用の組み立て治具があるが、サービスマニュアルが入手できないので修理や調整が困難。

 

1,2は本格プレーヤーとして評価される要因だが、私のようにテスト信号を精度よく再生したい人や業務用途ではデメリットでしかない。

3,4は今回入れ替える動機となった決定的な要因。磁気リングの構造はおそらくGT-1000、GT-2000も同じであり、知ってしまうと選択から外れる。

 

SL-1200の特徴

 SL-1200は長い歴史をもつ[1]定番の1つ。DJ用途で実績があり、次の特徴がある。

 

1.操作感・使い勝手に優れる

 スタート、ストップが非常に早い。これはDJに限らず業務用では重要な性能。スタイラスライトが装備されていて針を落とすポイントが見やすい。予備のカートリッジや45回転アダプターの置き場所が用意されている。

 

2.堅牢で壊れにくい

 DJの蛮用に耐える丈夫で信頼性の高い作り。天板が金属なので木材のような経時変形がない。

 

3.メンテ・修理がしやすい

 サービスマニュアルが入手できるため修理・調整にトライできる。部品の多くは絶版だが中古が豊富にあり、大抵の部品が手に入る。

 FG検出はヤマハのような磁気リング式ではなく、レゾルバ(電磁誘導)式なので芯ズレの問題がない。ここはDDプレーヤーを選ぶうえで重要なポイント。

 

 良いことばかりではない。SL-1200シリーズはモデルによってダストカバーを開閉するためのヒンジが付いていない。この場合ダストカバーは「4角を本体の4角に均等に合わせて置く」。外すときは「真上に」引き上げる(取説より)。

 DJ用途ではこの方が便利かもしれないが、ズレ落ちたり、スタイラスライトやバランスウエイトに当たって傷つきやすい。

 

MK5にダストカバーのヒンジを付けてみる

 ヒンジの純正部品は中古で手に入るので付けてみた。こちらの記事[2]を参考に、本体をひっくり返して、インシュレーターを外して、裏カバーを外して、取付板を交換する。ところが・・形が違う。もともとある取付板は位置決めのボスにはまっている。純正の板にはボスがはいる穴がないから、付け替え出来ない。

ダストカバーのヒンジを見比べている様子

 

MK5の取付板には最初から穴が開いている。もしやと思ってタッピングネジを入れてみると正解。これはタッピングネジの下穴である。

ヒンジの受けを取り付けている様子

 

純正のタッピングねじでヒンジの受けを固定。バラさなくてもよかった。おそらく「ひっくり返して、たくさんのネジを外して裏カバーを外して・・」なんて作業をしなくても済むよう、改良したとみられる。

取りつけたヒンジの受け

 

ヒンジを付けるために、ダストカバーについているゴム板を外す。弱く接着されているだけなので、簡単に外れる。

ダストカバーからゴムプレートを取り除いている様子

 

ついでにカバーを磨いて深い傷をとり、透明度を回復させる。

ダストカバーを磨いている様子

 

最後に、カバーの前端がぴったり閉じるように建付けを調整して完成。調整は写真のねじをゆるめて、上下に少し動かす。

出すとカバーの建付けを調整している様子

 

完成写真。ヒンジが付いたのはいいが、45度くらいしか開かないので奥にあるアームの調整がやりずらい。微妙な作り。

メンテナンスが終わったSL-1200mk5

 

ちなみに、SL-1200シリーズでヒンジが付かないモデルは次の通り。

SL-1200MK3D , MK5 , MK5G, MK6 , MK7 , M7L

MK3Dは裏蓋を外す必要がある。MK7やM7Lはヒンジの取付板自体がないため、両面テープ固定か自己責任でタップ穴を加工することになる。「後付けはイヤ、最初からヒンジ付きが欲しい!」となるとMK4(1997年)まで遡るか、高級モデル(MK5GLD , Gシリーズ)から選ぶしかない。

その他気づいたこととして、インシュレーターのゴムのひび割れがある。MK5は2002年の製品であり決して新しいものではない。インシュレーターの主役はスプリングであり、多少のひび割れは性能に支障ない。

 

SL-1200の性能

 下は1kHzの基準信号を再生したところ。回転数が正確で、ゆるぎなく安定している。これは、プラッターが最適な慣性で作られているおかげ。DDモータにはDDモーターに適した慣性質量があり、重ければ良いというものではない。

1kHz基準信号の再生結果

 振動やハウリングに対する耐性(S/N比)はDJの現場で実証済み。これは、キャビネットが金属、ゴム、プラスチックの複合構造のため。重いだけの将棋盤より振動に強いとみられる。

 

高性能な付属ケーブル

 フォノケーブルで最も重要な特性に「静電容量」がある。配線の静電容量と、フォノイコライザーの静電容量の合計値でMMカートリッジの音色が決まる。静電容量は追加は出来ても減らすことはできないから、プレーヤー側の静電容量は、小さいほど良いといえる。

 MK5はケーブル付きなので静電容量を測ってみたところ・・なんと、75pF前後。これは現在入手できる最高性能のモガミ3368並み。

SL-1200付属ケーブル

 SL-1200本体に付くケーブルをリケーブルしてしまう人がいるが、なにも変わらないか、性能を落とす結果になるだろう。

 SL-1200シリーズには外付け(RCA端子)のモデルがあり、次の通り。

MK4 , MK7 , M7L , Gシリーズ(G, GR , GAEなど)

これらには外付けのケーブルが付属するが、静電容量が不明。音質を安定させたい人はケーブル付きモデルを選ぶのが無難。

 

SL-1200はどれを選ぶべきか

 MK3 , MK4 , MK5 , MK6 あたり。MK5 , MK6はダストカバーのヒンジが後付け。MK3 はさすがに古く、メンテナンス前提になりそう。MK4はフォノケーブルが外付けのため、なければ別途調達する必要がある。

 

類似商品の注意点

 SL-1200の中古価格は当時の新品と同等以上であり、MK7などの現行品は10万円をこえる高額商品になっている。一方、オーディオテクニカとパイオニアから見た目にそっくりなプレーヤー(AT-LP120XBT-USB , PLX-500)が半額程度で売られている。SL-1200の中古を買うくらいならこちらの新品、という選択肢もあるが、一つだけ確認すべき点がある。

 GND(アース端子)が、RCAのマイナスに通じていないこと

これが通じるものはハムが乗ってMCカートリッジが使えない。レコードプレーヤーのアース端子(フレームグランド)は、RCA(カートリッジ出力)のアースと絶縁されていないといけないが、アンプ内蔵のプレーヤーの中にはこれが守られていない製品がある(例:TEAC TNシリーズ)。

 これはテスターを当てればすぐにわかるので、機会があれば調べてみたい。アース端子の無いPLX-500はMCに対応しないことが取説に明記されている。

 MCはレコード再生でフラットな特性が得られる唯一の手段。音質にこだわるならMC一択である。

 

<関連動画>

 

<参考購入先>

SL-1200シリーズ
MK7用ヒンジ
その他部品-サウンドハウス

<関連資料>

1.SL-1200の歴史-テクニクスHP
2.SL-1200MK3Dヒンジ交換-マモ基地のブログ