クッキング温度計の選び方

 料理に欠かせない温度計。温度が見えるようになれば、唐揚げもハンバーグも一段と美味しく作れるようになる。肉料理では欠かせないアイテムだ。ところが、クッキング温度計を求めてアマゾンを覗くと怪しい激安商品で埋め尽くされている。失敗しない選び方をご紹介したい。

 

クッキング温度計の比較

 この種の商品は「温度がわかる」だけでは不十分。見落としてはいけない重要なスペックに「応答速度」がある。応答が遅いと測っているうちに加熱が進んでしまう。それと、濡れた手で触ることが多いため「防水」も求められる。

 これらについて調査し、一覧表を作ってみた。

 

クッキング温度計一覧(値段は2018年6月現在)

メーカー 型番 方式 応答 精度 IH使用 防水 値段 備考
チノー MF500 熱電対

5,800 電池交換不可(使い捨て)
A&D AD-5605C 熱電対 × 5,400 分離型
A&D AD-5605P 熱電対 3,200 一体型
A&D AD-5625 サーミスタ 2,600 電池種類が異なる商品が混在
タニタ TT-508-WH サーミスタ × 2,400 応答遅すぎ
中国製その他 いろいろ サーミスタ ×~△ 千円前後 どれも似たようなもの

※:電源ONして数秒待ってから近づけるようにすれば使える。

 方式は「熱電対」と「サーミスタ」があり、熱電対式のほうが精度が高く、値段も高価になる。

 

いろいろなクッキング温度計

 上からA&D AD-5605C、タニタ TT-508-WH、以下中国製品。 

 

 

精度について

 熱電対式>サーミスタ式 の関係になっている。熱電対式は回路が精密になるため値段が高い。

 サーミスタは25℃付近の精度が最も良く、温度に比例して誤差が増える。100℃では±2℃の誤差を生じることがあり沸騰の確認に使えない。肉料理で問題になる60℃近辺は±1℃程度の誤差で使うことができる。

 

応答速度について

 応答速度は温度検出部(先端)の作りで決まる。細く小さいものほど応答に優れている。表の中ではタニタだけ遅くて料理では使い物にならない。見るとかなり太いものが付いている。

クッキング温度計の検出部先端を比べてみたところ 温度検出部の形の違い。左から中国製、中国製、タニタ、A&D。

 先端が細く薄いものほど応答に優れる。但し細いほどデリケートで壊れやすいので取扱いに注意したい。

 

 

IH対応について

 熱電対式は料理で使うすべての温度域で±1%以下で使える。但し微小な電流を増幅するため原理的にノイズの影響を受けやすくIHとの相性が悪い。

 A&Dの分離型(AD-5605C)はIHで調理中の水や食材に針を差し込むと誤動作するため使えない。一体型のAD-5605Pは使えないことは無いが、誤動作することがある。熱電対式は基本、IHで使えないと考えるのが無難。

 

IHで加熱中のフライパンの底の温度を測っている様子

 サーミスタ式はIHで普通に使える。激安商品でもOK。

 よくある誤解に鍋底に先端を接触させてはいけないという話があるが、実際は問題ない。

 鍋を置かずに使づけると先端が誘導加熱されて壊れる可能性があるので注意したい。

 

 

お勧めの候補

1.チノーMF500

 業務用ではこれ。応答、精度共に最も優れた品で、レストランの厨房などで使われることが多いという。電池交換できないので使い捨て。IHではおそらく使えない。

2.A&D

 一体型のAD-5605Pがお勧め。精度、防水、価格で絞るとこれが唯一の選択肢になる。IHで使えないことはないが、誤動作しやすい。OFF操作がわかりずらいが、応答が実用上十分で精度も信頼できる。

3. AD-5625

 IHで使うならこれ。先端が非常に細く、食材に挿した穴が小さくて済む。応答も問題ない。表示が小さくて角度がつくとやや見ずらい欠点がある。

 

誤差の確認方法

 身近にある正確な温度の基準に沸騰温度がある。温度計を買ったら確認をお勧めする。

 

沸騰時の温度利用して温度計の誤差を調べているところ

 AD-5605Pで沸騰温度の誤差を調べているところ。圧力がかからないよう、蓋を1/3以上開放した状態で測定する。

 蓋をして沸騰させると蓋の重みで気圧が少し上がるため水が100℃以上になる。煮込み料理で蓋を取った瞬間、激しく泡立つのはそのため。

 

気圧(飽和水蒸気圧)と温度の関係を示したグラフ 気圧(飽和水蒸気圧)と温度の関係 (SON-NTAGの式 100℃~374℃ から計算)。気圧は気象庁のHPからリアルタイム情報が配信されている。これを使って現在の正確な沸騰温度がわかる。これを温度計の誤差の判定に使う。

 

 

中国製激安商品について

 千円前後で売られている激安商品はオモチャ。ほとんどが中国製で、商品説明に誇張がある。このことは温度計だけでなく、計量する商品すべてに当てはまる。

中国製の激安温度計を分解したところ

 中国製の激安温度計を分解してみたところ。とても簡素な作りになっている。

 本品は電池の接触が悪く、本体を触ると電源が入ったり切れたりする。ケースやスイッチのつくりなど値段相応。

 

中国製激安温度計の温度検出部の中身 中国製の激安温度計の温度検出部の構造。サーミスタが先端近くに配置され、その先には熱伝導の良さそうなグレーのグリスが詰まっている。

 激安でも応答だけは良いのは、このチューブのおかげ。

 

 

<参考購入先>
A&Dの温度計

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