蓄熱暖房機の選び方~RC造で底冷えする寒さを感じるのはなぜか

RC造(鉄筋コンクリート)の住宅では、空調しているにもかかわらず、夏は暑く、冬は寒い。冬は体温を吸われるかのような「底冷えする寒さ」を経験する。これはいったいどうしてか。今回はこの謎を解明し、快適に過ごすための冷暖房機器を提案する。

 

エアコン暖房の欠点

 我が家のリビングはキッチンや吹き抜けなど他の空間と繋がっていて、床面積は33畳ある。これまで、この空間の暖房をエアコン(7.5kW)+吹抜天井ファンの組み合わせで賄っていたが、以下のことを問題に感じていた。

•エアコンから離れた場所の足元が寒い。
•頭に直接暖気が当たり不快。
•設定温度到達後は、冷風が出ているようで寒い。
•設定温度を高くすると空気が極端に乾燥する。

 暖房をエアコンだけに頼ると、どこも似たような状態になると思う。

 

熱輻射の性質

 周囲の壁や床の温度が人体より高ければ、室温が低くても寒さを感じない。これは床暖房で経験する。反対に、壁や床の温度が人体より低いと室温を上げても寒く感じる。冬は底冷えする寒さ。壁が熱くなる夏はまるでサウナに。

 これは、熱輻射によって周囲の壁に体温を吸われる(夏は過剰に受け取る)ため。熱輻射は温度の高い方から低い方へ、熱が移動するので、周囲の壁が体温より低ければ体から熱を吸い取られ、逆に高ければ体が熱を吸収する結果になる。面積の大きなガラス窓でも同じことが起こる。

 

参考:人体への熱輻射はどの程度か

 熱輻射で伝わるエネルギーは温度と面積が関係している。ライターの炎はきわめて高温だが、離れると熱くない。これは面積が小さいため。

 輻射暖房の効果について定量的に検討した記事をあまり見かけない。そこで周囲の壁と人体との関係を同心円柱モデルにあてはめて輻射量を計算してみた。

 結果は、概ね 0.7W/℃。例えば周囲の壁が人体より10℃低い場合、0.7×10 = 7W の熱が人体から奪われていく。20℃も差があれば14Wになる。人体の代謝による発熱が約60W前後なことを考えると、十分問題になりそうな数字である。

 


 

輻射暖房器具の候補

 輻射暖房器はいろいろあるが、輻射面積が大きく室内全体の暖房に使えるものはオイルヒータと蓄熱暖房器しかない。以下順番に見ていく。

 

オイルヒーター

 対流熱伝達+熱輻射の暖房器。快適な暖房を実現できる機器だが、温まるまでが遅い。最初は熱輻射の効果しかなく、対流熱伝達で部屋の空気が温まるまでには相当時間がかかる。

 最大の問題が電気代。通電時間を節約しようとタイマーでチマチマON/OFFすれば暖房のメリットが半減してしまう。

 

蓄熱暖房器

 割安な深夜電力を利用して蓄熱する。蓄熱体の温度は深夜から早朝にかけて最大になるので、朝方の熱輻射の効果が最大になる。起きる少し前からタイマーによりファンが動き始め、輻射と対流熱伝達の両方の暖房効果が得られる。これにより、最も気温が下がる朝を快適に過ごせる。布団から出るのが苦にならない。

 地域によっては電気代の割引が適用されるため、43kWh(消費電力6kW)クラスの大型機でも電気代はエアコンのほぼ半分と驚くほど安い。イニシャルコストは高いが(工事費込み30万円くらい)、7~8年で償却できそうである。

 重量物なので、200Vの専用電気配線工事や床の補強が別途必要。後から入れようとすると、工事費だけでオイルヒータが何台も買えてしまう。ここは新築時に先行配線と補強をしておくのがよい。我が家ではこれをしたので、導入が比較的楽だった。

 蓄熱暖房器のランニングコストが安くなる理由は、深夜電力を使う他にも使い切れなかった熱量を翌日に持ち越すことで蓄電時間が短くなることがある。

 主な製造メーカにアルディ(白山製作所)と、オルスバーグがある。物自体はほとんど同じ。我が家ではオルスバーグを導入した。オルスバーグは蓄熱量を細かく設定できるほか、蓄熱量が常時バーグラフで表示されるので過不足や消費量がわかりやすい。

※電力会社の中には蓄熱暖房割引があり、機器を設置しているだけで使う使わないに関係なく電気代が割引される。中部電力の場合は月々1800円程度の割引。

 

蓄熱暖房器の導入

 吹き抜けがある間取りの場合、1Fに蓄熱暖房器を置くだけで全館暖房が実現できる。この場合、24時間換気システムの見直しが必要。基本的に蓄熱暖房器を置くリビングを給気にして、個室をすべて排気にするのがよい[1]。我が家は吹抜で2Fの個室まで繋がっているので、2F個室の換気をすべて「排気」に変更した。

 熱輻射の効果を最大限得るため、暖房機の設置場所に注意が要る。輻射は光線と同じで暖房器から見えない場所には届かない。従って、できる限り広い範囲が見渡せる場所に置く。

 

蓄熱暖房器 オルスバーグ モンタナ 43kwh 我が家に導入した蓄熱暖房器(オルスバーグ モンタナ 43kwh)。24時間換気システムを見直すことで(個室を排気に変更)全館暖房効果が得られた。

 熱輻射の効果を最大限得るには、蓄熱量を多くして表面温度を高くする必要がある。

 

蓄熱暖房機の周囲にスチールラックを設置し、洗濯物を干している様子   周りにスチールラックを組むと洗濯物の乾燥に使える。

 冬季は天候に関係なく安定して乾かせる。洗濯物を出し入れするために寒い屋外に出る必要がない。

 我が家では写真のような感じでずっと室内干しにしている。同時に加湿もでき合理的。

 
 

 

我が家の蓄熱暖房の結果

 対流熱伝導+輻射暖房によってエアコンで感じていた不快さが解消された。導入した蓄熱暖房器はオルスバーグ製、最大蓄熱量43kWhのタイプである。

 メーカ事前見積もりでは76kwh必要という結果だったが、43kWh1台で十分だった。最も寒い時期はさすがに暖房が足りないが、この場合エアコンの暖房と併用すれば問題なかった。

 最低気温8℃、設定温度22℃の条件で、1日あたり30%~40%(13~17kWh)放熱されることがわかった。従って、蓄熱量を50%以上に設定すれば、24時間有効な輻射をキープできそうだ。

この条件(蓄熱量50%、設定温度22℃)を数日続けると、家中どこでも4℃以下の温度差となって全館暖房に近い結果が得られた。フローリングの床は真冬でも裸足で過ごせるようになった。

2020/12追記

 何年も運用してきた結果、深夜電力を考慮しても蓄熱暖房よりエアコンの方が電気代が安くなることが判明。エアコンをメインにして、蓄熱暖房をその補助とする使い方がコスト、効果の面で最も良いことがわかった。

 

メンテナンス・トラブル

 導入後、不具合があった。頻繁にファンがON/OFFする。送風ダンパーのバイメタルが調整不良ということで、メーカに連絡したらすぐに調整してもらえた

※送風が高温のとき、ダンパーが開いて外気とミックスする仕組みだが、バイメタルの調整が悪いとダンパーが開かず温度リミッタが作動してしまい、頻繁にON/OFFを繰り返すことになる。

 以後のメンテナンスは、ファンのフィルター(ウールマット)を毎年それを1回水洗いするだけ。

 使い始めて5年過ぎたあたりから、温度と蓄熱の調整ツマミが不安定になった。これはボリウムのガリと同じで接触が安定しないため。分解掃除して復旧[2]させたが、DIYできないと部品代3.2万円+工賃の出費になっていた。調整機構は電子ボリウムか、ボタン式のものを選んだ方が良いだろう。

 

<参考購入先>
蓄熱式あったかグッズ ユニークな蓄熱式のグッズです
オイルヒーター
蓄熱式ヒーター

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