「新事業・新商品を考えろ!」どこの企業も重要な位置づけで取り組んでいる活動だ。長年やってる割には成果を挙げられない企業が多いと思う。原因はいくつかあるが、見落とせない重要なことが一つだけある。
それは担当者の「性格」。人には、新しいことを考える仕事に向く人と、向かない人がいる。向かない人にいくら「新しいことを考えろ」といっても成果は望めない。
もし新事業や研究開発を担当する部門の責任者が「向かない人」で、それを知らずに任せていると、企業の存続にかかわることがある。そこで、「新しいことを考える仕事に向かない人」を見分ける方法をご紹介したい。
消費者の性格を知る
イノベーター理論による商品の普及曲線が知られている[1]。新商品に対する消費者の反応を示したもので、これによると、消費者は次のカテゴリに分類される。
1.イノベーター(Innovators)
自分の直観と信念で行動する。他人の意見は意に介さない。リスクをいとわず自ら進んで人柱になる。
2.アーリーアダプター(Early Adopters)
話題の商品で一番乗りをしたい(例えばiPhoneの発売日に徹夜で並ぶ)。最初のクチコミをネットに書きたい。値段や入手性は問題にしない。
3.アーリーマジョリティ(Early Majority)
商品についてよく研究しネットの口コミを入念にチェックしてから買う。欲しい商品が発売されてもすぐに飛びつかず値段が落ち着くのを待つ。他人の口コミや風評を鵜呑みにせず自分で判断する。
4.レイトマジョリティ(Late Majority)
自分で物事を判断せずに周囲の行動に倣う。商品が話題になっても半信半疑で様子見し、周りが実際に買ったのを見てから買う。
例えばニンテンドーDSが発売されても周りの子供友達が持つのを見るまで買わない。悪い風評があるものには近づかない。
5.ラガード(Laggards)
現状に満足し新しいものに感心を示さない。今のものが使えなくならない限り買い換えない。例えばアナログ放送が終了すると知っていても、自分のテレビで実際に映らなくなるまで買い替えない。
買い換える場合も、今まで使っていた商品と同じものを求める。
この理論によれば、誰でもこの中のどれかに当てはまるという。
新事業、新商品の創出や研究開発に向かない人を見分ける
上記の分類は人の性格をそのまま表している。
4と5、つまりレイトマジョリティやラガードは、周りに倣って行動し、変化を嫌う人だ。そのような人たちに新事業、新商品の創出や研究開発を任せても成果は期待できない。新しいことを考えろと言っても、大抵は時間の無駄になる。
適材適所という言葉がある。これらの人たちは、新しいことを考え出すのは苦手だが、ルーチンワークや、指示通りに仕事をこなすのが得意。なので、そのような部門で力を発揮させるのが適切だ。
ターゲティングに活用し売上げアップさせる
イノベーター理論のもう一つ活用にターゲティングがあると考える。上記1~5の人たちには次の性質があるといわれる。
1や2の人
目新しさ、独創性、希少性といったところに強く反応する。値段や入手性はあまり問題にしない。
3の人
1や2が書いたクチコミやレビューを情報源にして購入を決める。事前に入念な調査を行って納得してから購入する。その分、細かいことを気にする。
4の人
自分の頭で考えずに周囲に倣う。「最近これが一番売れてますよ」「満足度No.1」といったセールストークに反応し、値段(お買い得感)が購入の決め手になる。機能性能の細かいところは気にしない。日本ではその国民性から最も人数の多い層と見られる。
5の人
保守的で「前と同じもの」を求める。従い同じであることが重要になる。値段はあまり気にしない。この層には高齢者が多く、昔の懐かしいデザインや復刻商品に反応する。
これらを理解したうえで、ターゲットを決めると売り方が明確になり損失を防げる。例えば、
1~3の層が好む目新しい商品は店頭に置かずネット販売を主体にすべきことがわかる。1~3の層が店頭に足を運ぶ目的は、買い物ではなく現物の観察。これらを店頭に置いたら、散々いじり倒された挙句ネットで買われてしまうのがオチだ。
4の層については家電量販店での接客販売が適している。売れ筋商品を見極め、安く大量に仕入れて上手に接客することで、大きな売り上げが望める。
5の層も店頭に足を運ぶが、「前と同じもの」を求めるので、お客様が商品選びで迷わないよう、代替品をよく研究して準備しておくと、すぐに購入していただけるはずだ。懐かしの復刻モノは、5の層のキャッチアイテムになる。
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1.サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか
2.普及学