GeForceは写真や動画の編集に向かないという。クリエイター向けPCはQuadroが多い。ゲームと写真編集、両方やる人にとってQuadoは気になる存在。写真や動画をターゲットにGeForceとQuadoと比較した情報がほとんどない。そこで両者の実力を検証してみた。
テスト環境
用意したビデオカードは次の通り。
GeForce GTX1080(GIGABYTE)
GeForce GTX960(GIGABYTE)
Quadro K620(ELSA)
HD530 (corei5-6500内臓GPU)
実行環境はGTX1080だけCorei7-6700、他は記載なき限りCorei5-6500。メモリはそこがボトルネックにならない十分な量を搭載した。
Quadro K620はクリエイーター向けBTOモデルでよく採用されているローエンドボード。GTX960に比べ貧素に見える。上位のM2000にしても同じこと。
ベンチマークソフトは、OpenGLや写真、動画の処理速度を比較できるものを用意した。
SPEC viewpref 12.1.1[1]
PCMark 8 Basic Edition 2.7.613 (Creative Accelerated 3.0使用)
これらベンチマークはあくまで参考であり、グラフの結果が作業効率とイコールではないことに注意したい。
動画のエンコード速度の比較は以下を利用した。
TMPEGnc Video Mastering Works 5
テスト結果
SPEC viewpref
一部を除きGTX1080圧勝に見えるが、テストの中身を見るとそうでもない。例えばSolidWorks実行速度の目安を示す sw-03 の中身は次のようだ。
1~3. Vehicle in shaded mode , 4. Vehicle in shaded-with-edges mode , 5. Vehicle in wireframe mode , 6~7. Rally car in shaded mode , 9~10. Tesla Tower in shaded mode , 11. Tesla Tower in shaded-with-edges mode
前半の3つを除き、多くのテストでK620が勝っている。
全データは次を参照(クリックで拡大)。CAD系ソフトでも設計用はQuadro、デザイン用はGeforceが勝るようだ。個々のテストの詳細は文献2を参照してほしい。
SolidWorksにはベンチマークソフトが付属していて結果が共有されている[3]。計算条件の違う結果が混在しているが、おおよそ次の関係があるようだ。
K620 > HD530 ≒ GTX960 ≒ GTX1080
GeForceはグレードに関係なくCPU内臓グラフィクス(HD530)と大差ない。この結果は、グラフ2のテスト10,11と一致する。
PCMark 8
見やすくするためHD530をスコア10として正規化してある。時間の結果については逆数をとりBetterの方向を合わせた。
ゲームの能力だけGeForce系が飛びぬけて高い。GTX1080の最高点は天井を突き抜けて見えないが190ある。反面、ビデオや音楽関係のベンチではGeForce系が低い。個々のテストの詳細は文献4を参照してほしい。
動画のエンコード
上の設定画面はTMPGEnc Video Mastering Works 5。エンコーダーにNVIDIAのCUDAを利用できるのでこれを有効にした。エンコード中CUDAが利用されると下のようにCPUとCUDAの利用比率が表示される。
エンコードの対象ファイルはmp4の映画ファイル(1.7GB、2時間相当)を使用。この再エンコードにかかった時間はi5-7400の環境で約46分。これを基準にした速度比を次に示す。
表1.動画のエンコード速度比
速度比 | CUDA コア数 | |
i7-6700 + GTX1080 | 1.7 | 2560 |
i7-6700 | 1.6 | 0 |
i5-4590 + GTX960 | 1.1 | 1024 |
i5-6500 + K620 | 1.0 | 384 |
i5-7400 | 1 (基準) | 0 |
速度比は基準を分子に置いて割った値なので数字が大きいほど速い。CUDAに手伝わせてもエンコードの速度は1割程度しかアップしなかった。i5とi7の違いからみて、エンコードの速度にGPUの能力はあまり関係なく、CPUの能力(特にコア数やスレッド数)が速度アップに最も影響するようだ。
結論
1.CADや写真でGeForceは意味なし
試しにGeForceを入れたPCでCAD操作をしても、CPU内臓グラフィックスと差が体感できない。GTX1080で大規模モデルを操作したときだけ、CPU内臓グラフィックスより多少マシな程度。
CADや写真の用途においてGPUは大規模モデルのときの描画を助けるだけで、普段の体感速度はCPUの能力(コア、スレッド数)や搭載メモリ、ディスクI/O速度によって決まると考えていい。
CADソフトによって一部機能が動作しない(例えばSolidWorksのRialViewはGeForceだと無効になる)。
2.CADや写真はローエンドのQuadroで十分
Quadroを使うことでCADの大規模モデルで問題となる描画のストレスから開放される。Quadroにはいろんなグレードがあるが、写真や設計系CADではK620で十分。M2000はデザイン系CADの要求に見合うものと考えられる。
GPUの負荷はELSA System Graphでモニターできる。4K動画再生、大規模CADモデル操作などいろいろ実行してみたが、K620の能力を使い切る(GPU負荷が100%になる)ケースはほとんどなかった。
3.動画編集(エンコード)にGPUは役に立たない
Quadroは編集時の表示速度のボトルネックを解消する。しかしエンコードの速度には、ほとんど寄与しないようだ。この用途はCPUの能力(コア、スレッド数)で決まる。搭載メモリが少ないとそこがボトルネックになるので注意。
<参考購入先>
Quadroビデオカード
TMPGEnc Video Mastering Works 動画エンコードの定番ソフトです
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<参考文献>
1. SPEC viewpref
3.SplidWorks Share Your Score
4.PCMark8ベンチマークのテクニカルガイド