PCMレコーダーを使ってYouTube動画のホワイトノイズを減らす~ZOOM H4nProを徹底検証

 カメラにマイクをポン付けして録るとホワイトノイズが目立つ。この問題はPCMレコーダーで改善できるはず。そこで低ノイズアンプを搭載するPCMレコーダーZOOM H4nProを購入しその実力を調べてみた。

 

H4nProとは何か

 H4nProはXY単一指向性マイク、XLR入力端子含む4chレコーディングが可能な携帯型ICレコーダー。YouTube動画制作ではあまり関係ないがMTR機能やPCと繋いで使えるオーディオI/F機能がある。

 写真はTASCAM DR-05とZOOM H4nPro。今回はこの2台を比較する。

ZOOM H4nProとTASCAM DR-05

 

類似製品との比較

 H4nProと同価格帯の類似商品にTASCAMのDR-40,DR-44WLシリーズがある。これらTASCAM製品に対する利点と欠点は次の通り。

利点

・プラグインパワーに対応した外部マイク入力(ステレオミニ端子、内臓マイクと排他使用)がある(TASCAMには付いて無い)。プラグインパワーのマイクを持ってる人は、それを流用できる。

欠点

・横を見ないとボタン類の位置がわからない。持ち上げるとき誤ってボタンを押してしまうことがある(TASCAMはほとんどの操作が上から出来る)。

・外部マイク入力端子が本体裏側にある(L型プラグで挿さないと机の上に置いて使うことができない)

 

上位機種との違い

 ZOOMではH4nProの上にH5,H6Fシリーズがあるが、録音レベル調整がアナログボリウムになってしまい数字で正確に設定できない。音楽の制作現場ではアナログボリウムが便利に違いないが、私的にはいつも正確にレベル設定できるデジタル式の方が便利に感じる。FシリーズはHシリーズよりさらに低ノイズな作りになっている。

 TASCAMの方はDR-100シリーズが上位にあり、レビューによると内臓マイクで高音域が強調されるという。

 

カメラ撮影に特化したDR-60D

 同価格帯にユニークな商品がある。TASCAM DR-60シリーズ。これは三脚とカメラの間に入れて使えるよう作られたもの。同じコンセプトの商品に子亀ちゃんタイプのパナソニック DMW-XLR1がある。

 こういう親亀子亀方式はケーブルを外に這わすと足でひっかけて三脚ごとカメラを倒す危険がある。マイクを孫亀(ホットシュー取付)にして使えば問題ないが、マイクが音源から遠くなってしまう。

 

ノイズ性能を検証する

 H4nProの能書きによるとEIN(入力換算雑音[1]) -120dBu以下というローノイズアンプを搭載している。これはINPUT1,2をバランス入力(XLR)で繋いだ場合の話で、内臓マイクや外部マイク入力には適用されない点に注意したい。EIN -120dBuと言われてもピンとこない。他のレコーダー(DR-05など)に比べどのくらい違うのだろう。

 まず内臓マイクのノイズの実力を見てみる。下のグラフはレコーダーを布団にくるんで暗騒音を録ったもの。DR-05(赤)とH4nPro(青)、録音レベルMAX。

H4nProとDR-05の暗騒音の分析結果

右下がりの傾斜が暗騒音で、水平な部分が機材のノイズ(ホワイトノイズ)。ゲイン合わせしていないが、だいたい合っている。この様子からすると、H4nPro内蔵マイクのノイズは他のレコーダーと大差ない。

 EIN -120dBu以下をうたうローノイズ端子(INPUT1)の実力はどうだろう。H4nProの外部マイク入力(赤)と、ローノイズ端子(INPUT1 青)を比較してみた(端子開放、録音レベルMAX)。

外部マイク入力とINPUT1のノイズフロア

両者には16dB程度の差があるが、外部マイク入力の方がゲインが8dB高いので実際はこの半分。8dB引いてもINPUT1,2端子は8dBくらいノイズが低い。これらの結果からDR-05のEINを逆算すると、-120-(-8)= -112dBuくらいである。

 下の図は外部マイク入力のゲインをINPUT1端子と合わせたうえで、1kHz sin波形を同じマイクで録音した結果。赤は外部マイク入力、青はローノイズ端子(INPUT1)。

外部マイク入力とINPUT1に同じ信号を入れて分析した結果

 だいたい8dBくらいノイズに差がある。EIN -120dBu以下と言われるINPUT,2端子は、ホワイトノイズを減らすために多少有効のようだ。

 

結局ホワイトノイズは下がるのか

 TASCAMの取説に入力レベル調整の仕方が書いてある。それによると、PEAKを超えない範囲で -12dB付近を中心にレベルが変化するくらいがいいという。これを以後「適切な入力レベル」と称する。

 YouYuberの間で人気のステレオマイクにオーディオテクニカ AT9945CMがある。感度は-42dB (0dB=1V/1Pa,1kHz、以後略)。このくらいのマイクをDR-05などのPCMレコーダーに繋いでしゃべる場合、口をマイクに10cmまで近づけなければ「適切な入力レベル」にならない。

 しかし実は、これでもホワイトノイズが聞こえる。これを目立たなくするには、入力をもっと大きくして録音レベルを下げる必要がある。入力を大きくする手段は、前回ご紹介した「1cmでもマイクに近づく」「高感度マイクを使う」などがある[2]。H4nProなどの低ノイズのレコーダーを使うと、そこでさらに8dB減らすことができる。

 

LINE出力端子は使えるか

 レコーダーには大抵ヘッドホンモニターと兼用するLINE出力端子がある。ゼロを記録したWAVデータをレベル最大で再生してノイズフロアを測ってみた。

 H4nProで-120dB、DR-05で-130dB。

 H4nPro側の出力ゲインが4dB低いので差はもうすこし大きい。いずれにしても録音された信号に対し十分なノイズマージンがあることから、LINE出力を通すことでノイズが増える心配はなさそうだ。

 

H4nProの品質

 手元に3台あるので個体差を調べてみた。

3台のZOOM H4nPro

 

チャンネル間偏差

INPUT1,2間⇒0.16dB(1.83%)MAX
外部マイク入力LR間⇒0.05dB(0.58%)MAX
LINE出力LR間⇒0.35dB(3.95%)MAX

 ちなみにDR-05は外部マイク入力LR間0.05dB(0.58%)、LINE出力LR間0.02dB(0.23%)と優秀。H4nProのLINE出力はLR偏差が大きいのでモニター専用と割り切った方が良いかもしれない。

不具合

 3台のうち、1台は外部マイクLchの雑音が大きく(パチパチいう音が乗る)、1台に画面付近のシルク印刷に欠陥が見られた。品質はあまり安定していない印象。

ラバー処理?

 ZOOMサイトにある本機の説明には「タッチノイズを軽減するラバー処理が施されたボディ」とある。さてはベタベタになるラバーコート[3]かと思ったが、実際はラバーコートに似た細かい凹凸のある樹脂製の模様。

 

バンドルソフト

 ZOOM製品の大きな魅力に、Steinberg社の音楽制作ソフトCUBASE LEと、オーディオ編集ソフトWavelab LEのライセンスが付いてくることがある。どちらもかなり高機能。

  下の画面はWavelab LE。コンプレッサーでピークを押さえてクリップしないよう全体のレベルをもち上げたり、周波数分析結果を見ながらイコライジング調整できる。

Steinberg Wavelab LEの実行画面

Steinberg Wavelab LEの実行画面

 

結論

 ホワイトノイズに悩む人は、低感度のマイクを使い、録音レベルをあげて遠くから小さい音を拾うようなことをしていないだろうか。こういう録り方ではいくら良い機材を使ってもホワイトノイズは下がらない。

 ホワイトノイズを小さくするには、入力を可能な限り大きくして、その上で適切な入力レベルになるよう録音レベルを下げて録る必要がある。

 DR-05などの一般的なレコーダーに対するH4nProの優位性は、8dBノイズが低いことだった。少しでもノイズを減らしたい人にとって、このような低ノイズレコーダーは有用な機材に違いない。

 

参考:EINは何dBあればよいのか

 文献1によると、スタジオなどの最も静かな環境においてノイズに埋もれない必要EINはダイナミックマイク(感度-56dB)の場合で-127dBu。 AT9945CMのようなコンデンサマイクを使うと、感度の差分(56-42=14dB) だけ余裕が出来て113dBuでよい。

 DR-05のEINは先に書いたように推定112dBuだった。すると、一般的なコンデンサマイクに普通のPCMレコーダを組み合わせて録れば、耳に聞こえる音はすべて収録できることになる。

 

 

<参考購入先>
ZOOM H4nPro
TASCAM DR-60D カメラと一緒に使う場合の決定版
ZOOM  F4 最高のローノイズ録音ができる上級機です

<関連記事>
2.ホワイトノイズが少ない外付けマイクの選び方~YouTube動画撮影でノイズを減らすコツ
3.ローソクを使ってラバーコーティングのべタベタを予防する

<参考文献>
1.入力換算雑音とは 回路設計エンジニアの備忘録
ZOOM
TASCAM