アマゾンには怪しい激安の電気器具が溢れている。ほとんどが中国製。買ってみると説明と違ったり、不良品が多い。なぜこんな状態になっているのか。今回はその知られざる裏事情を紹介する。
中国製懐中電灯の例
写真はアマゾンで取り寄せた懐中電灯。外観は立派なもの。
同じ商品を多数の出品者が提供しているが、ほとんどがOEM。本当の製造元と卸値は、アリババを覗くとわかる。
千円前半で売られている懐中電灯の価格は2ドル前後。5本セット2千円近くで売られる商品は1個1ドル台。100均と大差ない。
なぜ不良品が多いのか
おそらく中国系の出品者は、アリババなどから商品を大量に仕入れ、検品せずそのまま日本のアマゾン倉庫に送っている※。その中には何割か不良品が混じっている。
※:FBA(フルフィルメント by Amazon)という
検品は購入したユーザにしてもらい、クレームが来た場合のみ新品を追送して不良品を破棄させる。不良品はゴミと同じなので回収したり返品を求められることはほとんどない。
この方法は売り手にコストがかからないため、売値を安くできる。元々中国製なうえ、検品もしてないから手を出すと不良品に当たる確率が高い。これがアマゾンの激安商品に不良品が多い理由だ。
自社販売している日本の輸入代理店の場合は、いったん自社に納入し自分で検品を行い、品質基準を満たさないものや不良品を除く「選別」をやっているとみられる。この場合、売値が高くなるがほぼ100%良品になる。
カスタマーレビューの評価はあてにならない
不良品を掴んだ買い手から低評価を受けると商品が売れなくなる。そのため出品者はレビューの★の数を非常に気にする。★3つ以下のレビューを書くと、出品者からメールが届く。その内容は大抵次のようである。
「新しい品を送るか、返金しますのでレビューの★を修正してください・・・」
商品に満足しない場合でも返金に応じるし、別の商品を無料で差し上げます、と言ってくることもある。
これらは一見良い対応に見えるが、元はといえば検品しない商品を提供したために起きたこと。ハズレを掴まされた顧客の不満をサービスとオマケで解消し★を修正させたい、そんな意図がうかがえる。
皆がこれにどう対応しているか。一つの方法は、返金してもらってレビューを削除すること。サービスやオマケの見返りに嘘の★を付けるのは、やめておきたい。
満足ならレビューを書くように、気に入らない場合はまずメールするよう促す出品者が多い。
このような交渉と努力によって、本来それほど良くもない商品が高評価のレビューで満たされる。
★を増やす努力にも余念がない。日本人のようには見えない名前と文章のレビューは、協力者に依頼して書かせた桜レビューと見られる。
そんな中にある低評価のレビューはとても貴重な存在。これは購入した人が残した方がよいと判断した結果、残った可能性が高いものだ。
中国の出品者に連絡する場合のコツ
中国人相手に複雑な日本語を書いても伝わらない。要件だけをシンプルに単語で区切って書くとよい。
それと、売主のほとんどが製造元でないので細かいことを聞いても無駄。いちいち製造元に問い合わせて回答するような対応はしない。
とにかく彼らが一番嫌うのは★の少ないレビューであり、不満足なら返金するのみである。
懐中電灯の実例
激安懐中電灯は「時々つかない」「ついたり消えたりする」「スイッチが壊れた」といった症状が多い。その原因は中身にある。以下実例を紹介する。
アルミケースの懐中電灯は、ケースが電池のマイナス側と繋がっているものが多い。
発光部の反対側。プリント基板をアルミリングで押さえている。ここで電池のマイナスがプリント板のパターンに繋がる。
電池を入れると、プリント基板がアルミリングと離れる方向に押される。そのため使ううちにアルミリングとの接触が離れて導通が切れる。これが点灯しなくなる原因。
「時々点かない」「振ると付いたり消えたりする」といった症状のほとんどは、アルミリングとプリント基板の接触不良。
アマゾンの説明でIPX6の防水をうたう商品のレンズ部分。レンズはリングに内側からカシメてあるだけ。防水シールらしきものが見当たらず、レンズも最初からキズ、埃だらけ。
ちなみにIPX6とは、あらゆる方向からの強い噴水流に対し防水できる性能。アリババにある同型品を見ると、IP44(飛沫程度の防水)とある。出品者の商品説明はほとんど信用できない。
リチウムバッテリーを搭載しUSB充電できる商品がある。とても便利だが中国製なので安全性に懸念がある。高温になるクルマに備え付けるのはやめた方が無難。
比較的安心して買えるメーカーの候補
現在の候補は次の通り。
1.マグライト (MAG-LITE)
アメリカで古い歴史を持つメーカー。すべての部品が交換可能になっていて、長く使い続けることができる。
2.レッドレンザー (LEDLENSER)
比較的歴史の浅いドイツのメーカー。品質に力を入れておりマグライト同様、信頼あるモノづくりに努めている。
3.ジェントス (GENTOS)
日本の会社で日本国内にサポート窓口がある[2]。製造は海外の模様。ヘッドライトのラインナップが豊富。マグライトやレッドレンザーほどのモノは必要ないが、粗悪な激安製品は避けたい。そんな人にお勧めできる。TTR-06BKは自然光(昼白色)の小型ライトでお勧めできる。
色の違い
最近多いXM-L T6 LEDチップの色温度は3種類ある[1]。左はその例。懐中電灯は左のような紫っぽい色が多く、右の自然光(昼白色)に近い色の商品は少ない。
紫は夜道を照らす分には問題ないが、塗装や油など、モノの色が重要になる用途では役に立たない。
自然光が欲しい場合は事前にメーカーに確認した方が良い。
ヘッドライトという選択肢
懐中電灯よりヘッドライトが便利な場合がある。両手が空くのがメリット。どっちが良いか、よく考えたほうが良い。
写真は昔の定番、ペツルのヘッドライト。この手のライトはバンドが伸びたらおしまいだが、汎用のシリコンバンドに換装すれば蘇える。
ジェントスでは交換バンドが用意されている。
ジェントス HLP-1805(2018/10/24)
夜間の運動用に購入。ジェントスには多くの種類があるが、いくつかの理由でこれが一番お勧めできる。
・自然光(昼白色)でメチャメチャ明るい(夜間の山道が真昼のよう)
・裏側に赤い点滅ライトが付く
・充電、単三電池の2way
・バッテリが重すぎない
・電池を取り出さなくても充電可能
・電池とセパレートの為、ライト部分が軽い(前後の重量バランスが良く運動中にズレにくい)
・予備のバンドが付属する
フロントライトの光量は3段階に調整可能。最弱の光以外、人に向けないよう注意したい。
まとめ~激安品は避ける
ある程度の品質を求める人は、製造元がはっきりしない中国製の激安商品は避けたほうが良い。このことは、懐中電灯に限ったことではない。安いのでつい手が伸びてしまうが、それがそもそもの間違い。これが今回得た教訓だった。
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<参考文献>
1.LEDのデータシート
2.LEDLENSER(レッドレンザー)
MAG-LITE
GENTOS(ジェントス)