これまで使い捨てコンタクトは使い回し出来ないとされてきた。そこでなぜ使い回しNGとされているのかを調べ、安全に使い回しする方法を見つけた。コンタクトが安くなっても洗浄液(消毒液)が高いと意味がない。そこで、そのコストもタダ同然にできる方法を考案した。
レンズの使い回しはできない?
ワンデーと称する商品を2日使い回しできたら、ランニングコストは一気に半分になる。消費者からしてみれば、恐ろしく魅力的な話だ。
例えばワンデーだと両目で年間約3.2万円かかる。ちなみにハード(メニコンZ)は両目で1.6万円、2年使えばその半分(8,000円)で済む。使い捨てコンタクトがいかに高いかがわかる。
しかしネットは次のような情報で溢れている。
「使い回しは危険」「失明の恐れも」「絶対にやめてください!」
不思議なことに業界の関係者でもない人たちまで口を揃えて同じことをいう。ソフトレンズなのに角膜が傷つくとか、酸素不足で角膜内皮細胞が減るという人もいる。角膜の傷つきや、徐々に酸素透過率が下がる問題はハードコンタクトの話なので関係ない。
使い捨てコンタクトのビジネスは、レンズを使い捨てさせることで成り立っている。同じレンズを2日も3日も使い回しされたら、たまったものではない。なので使いまわしさせないために様々な注意を喚起する。
医者もこれを後押しする。医者の立場では使用期限を守れと言うしかないので、医者の意見は参考にならない。
私が思うに、
(1)新品を開封して眼に入れることと、きちんと洗浄&消毒したものを眼に入れることは同じ。
(2)レンズが使えなくなる確かなケースは、物理的に損傷、曇るなどして、装用できなくなった場合のみ。
つまりちゃんと消毒して傷まないよう取り扱えば、使い回しは可能であり、何も問題ない。
使い回しは眼の病気に繋がる?
「レンズの使い回しをしたら眼の病気になり医者に行きました」
という噂話がある。まるで使い回しが病気に繋がったかのように誤解させる話だ。この話は
「横断歩道を歩いたら車にはねられて医者に行きました」
と同じ。横断歩道は、ほとんどの人が無事に渡っているのではないか?
病気も事故も、悪いことが重なって起きるもの。私はハードコンタクトで眼の病気になったことがあるが、それは次の3つの悪いことが重なった場合だった。
(1)微生物や細菌が増える(消毒不十分、長時間装用、不衛生な手で扱うなど)
(2)眼が傷つく(ゴミが入る、目を強くこする、傷ついたレンズを使うなど)
(3)無理な装用を続ける(メガネなどの代替手段がないので仕方なくやってしまう)
この3つうち、どれか1つでも抜ければ病気にならない。
菌の有無ではなく、菌の数が問題
眼の病気の要因は、アカントアメーバーなどの微生物や細菌といわれる。このような微生物や細菌はどこにでもいて、私達は洗面場やお風呂場で毎日触れている。
そもそもレンズは開封した瞬間に汚染される。指で触れば大量の菌がレンズに付く。コンタクトを開封して眼に入れるまでの間にレンズは汚染される。そういうものを毎日眼に入れて問題が起こらないのは、体の防御機能のおかげ。
レンズを開封して時間がたつと菌の数が増える。すると体の防御機能で対処しきれなくなって問題が起こる。そこで私達は、菌の数を減らすことをやる。それが「消毒」「手洗い」。
レンズの使いまわしを実現するには、増えた菌を新品の状態まで減らす消毒をどうやって実現するかが課題になる。
使い捨てコンタクトは弱い素材でできている
使い捨てコンタクトには1Day、2Week、1Monthの3タイプある。これらの違いは「丈夫さ」。長く使えるタイプは丈夫でな素材で作られているようだ。
1Dayコンタクトはまるでゼリーのようで、こすり洗いに耐える作りではない。毎日指で触っていれば傷んでいく。使い回しする上で解決しないといけない課題の一つに、このようなデリケートな素材の扱いがある。
水洗いできない
レンズを水に入れると、レンズが周りの水分を吸収して膨らみ、強度が著しく低下する(膨潤劣化という)。これはレンズに塩分が含まれているため。水は塩分の多い方へ移動する。これはナメクジに塩をかけると縮むのと同じ[1]。
新品のレンズと一緒に入っている液体の主成分は、生理食塩水(濃度0.9%)。保存液に限らず、消毒液も洗浄液も、すべて同じ濃度の塩分が含まれている。
ソフトコンタクトは水洗いできない。このことが、レンズの手入れを難しくしている。つまり、これも使いまわしするうえで解決しないといけない課題の一つ。
写真は水に入れた直後に撮影したクレオワンデーUV。外周がビロビロになり、直径が2mm以上増えている。ほとんど瞬間的に膨潤・変形する。この結果から、高含水率のレンズはたとえ一瞬でも水洗いできないことがわかる。コンタクトを付けたままお風呂に入り、目に水が触れても同じことが起こる。
水で変形しても、生理食塩水に入ると形状が回復するので使えなくなくなるわけではない。しかし元の寸法に近くなるまで1分以上かかる。
ちなみにグループⅠの低含水率レンズ(ファンデーファインUV)は水に入れても目立った変化は起きない。2分後に測ってみると直径が0.5mm増えている程度。短時間であれば水に触れても問題ないが、少し変形して装着しにくくなる。
MPSタイプの消毒液(レニューフレッシュ)がレンズを膨潤させないか調べているところ。
レニューフレッシュの成分に食塩の記載がないが、膨潤などの問題が起こらないようにできているらしい。外出先の洗浄やすすぎに安心して使える。
ハードコンタクトとどっちがいいか
私はこれまで、ハードコンタクト(メニコンZ)を約30年使ってきた。装用感はソフトが圧倒的に良いが、ハードにはソフトに無い優れた特徴がある。それは眼に入れるだけで乱視がある程度、矯正される点(これは変形しないレンズのおかげ)。
ソフトコンタクトでは乱視を十分矯正できない。乱視の強い人はハードコンタクトを選ぶのが正解かもしれない。
ハードの寿命は3年くらいといわれるが、大抵は1年過ぎるとレンズの傷や汚れが増え、酸素の透過率が落ち、度数が合わなくなってくる。実用的には2年くらいが限度だと思う。
メニコンZのコストは、実店舗で買うと傷や紛失の保証がついて両目で2.1万円+検査費。度が解っているならネット通販で両目で1.6万円。2年もてば年間8,000円なので使い捨てコンタクトの半分以下である。
使い回しする方法
使い捨てコンタクトを使い回しするために解決しないといけない課題は次の通り。
(1)素材が弱い(こすり洗いきない)
(2)確実な消毒洗浄(こすらずに汚れを落とす)
(3)水洗いできない(膨潤変形してしまう)
この解決策を考えた。そのポイントは次の3つである。
(1)丈夫なレンズを選ぶ
(2)過酸化水素で消毒を行う
(3)生理食塩水で洗う
(1)は使い捨てレンズの中でも丈夫な素材でできたものを選んで使う。次項で詳しく説明する。
(2)はレンズの消毒に最も確実かつ強力な過酸化水素タイプの消毒液を使う。ここはクリアケアが最適。クリアケアを使い切ったら、後述する自作消毒液に切り替えることでコストがタダ同然になる。
(3)は使いまわしの運用で必須。クリアケアで洗浄が終わったらカップに生理食塩水をいれてすすぐ。これは購入せずに、濃い食塩水を準備して10倍に薄めて使う(後述)。
クリアケアだけでは皮脂汚れが落ちないため使いまわし期間が短い。ここは界面活性剤の追加(後述)で改善できる。「こすり洗い」しなくても十分汚れが落ちる。
これで、長期間の使いまわしが可能になる。
注:クリアケアはレンズによって中和不十分となり、目に染みることがあります。この場合、クリアケアの使用をやめて後述の過炭酸ナトリウムに置き換えて下さい。
使い回しに適した丈夫なレンズの候補(2023年11月)
1Dayタイプのレンズにはいろいろ種類があり耐久性に多少の違いがある。使いまわしに適したレンズは、1Dayの中でも汚れが付きにくく、丈夫な素材でできたものになる。
汚れの付きにくさは「イオン性」で決まり、レンズの丈夫さは「含水量」で決まる。
イオン性のあるタイプⅣはタンパク質が吸着して雑菌の温床になりやすいという[6](タンパク質の吸着が30倍多いという報告もある[5])。含水率の高いタイプⅡとⅣのレンズはスポンジのような構造になっていて丈夫さの点で劣ると考えられる。
すると使いまわしに適したレンズは、必然的に
非イオン性と低含水の特徴を持つグループⅠのレンズ
になる。機能はUVがあればよく、保湿(モイスト)など余計な機能の付かないシンプルな商品を選ぶ。
このような商品の候補に次がある(2023/11現在)。今の所ピュアアクアワンデーが最も汚れにくく、使いまわしに適している印象。以前はワァンデーファインUV がベストだったが、モデルチェンジしてplusが付いてから使えなくなった。これと代替できる数少ない商品。
ピュアアクアワンデー by ゼル (お勧め!)
エルコンワンデー
Eye Secret 1 Day
レビューは次のトピック参照。
コストの削減目標
ハードコンタクトと同等のコスト(両目で年間8,000円)を目標とした。メンテナンスコストをひとまず別におくと、次のように使用期間を伸ばすことができれば、私たちの粘り勝ちだ。
1Dayを4日使う 年間3.2万円→7,900円
2Weekを17日使う 年間9,600円→7,900円
但しこれは、30枚入り1,300円の商品、2Weekは6枚入1,100円の商品を対象として計算した場合。別の条件の必要使い回し日数は以下の式で計算できる。
必要使い回し日数(切り上げ)= 2×(1箱の商品価格/1箱の枚数)×365/年間目標価格
単価の高いレンズは使い回しの目標日数が増える。できるだけ安いレンズで合うものを探すことがポイント。
レンズの使いまわしを始めると一箱を長く使うことになり、使用期限が過ぎてしまうことがある。冷蔵庫保管をお勧めする。
予備の眼鏡を作っておく
これがないと無理な装用を続けて病気になることがある。ぜひ作っておきたい。コンタクト度数と同等のメガネ度数は、概ね
コンタクト度数マイナス 0.25~ 0.50(個人差あり)
である。例えばコンタクト度数がマイナス4.00なら、メガネ度数は、マイナス4.25~4.50となる。強い度数の場合多少違う。詳しくは次のサイトを参考にしてほしい。
眼鏡屋さんに行くと目の検査から始まってやたら時間がかかり、その場で持ち帰れない。アマゾンの度数指定注文を利用するとよい。
レンズは、一番低屈折の非球面(薄型非球面1.60)がお勧め。PDは黒目の距離。鏡を前に定規で測るとよい。
使い回しの実証実験
目標日数は、年間コストを両目8,000円以下にできる使い回し日数(上述のコスト計算結果)を表す。
2~3日で見ずらくなる。これは脂質汚れの蓄積が原因。その状態が使用に耐えられなくなった時が、レンズの寿命。
以下は消毒に後でご紹介する自作液を使った結果だが、界面活性剤(Option)を併用すると、皮脂汚れの蓄積がなくなりレンズの寿命は飛躍的に伸びることが判明している。クリアケアにも界面活性剤の添加が有効。
ピュアアクアワンデー by ゼル (約30日)
現在イチオシの商品。レンズが丈夫で繰り返し使用に耐える作り。実績は30日前後。
エルコンワンデー Eye Secret 1 Day (2~3日程度)
使いまわし2日目から角膜に貼りつく感じが出て視界がぼやける。汚れが落ちにくい素材の様。お勧めできない。
クレオワンデーUV 目標6日(最長4日)
最も使い回しが難しそうなレンズを最初に選んでみた。高含水率&保湿成分配合。グループⅣ(イオン性)。ゼリーのように柔らかく、イオン性のため汚れが付きやすい。余計な保湿機能もついている。
2日目から度数が落ちた感じになる。装着感は比較的良かった。
ワァンデーファインUV 目標4日(最長14日、界面活性剤併用で最長70日)
グループⅠの低含水率レンズ。やや厚みがあり、装着も比較的容易。14日使用可。界面活性剤を併用した最長は70日。メインで使用しており、2020年現在、70日の実績が2回以上。耐久性に優れたコスパ最強のレンズである。
2023年11月追記
ワンデーファインUV plusになってから汚れやすくなり耐久性が落ちた。クリアケアを使うと目がしみることがあるためおすすめしない。
ワンデーアキュビューモイスト マルチフォーカル 目標9日(最長8日)
グループⅣの高含水率レンズ。ワンデー&マルチフォーカルでUVカットを付けるとこれ一択なので買ってみた。
非常に薄くて柔らかい。次第にレンズにコシがなくなり、丸まったり目から落ちたり、なかなか装着できない場面が増える。装着が難しくて8日で装用中止。使いまわしに適さないレンズである。
1のクレオワンデー同様、見え方が安定しない。「見え方が安定しない」「装着しずらい」は高含水レンズに共通する特徴のようだ。
エアオ プティクス アクア マルチフォーカル 目標39日
グループⅠのシリコーンハイドロゲルレンズ。2週間用だが単価が高いので目標日数が長い。レンズにコシがあって形状が安定しており、消毒から装着まで、たいへんやりやすい。
22日まで問題ないことを確認して装用中止中。
マルチフォーカルの実際の度数は商品によりまちまち。遠近両用効果も微妙で、普通のレンズと大差ない印象。黒目と一緒に動く1枚のレンズで遠近両方が良く見える、なんて都合の良い商品は、今のところないと考えたほうがよさそうだ。
(以後追記していきます)
消毒液のコストをタダ同然にする
使いまわしでは消毒にクリアケアを使うが、レンズが安くなっても消毒液にお金がかかるとトータルコストが下がらない。そこで、クリアケアが終わったら過炭酸ナトリウムを代わりに使う。水に溶けると過酸化水素が発生しクリアケアと同じ消毒ができる。
この値段は0.5円/g。クリアケア(360ml)分作っても数円。この消毒液のコストはタダ同然であり湯水のように使える。このほかに、オキシドールで代替する方法もある(ページの最後に参考例として記載)。
消毒
クリアケアの保存容器を流用する。過炭酸ナトリウムを0.05~0.1g入れ、生理食塩水を線まで入れて溶かす。
写真で0.1g。スプーンは100均の調味料用。他の候補は薬さじ。
粉を入れたらキャップをしめて軽く振る。全部綺麗に溶かす必要はなく半分くらい溶ければ十分。
(Option) このとき脂質汚れを溶かすための界面活性剤を入れるとレンズの装用期間が飛躍的に伸びる(後述)。
過炭酸ナトリウムは平らな穴の開いた滴下容器(100均の化粧水用)に入れて振りかけるようにして使うと便利。生理食塩水の作り方は次のトピックを参照。
クリアケア保存容器の線まで1で作った消毒液を入れる。処理中にフタから中身があふれることがあるので、樹脂トレイなどの上にのせておく。
そこにレンズをセットしたレンズホルダーを入れて一晩消毒する。ここまで通常と変わらない。
すすぎ
以下の要領ですすぐ。
すすぎ1回目
消毒液を捨て、水道水を入れてレンズホルダーを元通りセットし、上下によく振る。これでレンズに付いた埃などのゴミがだいたい落ちる。グループⅠのレンズ(ワンデーファインUV)は水ですすぐことができる(2分以内)。
すすぎ2回目(浸漬)
クリアケアの容器に生理食塩水を入れて浸漬する。時間は、低含水率(グループⅠ)のレンズは1分以上(界面活性剤を入れた場合は5分以上)、その他の高含水率レンズは5分以上。
装着
メニホルダーなどのピンセットでレンズをホルダーから取り出し、装着する前に光にかざして糸くずなどのゴミをチェックする。問題なければレンズを装着する
レンズ付いた糸くずは保存容器にすすぎの液を入れ、中で上下に動かすようにして落とす。水道水を直接当てないこと。
柔らかいゼリーのようなレンズは指で扱うよりピンセットが安全。ぜひ用意しておきたい。
写真は1年半ったクリアケアの保存容器。1年くらいは余裕で使える。プラチナの塗装が白っぽくなってきても、泡が出る限り大丈夫。過酸化水素のせいでレンズホルダーが劣化して開閉しにくくなる。壊れた時点で寿命。
レンズの汚れを確かめる方法
一晩消毒したレンズを写真のように折り曲げてくっつく場合は汚れが付いている証拠。この状態になると見え方が落ちる。これを解消するには界面活性剤の力がいる。
自作消毒液のトラブルシューティング
レンズを入れたとき目がしみる
すすぎに使った生理食塩水の濃度が0.9%を超えているか、すすぎが足りない。商品によりクリアケアとの相性が悪い場合がある(例:ワンデーファインUV plus)。
レンズを入れてしばらくすると目の前が曇る
界面活性剤の入れすぎ。レンズに残留した界面活性剤で目が曇るのは、眼の表面にある脂質を分解した結果とみられる。レンズを外してしばらくすると自然回復する。レンズの方は生理食塩水で浸漬すれば再び使える。
レンズをつけずらい、目に入れても落ちてしまう
浸漬時間が足りないか、浸漬に使った生理食塩水の濃度が0.9%より薄くてレンズが膨潤している。いずれも高含水率のレンズで起こりやすい問題。高含水率のレンズでは、生理食塩水の濃度をできるだけ正確に作る必要がある。
装着感が悪い
消毒後、レンズによっては保湿成分が失われ装着感が悪い場合がある。また、長年レンズを付けているとドライアイになることも。ここはドライアイに対処できる目薬の併用をお勧めしたい。
生理食塩水のつくり方
生理食塩水は水と塩があれば作れるが、0.9%食塩水は雑菌が増えやすく常温で日持ちしない。そこで9%の濃い溶液を作っておき、使うときに別の容器で10倍に薄める(容器に線を付けておくと簡単)。
この方法は雑菌の繁殖が少ないメリットがある(塩分濃度10%近くでは雑菌が増えにくい[2])。
水道水と市販の食塩で作った生理食塩水の、賞味期限の目安は次の通り。
0.9%生理食塩水(常温) 夏季1週間
0.9%生理食塩水(冷蔵) 1~2ヶ月
9%生理食塩水(常温) 半年~1年
9%生理食塩水(冷蔵) 1年以上
賞味期限は沈殿物の有無やカビの発生で判断できる。
界面活性剤のつくり方
消毒だけだと脂質汚れが溜まってレンズが見えずらくなっていく。消毒容器の壁にべっとりとした油の付着が観察できる。これを溶かすために必要なのが界面活性剤。
そこで、G-510の100倍希釈液を作り、消毒時に0.2cc加える。
入れすぎるとレンズに残留する成分のせいで眼球が曇る(レンズを外せば回復する)。0.2ccの量の管理は次の滴下ノズルを参照。ノズルによって使い勝手が変わる。1~2滴入れすぎても大丈夫なように、希釈倍率200倍にしておくと安全。
日持ちしないので(夏季1週間)、たくさん作ってペットボトルに入れ、冷蔵庫で保管したものを小出ししながら使うとよい。アルコールを少量加えておくと、殺菌できて長持ちする。
滴下ノズルの量
1滴の量はノズルによって違う。写真左のノズルは1滴0.05cc、右のように穴の周りに平らな部分があるノズルは1滴0.1ccになる。
運用の注意~こうすれば「使い回し」でトラブルは起きない!
使い回しを可能にする手段を手にしても、運用がいい加減だと失敗する。ハードコンタクトを30年使ってきた私の経験から得た注意点を挙げる。
(1)毎日必ず一晩消毒する
レンズの菌は増える一方なので24時間連続装用したり装用したまま一晩寝てはいけない(まぶたを閉じると酸素不足になる)。
(2)夕方を過ぎて目の前が曇ってきたら外す
老廃物やレンズの汚れで白っぽく曇って見える。
(3)眼が充血したり、目ヤニが急に増えたり、痛みを感じたら装用をやめる
メガネに切り替え、治らない場合は医者に行く。
(4)短時間で上記の問題が起きてしまう場合はレンズの寿命だから交換。
(3)のために必ずメガネを用意しておきたい。メガネがないと無理な装用を続けることになり、症状を悪化させてしまう。
一時的にレンズを外しておきたい場合
水泳や入浴のとき、一時的にレンズを外しておきたい場合がある。このとき生理食塩水に2時間も漬けてしまうと雑菌が繁殖する可能性が高い。1時間以上外す場合は、生理食塩水ではなく、MPSタイプの消毒液(レニューフレッシュなど)を一時的な保存液として使うことをお勧めしたい[3]。
一度外したレンズを再使用する方法
レンズの使用期限、たとえば2weekは装用した期間ではなく開封後を起点としている。つまりいったん開封したら使う使わないに関係なく2weekで捨ててくださいといわれる。これはレンズを開封したり指で触ると雑菌で汚染され、それが時間とともに増えることが関係している。
今まで目に入っていたレンズなら、生理食塩水ですすいですぐに嵌めてしまえば(雑菌が繁殖する前に嵌めるなら)問題ないはず。
これを禁止しているのは、汚い手で扱ったり、ろくに洗浄しないで目に入れてしまう、つまり不適切な扱いをする人がいるためだろう。すると「外したら使えない」としておくのが安全というわけだ。
すぐに目に入れない場合は、次のようにすれば安全と考えられる。
数日保管:上記レシピで消毒後、冷蔵庫に保管。
長期間(数か月~数年):上記レシピで消毒を行ったのち、レニューフレッシュなどのMPSタイプの保存液に浸漬して冷蔵庫に保管。装用前に消毒。
カラーコンタクトはどうするか
たまにしか使わないカラーコンタクトは、次のようにする。
週1回は使う場合
装用→消毒(1日)→生理食塩水で冷蔵→装用
長期保存
装用→消毒(1日)→生理食塩水で冷蔵→消毒(前日)→装用
最初の消毒後、指で触れないよう注意。なかなか面倒なので、使い捨てがいいかもしれない。
<参考購入先>
クリアケア
レニューフレッシュ MPSタイプの消毒液です
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<参考文献>
1.ナメクジについて
体液の塩分濃度は0.4〜0.5%らしい。
2.「食塩と微生物」好井久雄, 愛知県食品工業試験所
3.Cooper Vision 過酸化水素消毒システム
4.ソフトコンタクトレンズ消毒液の効果と角膜感染の危険性
5.コンタクトレンズ博物誌 その10、その16
6.コンタクトレンズの現状と将来,光学第13号(1984年6月)
この記事を参考にして生じた如何なる結果も、当方は一切の責任を負わない。自己責任でトライして欲しい。
参考資料
参考1.酸素透過係数(DK値)は高いほど良いのか
コンタクトレンズの値段はDK値に比例している。メーカーはDK値が高いほど眼の負担が少なくいいレンズだというので、DK値が大きいほどレンズほど目に優しいレンズだと思い込んでしまう人が多いようだ。
DK値が足りなくて酸素不足になると、最初に角膜が膨潤することが知られている。それが起きない酸素透過率は、材料厚0.1のときDK値で10以上あれば充分という報告がある[6]。一般的なレンズの中心厚はこれより薄い(0.05~0.085)なので、もっと小さい値でも問題ないかもしれない。
DK値は重要な指標の一つだが、それでレンズのすべてが決まるわけではない。DK値の高いレンズは、眼に負担をかける欠点もある。
例えば高いDkを誇るシリコーンハイドロゲルの生体適合は必ずしも良いとは言えず、装用に違和感を感じる人も多いという。シリコンという素材の性質上、脂質汚れを取り込みやすい欠点も指摘されている[5]。
ここでは、DK値が不足する商品は販売されていない。DK値に高いお金を払うことはない、ということだけ覚えておきたい。
参考2.マルチフォーカルレンズの選び方
老眼の場合、遠近両用(マルチフォーカル)が役に立つが、度数の選択が難しい。現在使っている普通のソフトコンタクトから乗り換える場合、次を参考にするとよい。
・近くの見え方を据え置きにして遠くを伸ばしたい人
⇒PWRを1.50~1.75強くする。
・遠くを据え置きにして近くを見やすくしたい人
⇒PWRを0.50~0.75強くする。
・遠近両方を今より少しずつ伸ばしたい人
⇒PWRを1.0~1.25強くする。
タイプⅠのマルチフォーカルレンズは次の通り。UVカット付きの商品はない模様。
デイリートータルワン シリコーンハイドロゲル。高価ですがタイプⅠのワンデーはこれしかありません。
メダリスト マルチフォーカル 2week
エアオプティクスアクア マルチフォーカル 2weekシリコーンハイドロゲル
参考3.消毒液に過炭酸ナトリウム水溶液を使う方法
粉を直接使った上記のほうが簡単なので、そちらをお勧めする。以下は参考。
水100㏄あたり、過炭酸ナトリウム1.0g、食塩0.9gとする。
(Option) 脂質汚れを溶かすための界面活性剤を入れると装用期間が飛躍的に伸びる(上述)。
水は冷水(水道水でよい)を使う。過炭酸ナトリウムは0.5g(0.5%)で十分だが、保存中の分解損失を考慮して1g(1%)とした。炭酸飲料用のペットボトルに入れて冷蔵庫に保存する。
常温に置いた消毒液の使用期限は数日、冷蔵庫で1週間程度である。使用期限はクリアケアの中和ディスクを入れたときに出る泡の様子で判定できる。入れた瞬間、中和ディスクに細かい気泡が付かなくなった時点で期限切れ。
この方法の欠点は日持ちしないこと。一度にたくさん作る方が賞味期限が伸びる。例えば400cc作ると冷蔵庫で1週間以上もつが、使いきれず無駄になる。
参考4.消毒液にオキシドールを使う方法
クリアケアの主成分は約3%の過酸化水素水+食塩。過酸化水素の濃度はオキシドールと同じなので、そのまま代替できる。つまり、オキシドールに食塩を加えて塩分濃度0.9%に調整すれば、クリアケアとほとんど同じものができる。
クリアケアを毎日洗浄に使うと年間8,000円くらいかかる。これをオキシドールで代替することで、このコストを1/4以下にできる(200円/500mlの商品の場合)。
作り方は、オキシドール500mlに食塩4.5gを加えて塩分濃度0.9%にするだけ。
後から塩分を加える場合、クリアケアの保存容器の線が10ccなので、線まで水を入れ、9%食塩水を1.1cc滴下すればクリアケア保存容器の中で生理食塩水を作れる。
クリアケアの保存容器はプラチナで過酸化水素を分解する仕組みだが、ハイポ(チオ硫酸ナトリウム)も中和に使用できる。機会があれば検証してみたい。
・オキシドールの添加物について
フェナセチンとリン酸。フェナセチンは鎮痛剤。リン酸はクリアケアにも入っている。どちらも傷口に塗って使う消毒液に含まれている成分なので、体への安全性は問題ないと考えられる。塩分0.9%のオキシドールは、普通のオキシドールより傷口の消毒に優れるかもしれない。
・オキシドールの代替について
30%の過酸化水素水(500ml,1200円くらい)が薬局で取り寄せできる(印鑑必要)。これは余計な添加物を含まない。取り扱いが危険なので購入したらすぐに水道水で10倍に薄めて食塩を添加したものを作ってしまうとよい。冷蔵しないと市販のオキシドールより消費期限が短くなるかもしれない。
参考5.過炭酸ナトリウムの最適濃度を求める実験
過炭酸ナトリウムは酸素系漂白剤。水に溶かすと炭酸ナトリウムと過酸化水素に分離する。クリアケア(過酸化水素3.42%)相当の消毒液を作るには、計算上は100ccに約10gの過炭酸ナトリウムを溶かせばよいことになる※。
※:化学式と式量より、炭酸ナトリウム:過酸化水素= 2.08:1 (質量比)。つまり質量の約1/3が過酸化水素で、1g中の過酸化水素は 0.325g。クリアケア(過酸化水素3.42%)相当の水溶液を作るには、3.42/0.325=10.5g、すなわち100ccに約10gの過炭酸ナトリウムを溶かせばよい。
ところが、これを実際作ってみるとかなり強力。洗濯槽の黒カビとりでは100ccあたり1gしか使わない。コンタクトの消毒に黒カビとりの10倍の酸化力が必要とは思えない。
そこで、クリアケアと同等の酸化力を得る濃度を実験で求めてみた。
消毒液の酸化力は麻ひもを使って調べることができる。写真の上の列は1%過炭酸ナトリウム(+0.9%食塩)水溶液を倍々に薄めたもの。左から1.0%,0.5%,0.25%,0.125%,0.06%。下の列は左からクリアケア、水。写真は麻ひもを浸漬して20℃9時間後の結果。
過酸化水素が分解するときにできる活性酸素が麻ひもの色素を分解する。その色の様子から、クリアケアの酸化力は過炭酸ナトリウム0.5%と0.25%水溶液の間くらいになることがわかった。
クリアケアの中和ディスク(白金触媒)を併用した場合はどうなるだろう。
写真左は1%過炭酸ナトリウム(+0.9%食塩)水溶液、右はクリアケアで、浸漬2時間後(泡が止まって中和完了した時点)の様子。
中和ディスクを入れるとクリアケアの方が激しく泡立つが、結果は過炭酸ナトリウムの方が良い。泡は酸化力に関係しないことがわかった。
つまり中和ディスクを入れたときに出る泡は、消毒に寄与しない酸素というわけ。
ところで、過炭酸ナトリウムはなぜ少ない量で良く効くのだろう。
通常、過酸化水素が分解するとき活性酸素が発生し、それが酸化(漂白&殺菌)に作用する。そこにアルカリ(炭酸ナトリウム)があるとタンパク質を分解するから、この相乗効果によって過酸化水素単体より強い酸化力を得るようだ。また、シリコーンハイドロゲルで問題になる脂質汚れを落とすメリットも見逃せない。
参考6.アルカリ中和の方法を求める実験
過炭酸ナトリウム水溶液はアルカリなので消毒後のレンズを眼に入れると染みる。そこで、レンズに染み込んだアルカリを抜く必要がある。
消毒が終わったレンズにBTB指示薬を染み込ませて色を付け、弱酸性に調整した生理食塩水に入れて何分で色が消えるかテストした。
低含水率(グループⅠ)のレンズは数十秒、高含水率レンズは4分かかる(20℃)結果から、1分と5分を基準とした。
(2018/12/7追記)
過炭酸ナトリウムだけで運用していると油のようなものが容器に残留することを発見。この正体はおそらく脂質汚れ。これを対策するため、上記レシピに界面活性剤を追加するOptionを追加した。
界面活性剤はハードコンタクトで実績のあるG-510を使用。希釈倍率は、以前調べたO2ケアの洗浄力[7]の1/10相当(1/1000倍)とした。
参考7.界面活性剤の最適濃度を求める実験(2018/12/27)
界面活性剤(G-510)の濃度を検証した結果、過炭酸ナトリウムを使った場合1/100希釈液を2% 濃度(2ppm)でも皮脂汚れを除去できることがわかったので上記レシピをこれに基づいて更新した。
10ppmまで眼に問題ないことを確認しているので、少々多くなっても大丈夫である。