雷サージや停電で家電機器やPCを痛めることがある。ここはUPSが有効だが、捨てるときお金がかかることや、雷ガードを1個ポン付けしても効果が少ないことは意外に知られていない。できるだけお金をかけずに雷と停電に対処する方法をご紹介したい。
UPSの問題
バッテリーの廃棄をどうするか
UPSを買うといずれやってくるバッテリーの廃棄問題。鉛バッテリーはほとんどの自治体が回収しないので、捨て場がどこにもない。
メーカーに引き取ってもらうしかないが、大抵は送料が自己負担。鉛バッテリーは重いので、大容量のUPSを導入すれば送料もその分高くなってしまう。
バッテリーの処分は厄介なので、UPSを導入しないという選択肢をいま一度、検討した方がよい。
故障すると新品より高くつく
UPSはACタップと勘違いされることがある。写真はAPC社のUPSだが、家内がここから掃除機のコンセントをとって壊れてしまった。
壊れた時、部品が焼ける匂いがした。交換式のヒューズが付いてるが切れていなかった。分解してプリント版をみたが目立つ焼け跡が見つからない。匂いの原因は何だったのか・・
とりあえず修理を前提に見積をとってみた。以下は各所の見積もり金額。
APCサポートセンターの見積もり 20,000円
販売店の修理見積もり 23,000円
購入価格(参考) 16,800円
サポートセンター曰く、修理対応はせず新品交換の対応になるという。代替品を先出しして、お客様に迷惑をかけないシステムになっているという。販売店の修理解答は、おそらく新品交換+手数料。いずれにせよ購入価格より高いのではお話にならない。
なんとか修理できないか・・再度よく観察したところ、プリント版の裏でパターンヒューズ(F4)が切れているのを見つけた。これが匂いのもとに違いない。
原因がわかれば修理にトライできる。写真のように細い銅線を使って修復し、復旧に成功した。
そもそもUPSは必要なのか
UPSは停電に対処するために導入される。ところで、停電はどういう場合起こるのか。一つは風や落雷による送電網のトラブル。他には、家のブレーカーが電力容量を超えて落ちるケースが考えられる。
UPSの導入でよく考えないといけないことは、UPSの導入コスト(処分費含む)が、これらのトラブルによって生じる損失に見合うか。
我が家はオール電化になってから、家のメインブレーカーが落ちてしまうトラブルがゼロになった。落雷や台風による停電が心配なとき、PCの作業を控えることができるなら、UPSは必要ない。
UPSの意外な使い道
滅多にあることではないが、クルマのバッテリーが弱くなってエンジンがかからないとき、UPSのバッテリーが使えることがある。
冬場に多いトラブル。UPSのバッテリーでエンジン始動に成功!端子のショートに注意。
雷ガードについて
コンセントから雷のサージ電圧が入ってくるとPCが壊れる可能性がある。この問題に対処するための雷ガードが市販されている。
雷ガードの中身は、コンセントの両端子にバリスタ(所定の電圧がかかると短絡する素子)を付けただけの物がほとんど。少数だがアレスタ(所定の電圧がかかると放電して電気を逃がす素子)を内蔵した商品もある。
雷ガードは必要か
近所に雷が落ちても家の中の機器が何ともないのは、電力会社が避雷器を各所に設置しているため。山小屋や別荘など近くに避雷器がない場所を除けば、近所の落雷によって家の中の機器が壊れる可能性はほとんどない。
しかし、電力会社の避雷器は雷サージの電圧を下げるだけで、ゼロに出来ているわけではない。すぐ壊れないにせよ、気づかないうちに機器を痛めている可能性がある。
例えばPCの電源が壊れた時、何年か前の雷サージによってダメージを受けたことが関係しているかもしれない。こういうことは、ほとんどの人にとって思いもよらないこと。
自宅の雷ガードは、このような気づかずに受けているダメージを防ぐための「お守り」として役立つものと考えられる。
雷ガードの選び方
雷ガードとして売られている商品のほとんどがバリスタを使った非接地タイプ。このタイプは1個単体では効果が薄い。後述するように安価な商品を沢山買って分散させる形で使う。
接地端子が付いたタイプは日本アンテナが作っている。電流をアースに流すことで壊れにくく、非設置タイプより高い保護効果が期待できる。
雷ガードにはランプが付いた商品がある。これはガードの機能が生きているのか、死んでいるのか、一目でわかる。この商品の例に、ヤザワの雷バスターがある。
雷ガードの効果的な使い方
コンセントに雷ガードを付けると、そこから離れた場所にあるコンセントにも効果が期待できる。この性質を利用して、複数の雷ガードを分散設置する。
複数の雷ガードを使うと、保護効果が高まるほかに、1個あたりの負担が減って雷ガードが壊れにくくなる。雷ガード付きのACタップは、使っていなくてもコンセントに挿しておくだけで効果がある。
接地端子が付いたタイプは必ずアース配線して使う。接地すると余分な電流を地面に逃がすことができるので、雷ガードの保護効果が上がる。
実例
1.UPSオムロンBX50XFS
2003年1月に導入。2018年4月にバッテリー劣化アラームが鳴り止まなくなった。2006年5月に一度バッテリーを交換してそのままだから、なんと12年も使えてきたことになる。
ネットを検索してもこのタイプが10年持ったという報告もあるから、あきれるほど長寿命(単に診断機能の反応が甘いのかもしれないが)。
この機種の交換バッテリーは BP50XF(パナソニック製)。調べると廃版になっているので、バッテリーをオムロンに引き取ってもらった。送料約1000円かかったが、いままで役に立ってくれた年月を考えると十分安い。
取り出したバッテリーを観察して特に問題になるような外観の異常はみられなかった。現在の後継機はBX50F/BX35F。両者の違いは出力容量。BX50Fが300W、BX35Fが210Wでバッテリー共通。
なお、今どきのPC電源は力率改善回路 (PFC)が普通に入っているので矩形波出力のUPSとは相性が悪い。PCと繋いで使う場合は正弦波出力のBY50S/35S選ぶのが無難。
2.UPSオムロンBY50S
2018年4月。BX50XFSの後継として導入。箱書きに「PFC回路内蔵電源に対応」とある。
PFC電源を矩形波出力のUPSに繋ぐと壊れる・・私はこのことを長い間知らずPFC回路付き電源を矩形波出力のBX50XFSと繋いでいたが、何ともなかった。滅多に停電しないなら、そんなに気にする必要はないのかもしれない。
オムロンのUPSにはシャットダウンソフトが2種類付属する。高機能版のPowerAct Proと、シンプルシャットダウン。高機能版は詳細なシステムモニタやログの記録などができるが、追加でApache HTTP Serverという余計なものが入ってしまう。
一般ユーザーは環境を汚さない点で「シンプルシャットダウン」がよいだろう。
シンプルシャットダウンの環境設定画面。
「待機時間」は電源断を検知してからシャットダウンまでの待ち時間。「シャットダウンに必要な時間」とは、シャットダウン後、UPSの電源が切れるまでの時間。ちょっとわかりにくい。
オムロンのUPSには問題がある。
電源断検出後、PCシャットダウン→UPS電源断という流れで進むが、シャットダウン後、UPS電源断までの間に電源が回復してPCが再起動すると(BIOSの設定でこれが可能)、UPSの電源断が執行されてPCの電源がいきなり切れてしまう。
原因は、電源が回復したのにUPSが電源断を実行してしまうため。今のところ気になっている点の一つ。
2021年6月2日追記
深夜に突然起動とシャットダウンを繰り返すようになった。バッテリーの急激な消耗が原因で、交換で復帰したが、この商品のバッテリーは3年しかもたなかった。ハズレを掴んだのかもしれない。
クルマのバッテリーが突然ダウンして始動不能になる現象と似ている。鉛バッテリーはこういうことがあるから怖い。
3.挿すだけの雷ガードの例
宅内LAN(まとめてネット)の電源に設置した雷ガード(Yazawa STB15WH)。
挿しておくだけの簡易タイプだが挿してみると本体が結構大きい。値段がもう少し安ければ大量に使えるのだが。
4.アンテナの雷ガードの例
雷からの放電を直に受けるアンテナは防備を強化する必要がある。
写真はアンテナ引込のところに取り付けた日本アンテナTGS2T。アレスタが内蔵されており、アースを接地することで保護効果が高まる。
ブースターにもアース端子が付いている。機器も一緒に接地すると良いようなので[1]、アース配線した。
日本アンテナの商品はアース端子付きなのに差し込みが無接地の2P。アース配線するためには、3Pのコンセントに対して2P-3P変換アダプタを使う必要がある。
写真の例では節電タイマーを使いたかった都合上、アースターミナル付きのACタップ(エレコム T-ECOH3410NM)を使っている。
<関連商品>
UPS 無停電電源装置
雷ガード 接地できるタイプがお勧めです
<参考文献>
低電圧設備の耐雷対策 – 雷サージ対策
1.cosel B14.雷サージについて